カテゴリー別アーカイブ: 活動報告

11月症例検討会

11月20日にはオンライン開催で症例検討会が開催されました。担当は附属病院の松本峻先生でした。社会的養護(一時保護所、児童養護施設など)下にある子どもたちが18歳を迎えるにあたって、これまでの生活から自立に向けて複数の選択肢を迫られます。長い間社会的養護のもと成長してきた子どもたちですら、施設を卒業して就職・進学、そして一人暮らしなのか親元に戻るのか、困ったときには誰に相談すればいいのか、などのテーマが一気につきつけられ、混乱している状況で精神科医が出会うこともしばしばです。ただでさえ大変な社会的養護からの自立というテーマに加え、厳しい逆境的環境から医療につながる17‐18歳の青年期をどう医療的に支援するかということが検討事項となりました。

9月症例検討会

9月18日に定例の症例検討会が開催されました。横浜市立大学附属市民総合医療センターシニアレジデントの菅原医師が症例提示を行いました。外来での診療の進め方やコツについて、参加者から多くの意見をいただきました。ありがとうございました。

7月症例検討会

7月17日に定期の症例検討会が開催されました。今回は横浜市立大学附属市民総合医療センター精神医療センターの菅原医師が症例提示を行いました。治療方針について、参加者から多くの意見をいただき、客観的に方針を見直すよい機会となりました。ありがとうございました。

5月症例検討会

5月15日に症例検討会が開催されました。昨年度から、平時のオンラインに加え、数ヶ月に一度、コロナ禍以前に行っていた対面方式での会を再開しています。毎回、オンライン開催よりも大人数の参加が得られ、盛会となります。今回も、医療、教育、福祉の各機関から、多職種の専門家たちが参加しました。症例は、市民総合医療センターの児童精神科に今年度から赴任した菅原医師が呈示しました。患者さんに過去に関わった経験のある支援者や、地域で関わる支援者も参加したため、多面的な視点で議論を進めることができました。生育歴、病歴、家族関係ーこれらは、現在の患者さんを理解する上で、いずれも同等に重要な要素であり、限られた時間内で、どこが重点的に議論されるかという点に、症例検討会の難しさがあります。その上で、どこに力点をおいて治療を進めるか、また、現在の治療は患者さんの在り方にそぐわない方針が採られてはいないだろうかと、時には批判的な視点も交えながら、厳しい議論がなされます。その患者さんにとって、もっとも治療が促進される方法を、参加者は高い集中力で模索する会となりました。

1月症例検討会

1月17日には対面集合形式での症例検討会が開催されました。近隣の小児科医や児童相談所心理士など、バラエティに富んだ参加者が集まりました。市民総合医療センターの児童精神科太田医師に症例提示をしていただきました。細やかで丁寧なプレゼンテーションから、当初ほとんど会話もできなかった患者さんとの関係から、徐々に話が増えフランクに話せる関係になっていく様子が共有できました。一方、病状は一進一退で、治療方針について、ともに検討しました。参加者は、自分が主治医になったかのように、細かい本人の情報を聞きとりながら、なぜ治療関係が進むことができたのか、なぜ症状は一進一退なのか共に頭をひねりました。家族関係も重要なテーマであり、家族と医療者とのやり取りを詳細に聞き取りながら、家族へのアプローチを検討しました。参加者から、自分であればこうする、という想像を働かせて助言いただく場面もあれば、治療者の苦労をねぎらい、励ましの声をかけていただく場面もありました。検討会は、発表者は準備は大変でありますが、主治医として日々の診療を見直したり勇気づけられる良い機会になっていると思います。

12月定例症例検討会

12月20日は定例症例検討会が開催されました。横浜市立大学附属病院の青木医師が症例を提示をしました。治療方針はあるものの、もっと自信を持ちたい、もっと見通しを持ちたい、と願う発表者に、参加者たちが応えていきました。治療そのものに対する助言だけにとどまらず、心理面接を通じて「良い時間」を持ち始めているのではないかという意見や、家族へのアプローチをもっと行った方が良いという意見など、多角的な意見が出ました。発表者から参加者たちへ、患者さんへの関わり方などについて積極的に質問をしている姿が印象的でした。様々な立場の医療者が同じ症例について議論する、症例検討会の良いところが詰まった、気付きの多い会だったのではないかと思います。

11月定例症例検討会

11月22日は定例症例検討会が開催されました。症例提示は市大附属病院児童精神科にて研修を行っている精神科シニアレジデントの江藤医師が担当しました。提示されたのは高校生の症例でした。治療関係は築きつつあるものの、診断や治療の方向性、家族への介入についてなど、検討課題は多岐にわたり、若手らしい悩みがうかがえました。治療方針が定まらない場合は、希死念慮や虐待など緊急性の高い課題の評価を優先するなど優先順位を意識しよう、といった意見や、様々な訴えの中の「主訴」はなんだろう?と考えることで、必要な治療が見えてくる、という意見などがありました。また、家族に対する介入については、今の診療姿勢は自信を持つべきだが、これからは家族それぞれに見立てを伝えながら家族間の緊張をほぐす試みはどうだろう?など意見が出ました。活発な意見交換がなされ、担当者も今後の治療の見通しが見えたとのことでした。

10月定例症例検討会

10月18日には3年ぶりに対面集合形式での症例検討会が開催されました。35名もの参加者が集まり大盛況でした。生理学教室での研究の傍ら、県立総合療育相談センターで発達障害臨床に関わられている藤本医師に症例提示をしていただきました。不登校・緘黙の少女の症例ですが、語らぬがゆえに医師‐患者関係、治療目標の共有が明確にならずに中長期的目標が立たないことへの治療者の悩みが語られていました。不安緊張の強い少女が熱意あふれる藤本医師の治療スタイルをどう受け入れられるのかが主なディスカッションとなりました。当事者にとって有益な治療をその害と勘案しながら十分検討できているか、薬物療法でも非薬物療法でも常に臨床家は吟味せねばなりませんが、緘黙のお子さんを相手であればなお慎重に進める必要があります。この待ちの姿勢について様々な意見が出されました。

10月レジデント向けクルズス

10月4日には上級医によるレジデント向けクルズスが開催されました。廣内医師より「統合失調症の子どもたちへの関わり方」、青木医師より「うつ状態の子どもへの薬物療法」をテーマにお話しいただきました。各上級医の先生からはタイトルにとらわれない、児童精神医療の基本を踏まえたお話しをいただき、それぞれの臨床態度を振り返るよい機会となりました。

9月定例症例検討

9月20日には定例症例検討会が開催されました。症例提示は市民総合医療センターの太田医師が担当しました。神経性やせ症のお子さんは再栄養に強い抵抗を示すために担当医との信頼関係を築くことに難渋することがあります。また、元来の不安特性や双方向的なコミュニケーションの苦手さから上手に関係を築くことも苦手なことがしばしばです。またその親御さんもしかりです。そんな事情もあって、急性期の場合には1~2か月はベッドサイドで話も弾まずに、事務的な治療方針のやり取りをしてはその子自身の人となりを垣間見る満足感も得られないもやもやとした関りが続くことがあります。子どもが発する言葉や表現が少ないと病状を抱える子どもの家庭や地域での生活の姿がイメージできないこともあります。そういう時の症例検討は得てして参加者に子どもや家族のイメージが伝わらずにもどかしい時間が過ぎることもありますが、そのもどかしさについて当日は様々な意見が交換できました。治療者の投げかけに対するふとした表情や背を向ける態度ひとつひとつをつぶさに観察し言葉以外のメッセージを汲み取ることの重要性や難しさが語られていました。

8月定例症例検討会

8月16日には定例症例検討会が開催されました。長期経過の摂食障害の事例を市民総合医療センターの首藤医師に提示していただきました。複数回の入院を附属病院および市民総合医療センターで繰り返しているため、度々担当医が交替しています。渋々ながら栄養療法を受け入れる時期もあれば、家族を拒否して面談すら拒み、むしろ担当医と蜜月のようになる時期、一切栄養療法を受け入れない時期、そして再度治療を受け入れる時期、と担当医が変れば患者さんのあり方も変わっていく経過でした。こういった様々な様相で展開する治療を地続きとする症例検討は現在の外来担当医の青木医師にとって大変参考になったようです。

7月定例症例検討会

7月19日には定例症例検討会が開催されました。市民総合医療センターの太田先生に症例提示をしていただきました。精神疾患の入院治療において、不潔行為や暴力・暴言などにさらされる最前線のスタッフにどのような助言や見通しを与えるべきか、という点について話し合いました。これは子どもの精神医療に限ったことではないですが、みたてと治療方針についてこまめにスタッフとコミュニケーションをとりながら治療を進めることの大切さを確認しました。

7月レジデント向けクルズス

7月5日にはレジデントのリクエストに応える形で上級医のクルズスが行われました。市民総合医療センターの浅沼医師より虐待を疑って帰宅させることを迷う場合の対応について、廣内医師より療育センターでの発達障害診療と告知説明のあり方について、話題提供がありました。どちらのテーマもケースごとによって対応が異なり的確な判断はいつになっても難しいものです。当日語られた、上級医の経験談や診療姿勢は若手医師にとっては学びになったことと思います。

6月定例症例検討会

6月21日には定例症例検討会が開催されました。附属病院の青木医師が症例提示を担当しました。発達障害とトラウマという児童精神科領域の二大テーマを含む事例でしたが、複雑な家庭環境の中で一家が離散していること、本人との対話が解離症状や発達障害特性のためになかなかうまく進まない中でどのようにみたてと治療方針を固めていくかが難しい事例でした。このような事例は複数の支援機関が入るために児童精神科医は診断と治療方針を周囲にわかりやすく共有し、リーダーシップを取る必要があります。しかし実際は三々五々で外来診療の場に立ちあらわれるため症例全体の見立てに苦労するという経験が語られていました。

令和5年度MEWの会

6月10日は児童精神科が当番幹事となって横浜市内の医療福祉教育の子どもに関わる職種が集まるMEWの会が八景キャンパスカメリアホールで開催されました。「不登校・ひきこもり診療の現在地と未来」と題し、廣内医師・浅沼医師・藤田医師が登壇しました。当日は124人の参加があり、コロナ禍中に縮小せざるを得なかったこのMEWの会も元通りの活気を取り戻した印象です。廣内医師が不登校・ひきこもり診療の事例を6例紹介し、浅沼医師が現在ひきこもり家族支援ツールとして着目されているCRAFTの実際を、藤田医師は現在横浜市大で取り組まれているメタバースによる若者の心の支援について紹介しました。

5月定例症例検討会

5月17日は定例の症例検討会が開催され、浅沼医師に症例提示をいただきました。神経性やせ症の背景には、自閉スペクトラム症や注意欠如多動症など神経発達症による生きづらさを抱える人たちが多くいます。特に女子は目立たぬよう規範に沿いながら、こじんまりとした生活を心がけている子どもたちも多くいて学校も家族も「大人しい子」くらいの認識でずいぶんと時間が経ちます。中学校以降になるとじわじわと強まる不適応感から抜け出そうともがくうちに摂食障害を発症していく事例が多くあります。「大人しい子」というベールをかぶった生きづらさを再定義し、これからの指針を示して伴走する必要があるのですが、決められたレールに沿って進んできた子どもを発達特性に沿った環境へ方向転換させるには精神科医としての上手なコミュニケーションと合意のプロセスが求められます。摂食障害は確実な再栄養と十分な療養期間がないと回復しないわけですが、ここに進学・就労のタイミングが重なって将来を見据えた判断をしなければならないときに悩みが生じるものです。当日はその判断の難しさについて話し合いました。

4月定例症例検討会

新年度は新たな若手医師を迎え、児童精神科チームがスタートしました。最初の症例検討会は藤沢病院から戻られた青木芳子医師に担当いただきました。大学病院を離れる前から解離や自傷行為、心理的虐待を背景に児童相談所も巻き込んで苦心した経過の症例でしたが、1年を経て戻ってもなお、その情緒の安定には治療と支援の継続が必要だと再認識された経験を報告されていました。解離症状や自傷行為を前にどのような対応をすれば良いか、上手に外来診療を切り盛りできるのだろうかと不安を感じる若手医師も多く、様々な感想がありました。ただ、そこは子どもと家族の未来を信じながら激しく多彩な症状の裏側にある生きづらさはどこにあるのか、逆境体験なのか、発達障害的特性と環境のミスマッチなのか、不安障害や気分障害が重層しているのか見立てをしっかりしながら方針を共有することにつきることを確認しました。診療の基本に立ち返る重要な症例検討会となりました。

3月定例症例検討会

3月15日には今年度最後の定例症例検討会が開催されました。市民総合医療センターレジデントの重井医師に担当していただきました。拒否を続ける摂食障害の場合、身体的拘束や強制的な経管栄養が必要となることもしばしばです。病態が重ければ重いほど、医療スタッフの手が割かれ、時には担当医がつききりで一時間栄養終了まで寄り添うこともあります。このような言葉を介さぬケアから関りが生まれ、子どもの苦悩が少しずつ開示されて症例全体の理解が深まっていく経験があります。つい薬物療法や認知行動療法など、理論先行となりがちな急性期の精神医療の中でこころの治療らしい関与ができたことは重井医師にとって大きな経験となったようでした。重井医師は今年度で大学病院を離れ、一般精神科病院での研修に移りますが、さらなる経験を積み戻ってきてくれることと思います。

2月定例症例検討会

2月15日は定例症例検討会が開催されました。当日の症例提示は深津医師が担当しました。外来診療の中で子どもの表現が淡泊なために、その苦悩がつかみにくいことがあります。往々にして、そのような場合に家族からもどのような経過で子どもの不調が生じたのか、どのような対処をこれまで繰り返して病院にたどり着いているのか五里霧中のままに診察が進むことがあります。みたてと方針がすんなり決まらない症例です。一方で自殺行動や極端なやせなど医療的介入が急がれる事態が生じると、保護のための入院ニーズが生じてきます。ただ、そういう局面においても何のための入院となるのか、どんなことを期待する入院なのかが十分詰まらないままに入院治療がスタートすることが、医師の駆け出し時代にはよくあるものです。主体性を重視して任意入院とするのか、病識がないと判断して医療保護とするのか、開放病棟でよいのか、閉鎖病棟でよいのか、事が生じた時には行動制限をするのか、それとも仕切り直しの退院にするのか、みたてを深めるためにはどのように主治医として関わるのか、家族の面談はどうするのか、そんな迷いと試行錯誤について様々な議論が交わされた症例でした。

2月児童精神科講演会

2月1日には毎年この時期に行っている講演会を実施しました。今回は附属病院心理室の小林陵先生に講師を依頼し「どうして心理検査の所見はわかりづらいのか」と題して、医師と心理士の間で交わされていた精神分析を土台とする言葉が時代とともに共通言語でなくなっていった背景、このため検査結果が難解に見えるようになったこと、若手医師が性格検査を活用する際の留意点、心理療法のオーダーと終了、担当心理士との役割分担のコツなど、若手医師が明日からの臨床に役立つトピックについてお話いただきました。