カテゴリー別アーカイブ: 活動報告

9月定例症例検討会

9月15日には定例症例検討会が開催されました。宇賀神医師に症例提示をしていただきました。救命救急センターで一命をとりとめる程度の深刻な自殺行動の後は、その背景にあった精神的苦痛は語られぬまま、これまでのことがなかったかのように生活が再開されることがあります。一見、落ち着いたかのように見える淡々としたあり方はカタルシスとも言えますが、一連の経緯は子どもにとっても、家族にとっても触れてほしくないことが沢山あることでしょう。こどもの心のあり様を理解できぬままに淡々とした生活の中で身体的回復が進み退院の是非を判断する時期がやってくるかもしれません。しかし、このような場合は精神科医は子どもが次の自殺行動を起こすことを引き留められるような繋がりを持てていないことに焦りが出るものです。精神科医として傷ついた子どもの人生にどこまで踏み込み理解していけばよいのか、どのように安全管理について助言すべきかについて話し合いました。

9月児童精神科レジデント向けクルズス

9月1日にはレジデント向けクルズスを実施しました。レジデントからのリクエストに応え、上級医が実施するクルズスです。宇賀神医師からは日頃診断が曖昧な症例に付与しがちな「情緒障害」とは何か、武越医師からは「チック症の治療」というテーマでリクエストがあり、宮崎医師が「情緒障害」について、藤田医師が「チック症の治療」について話題提供をしました。「情緒障害」という診断は幼児期のかんしゃくや習癖に通常付与される診断ですが、教育・福祉の場面では発達障害を意味する病名としても使われて混乱があります。ただ、これを医学病名として転用しているのは圧倒的に神奈川県が多く、横浜市立大学や神奈川県立こども医療センターが慣習的に診断が曖昧な例に付与して来た歴史があることを確認しました。全国的にはうつ病や不安症などの診断を明確につけがたい事例には「適応障害」の病名が付与されることが多いようです。

戸代原医師の論文が掲載されました

戸代原医師の論文がChild and Adolescent Mental Health誌に掲載されましたのでお知らせします。関係者の皆様、ご協力ありがとうございました。
https://acamh.onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/camh.12504
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> 横浜市立大学児童精神科2病院と神奈川県立こども医療センターの初診患者さんたちの臨床症状に関する調査です。幻聴も幻視も外来患者さんにはそれぞれ10数%存在しますが、自殺の行動化に関連するのは幻視よりも幻聴であることを示唆した結果です。ご一読いただければ幸いです。

8月定例症例検討会

8月18日に定例症例検討会を開催しました。症例提示は青木医師に担当していただきました。プレイセラピーは子どもの発達特性や性格傾向、葛藤を観察し、緩やかに枠組みを示しながら治療的な言葉や関係性を提供する上で役立ちます。居場所のない子どもたちの寛ぎの場としても役立つところではありますが、治療技法・治療介入であるため、何の目的でそれがなされているのか、利用している子どもや家族はその意義をある程度理解できているのか、主治医は確認することが必要です。担当している心理士とも目的の共有が必要ですが、これがあいまいになってしまうと脱落例も出てくることを学んだ会になりました。

8月レジデント抄読会

8月4日はシニアレジデント抄読会を開催しました。市民総合医療センターの宇賀神北斗医師より「 Antipsychotic medication versus psychological intervention versus a combination of both in adolescents with first-episode psychosis (MAPS): a multicentre, three-arm, randomised controlled pilot and feasibility study 」、附属病院の武越百恵医師より「 Reports of parental maltreatment during childhood in a United States population-based surveyof homosexual, bisexual, and heterosexual adults 」の2つの論文について各自の臨床疑問と共に紹介をいただきました。1つ目の論文は初回精神病エピソードに対して抗精神病薬治療、認知行動療法と家族療法、抗精神病薬と認知行動療法と家族療法の3つによる現実的な治療実施可能性を検討した報告でした。児童青年期の精神病エピソードは統合失調症の確定診断がしにくいものが多く、当初予定した治療法から別の治療に切り替える例が多いという結果でした。目の前の精神病エピソードを呈する子どもがどのような診断なのかどのような治療が最適なのかは経過と相談しながら検討していくという現実的な治療を描きだす内容でした。実際宇賀神先生が診療している患者さんも診断が悩ましい事例で治療方針についても試行錯誤の連続のようです。2つ目の論文はやや古い論文ですが、1990年代にアメリカで実施されたゲイ、レズビアン、バイセクシャルの人々の幼少期の虐待体験についてインタビューした大規模疫学調査の報告です。今では性の多様性について多くの人が認識する時代になりましたが、20年以上前のアメリカでは自分の性的指向を報告する人が数パーセントと極端に少ないことが印象的でした。LGBTQの人たちと小児期逆境体験、精神不調の関係は数多く報告されていますが、我々児童精神科医も性別不合に悩む子どもたちに積極的相談にのっていくべきであることを確認しました。

7月定例症例検討会

7月21日には定例症例検討会が開催されました。当日は市民総合医療センターの宇賀神医師に症例提示をいただきました。約3年の経過に渡る症例でしたが、解離性障害、精神病危機状態(ARMS)、カタトニア、統合失調症と様々な診断が疑われては修正されと試行錯誤が繰り返されている症例でした。児童青年期の症例では、内的言語が未発達であることもあり、本人が体験している病的体験や奇異な思考過程が言葉として表現されないこともしばしばです。行動化が先行するため、自傷行為や他害行為などがあったあとでもなぜそのようになったのか経過を振り返れないこともあります。時期により多彩な症状が出ては消えするため、診断や治療方針が定まりません。診断が定かではないために、治療方針について明確に子どもや家族に説明できないもどかしさが伝わる症例でした。わからないことは、わからないと保留にし、とにかく丁寧に関係を作り評価を繰り返していくこと、時間経過でみたてていくことの重要性を確認した会となりました。

6月定例症例検討会

6月16日には定例症例検討会が開催されました。附属病院レジデントの武越医師が症例提示を行いました。抑うつ状態や自傷行為など明らかな精神不調があるにも関わらず、症状について子どもと対話ができない武越医師の悩みを検討しました。言葉でのやりとりを中心とした面接が膠着する背景は複数想定されますが、なんとかしたいと焦る医師は自ら治療技法に問題があるのではないか?と内省しがちです。そのような態度ももちろん大事ですが、その前に面接場面のセッティングで医師と1対1の対話をすることに緊張を感じているかどうか、家族が同席していた方が話しやすいのではないか、逆に家族がいることで切り出せない話題はないのか、などを考えることも必要です。また、子どもの表現力もそれぞれですので、能力検査や性格検査を実施しながら、どの程度の表出が期待できるのか査定することも必要になります。作業療法や遊戯療法など非言語的な治療アプローチから入りながら子どもと関係を作っていく必要があるかもしれません。後日、症例検討会での助言は実際の診療に活かされ、家族同席での面接で子どもの笑顔も垣間見られて武越医師もホッとできたとのことでした。

6月児童精神科レジデントクルズス

6月2日に上級医による児童精神科レジデントクルズスを開催しました。まだ外来診療を開始して間もない武越医師と宇賀神医師のリクエストを受け、藤田医師より児童精神科における薬物療法の留意点、浅沼医師より摂食障害入院治療後の外来診療の2つのテーマで講義が行われました。成人グループで研修中の医師も複数参加してくれました。

5月定例症例検討会

5月19日には定例症例検討会が開催されました。症例提示は市民総合医療センターの宇賀神医師が担当しました。精神科医として仕事を開始して間もない中、神経性やせ症のお子さんが少しでも長く医療に留まれるように、関係づくりに腐心される様子が伝わってきました。治療中の子どもからの拒否に遭い、どのように働きかけて良いのか悩む時は度々あります。病棟の看護師さんには話すのに、主治医として関わろうとするとそっぽを向かれてしまったり、看護師さんから自分についての不満を伝え聞くこともあると悩むことでしょう。ただ、拒否の理由は様々で、不定期に自室を訪れる主治医の不安定な面接構造に困惑していたり、家族面接のようなシナリオの決まらない面接は苦手であったり、肥満恐怖に対してぶれない姿勢の主治医に対する恐怖感であったりと色々あるかもしれません。このような症例検討の場で多角的に本人や家族のあり方を検討することで新たな関わり方が見えてくるのだと思います。駆け出しの児童精神科医である宇賀神医師を参加者は応援する気持ちで参加者は様々な視点を提供してくれたと思います。

5月シニアレジデント抄読会

5月12日はシニアレジデント抄読会を開催しました。成人グループで研修中のレジデントの先生方にも参加いただき活発な議論となりました。市民総合医療センターの宇賀神北斗医師より「 Predictors of psychotic symptoms among young people with special educational needs」、附属病院の武越百恵医師より「Effectiveness of enhanced cognitive behavior therapyfor eating disorders: A randomized controlled trial」の2つの論文について各自の臨床疑問と共に紹介をいただきました。1つ目の論文は特別支援学校に通う子どもたちについて将来の精神病発症を予測するための観察項目としてCBCLによる行動障害の評価とSISによる精神病症状の評価が有効かどうかを示したものですが、陽性的中率26%という結果を慎重に解釈する必要があること、むしろ陰性的中率が97%という結果は将来の発症を予測しない場合に有効化もしれない、などの議論となりました。2つ目の論文は平成28年度から保険適応となっている摂食障害に対する認知行動療法CBT-Eの効果を通常治療(TAU)と比較したものでした。この論文で取り上げられたオランダの摂食障害治療センターの治療はCBT-EおよびTAU両群とも日本の摂食障害診療の現状と比べて質および量ともに上回っていることを前提に我々の診療への適応可能性について議論し、少しでも摂食障害診療の底上げをしていく必要性があることを確認しました。

インターネット・ゲーム障害治療プログラム「横浜遊技計画」がスタートしました

コロナ禍の中、半年遅れでようやくスタートすることができました。第一回は、簡単なイントロダクションの後、「メイクンブレイク」というアナログゲームを楽しみました。第一回ということでスタッフも手探りでしたが、参加者の方々の協力もあり、楽しく盛り上がれた1時間半でした。GWがあるため次回は1ヶ月後ですが、また元気に集まれたらと思います。

4月定例症例検討会

新年度がスタートして新たなメンバーとともに症例検討会を再開しました。今回は児童精神科をローテート中の研修医、成人グループのシニアレジデントも参加して賑やかでした。症例提示は青木医師が担当しましたが、片親からの暴言や威圧的な養育に起因するPTSDの診断と父母の不和・離婚を巡る家庭環境に対する適応障害の診断とで担当医の方針が揺れている症例でした。片親の養育態度が問題なのか、父母の不和自体が問題なのか慎重に見極めないといけません。共同親権が認められていない日本では、ともすれば訴訟の材料になります。判断を誤れば主治医の診断が子どもの生活環境に悪影響を及ぼすことさえあります。客観的な視点で病歴を把握できているか自己点検が必要です。

3月定期症例検討会

3月17日は今年度最後の定期症例検討会を開催しました。1年間を通してWeb開催となり、皆様とお会いできない1年間で終わったことがとても残念でした。今年度最後の症例提示は浅沼医師が担当しました。児童精神科医としてかれこれ10年間のキャリアとなる医師として、小学生時代から担当していた子どもが児童精神科の卒業をどのようにしていくべきなのか、成人期へのトランジションの問題を皆で考えました。医師と子どもとの相性もありますが、子どもが信頼を寄せるからこそ、医師は子どもの期待に応えて回復の経過に寄り添うことができます。浅沼医師は自分の関与が子どもの自立を妨げることにならないのか、まるで子離れを迫られる親心のような気持ちで葛藤しているようでしたが、医師が診療ができる範囲の中で子どもの希望に沿いつつ、子ども側の生活の事情(大学の通学の事情や就労など)に合わせて支援を移行していくことが現実的なのではないかという意見が多数でした。成人を主に診療している精神科医から見た児童精神科医像は様々です。子どもを抱えすぎて自立を妨げているようにも見えるかもしれませんし、逆に18歳になったからと問題が整理されぬままに丸投げされたという悪評を耳にすることもあります。様々な意見には耳を傾けつつも、浅沼医師が信じる診療スタイルで子どもに寄り添っていただけることを期待し症例検討を終えました。

3月レジデント向けクルズス

3月3日にレジデント向けクルズスを開催しました。戸井田医師からのリクエストで「ADHD患者の親への助言と支援」、青木医師からのリクエストで「児童青年期の自傷自殺に対する弁証法的行動療法」をテーマとして話し合いました。話題提供は浅沼医師、藤田医師がそれぞれ担当しました。親に助言と支援をする前に親の大変さをくみ取れているのか、極端な対立する二軸の議論を中庸で妥当な結論にに導く弁証法という概念そのものについてなど、あまり教科書には書かれていない話題も出て興味深い時間となりました。

2月定期症例検討会

2月17日に定期症例検討会を開催しました。青木医師に症例提示をいただきました。昨年8月の症例検討会に提出された事例の続きについて話し合いました。自傷行為や性的逸脱行為が外来の度に報告されるものの、何がつらくて自己破壊的行動を生じているのか、半年経過しても主治医と子ども、家族の間で主訴が共有できないという悩みがあったようです。医師としては「大変なことが起こっている背景には何があるのか」と知りたくても、本人や家族からは受診までにあったことの報告が語られるばかりで子どもの本当の主訴に辿りつけないことは時々あるものです。「表面的」にしか触れられない子どもと家族のあり方をどうしたら「立体的に」理解できるのか、主訴が明確に把握できないまま薬物療法を行うことは問題はないのか、主治医はどういう関わり方をすれば精神療法的に進展がみられるのか、といった話題が話し合われました。

外部講師招聘講演会(浜田恵子先生)

2月3日には「心理評価を家族支援に活かすために」と題して平塚児童相談所で心理職として勤務されている浜田恵子先生にご講演をお願いしました。横浜市立大学精神医学教室ではすべての精神科医が子どもから大人までの発達障害に関係する相談に対応できることを目指し、来年度よりレジデント1年目から療育機関と児童相談所での研修を行う予定です。診療の際、自分がオーダーした発達検査の結果を理解して子どもや家族にわかりやすい形でフィードバックしなければなりません。このため、心理職の立場から最低限医師にわかっておいてもらいたい心理検査のこと、心理職との円滑な連携のあり方、家族への伝え方についてレクチャーをいただきました。当日は若手医師以外にも多くの参加者に参加いただき、50人を超える大盛況で終了しました。

心のつぶやきノートを再開しました

附属病院の児童精神科には以前、「心のつぶやきノート」なるものがありました。昭和世代の人には懐かしいかもしれませんが、ペンションの談話室などに置いてあるようなノートです。訪れた人がその時の思いを書き綴り、また次の人が書き加えていくというものです。SNSが普及した今、手書きで「つぶやき」をすることがすっかりなくなりましたが、「つぶやき」の意義は再発見されているような気がします。児童精神科のTwitterアカウントを作るより、外来に訪れたときの気持ちを「つぶやき」として書き込んでもらうのも健康的かと思い15年以上ぶりに再開することになりました。もちろん、個人情報を載せること、炎上するような際どい書き込みは厳禁です。今の子どもたちや親御さんはどんなことを書き込むのでしょうか。それとも、書くことも難しくなっている時代なのか。皆さんの反応を楽しみにしています。

1月定期症例検討会

1月20日に新年初の症例検討会が開催されました。戸井田医師より症例提示がありました。テーマはHigh EE(High Expressed Emotion;高い感情表出)の家族と精神病性障害についてでした。High EEには3つの構成要素である批判、敵意、過剰な感情的関与があり、統合失調症の再発と関連しています。しかしながら、これまでの研究課程ではこのHighEEの概念により家族が批判にさらされた過去もあり、治療者は慎重に扱う必要があります。あくまで、家族支援のための概念であることを確認して初発の精神病患者さんへのケアについて話し合いました。

12月定例症例検討会

12月16日には定例の症例検討会が開催されました。青木医師に症例提示をいただきました。離婚調停・裁判で我々児童精神科医が意見を求められる場合、一番頻度が高いのが子どもの心的外傷と面会権をめぐる問題です。子どもの心的外傷による影響を懸念する親とそれを否定して面会を求める親とが、争い、子どものメンタルヘルスの専門家としての見解を求められます。PTSD周辺の知識に乏しかったり、司法関係者とのやり取りをする経験に乏しかったりする場合、関与に消極的になってしまうことや曖昧な意見を伝えてしまうこともしばしばです。心的外傷を抱える子どもを診療するときには、安心感を感じられる関係づくりが何よりも大切で、医師としてもそれなりの心構えが必要です。そのうえで子どもや家族がたどった経過を丁寧に紐解き、評価しないことには、専門職としての明確な意見は出しえないこと、など、児童精神科医としての姿勢について話し合いがなされました。

12月レジデント向けクルズス

12月2日にはレジデント向けクルズスが開催されました。“同じような幻覚や妄想でも、うつ病としたり、ARMSとしたり、統合失調症としたり、ひとつの症状でも異なる診断になってしまう精神科診断に戸惑う”という戸井田医師の疑問に宮崎医師が答える形でクルズスを行いました。ヒポクラテスの時代から現代のDSMまで概観する壮大な内容の宮崎医師のクルズスでしたが、症状を十分吟味して複数の組み合わせで見える横断的診断と縦断経過を吟味したうえでの見立てを立てる重要性を伝えていただきました。次に、“児童精神科領域の依存症の対応について知りたい”という青木医師の要望に答える形で、浅沼医師がクルズスを行いました。アルコール依存や薬物依存とは異なる、ゲーム依存や自傷行為などの行動嗜癖を取ることの多い児童思春期患者の特徴、CRAFTをはじめとする家族支援のあり方、来春に新規スタートするゲーム障害のプログラムのエッセンスを概説していただきました。どちらも興味深い内容で、レジデントの先生の学びになったことと思います。