研究業績・表彰
2024年
- 矢内 貴憲 先生(京都大学大学院薬剤疫学分野所属)が第44回日本川崎病学会・学術集会で優秀演題賞を受賞
第44回日本川崎病学会・学術集会(東京, 一橋講堂), 優秀演題賞 (2024. 10. 5)
表題:母体血中重金属濃度と川崎病との関連性:エコチル調査
要旨:【背景】川崎病(Kawasaki disease; KD)は報告後早期より重金属曝露との関連が指摘された(Pediatrics 1975;56:335)。これは、水銀中毒が手掌紅斑・口唇発赤・眼充血をきたし、症状が類似することに由来する。KDがアジア人、特に魚を摂取する海沿いの地域に多いことも、この説を補強しうる。2000年代にも関連性を示す報告はあるが、大規模な検証はなかった。
【方法】環境省エコチル調査(約10万母子ペア)を利用したコホート研究である。妊娠第2/3期の妊婦の血中重金属濃度(水銀[Hg]、カドミウム[Cd]、鉛[Pb]、セレン[Se]、マンガン[Mn])を、濃度に応じ4つの四分位(Q1-4)に分類。アウトカムは自記式質問票による1歳までのKD発症とし、多重ロジスティック回帰で解析。感度解析は2歳,3歳のKD発症とした。
【結果】対象85,378母子ペアのうち316人 (0.37%) がKDを発症。Q1を基準としたQ4 のオッズ比(95%信頼区間)は、Hg 1.29 (0.82-2.03), Cd 0.99 (0.63-1.58), Pb 0.84 (0.52-1.34), Se 1.17 (0.70-1.94), Mn 0.70 (0.44-1.11) であり、濃度依存的な増加は認められなかった。アウトカムを2歳、3歳に延長しても同様の結果であった。
【結論】KDの発症リスクは重金属曝露によって増加しないことが示唆された。
ひとこと:環境省「エコチル調査」は、自身が小児科医として参加者の方の診察や検体採取など、データ収集に協力した思い入れのある調査研究です。そちらを今回は研究者として取り組み、大学院入学後に論を固め、今回の受賞に至ったことを感慨深く思います。横浜市大小児科の伊藤教授、京都大学大学院薬剤疫学分野の川上教授、筑波大学医学群社会医学系の吉田教授をはじめ、諸先生方のご指導に深く感謝申し上げます。
2023年
- 2023年 横浜市立大学小児科学教室 業績集 [2024年8月28日 掲載]
- 横山 詩子 先生(東京医科大学細胞生理学分野主任教授)が2023年度日本小児循環器学会「高尾賞」を受賞
第59回日本小児循環器学会・学術集会(横浜,パシフィコ横浜ノース),高尾賞受賞講演(2023. 7. 6-8)
表題:臨床から基礎医学へ:これからの動脈管・小児血管研究に向けて
受賞内容:この賞は、小児循環器医学の発展に多大な功績を残された元日本小児循環器学会理事長、故 高尾篤良 東京女子医科大学名誉教授を追悼記念するとともに、小児循環器医学の発展に顕著な功績があり、今後もこの分野で継続的に中心的な役割を果たすことが期待できる研究者を選定し、顕彰することを目的として平成23年に設立されました。 動脈管の胎児期の開存と出生後の速やかな閉鎖は、出生後の循環適応に必須です。動脈管の閉鎖に関わる新たな分子機序を明らかにし、発達循環生理研究分野を開拓したとして、米国新生児生理学の教科書(Fetal and neonatal physiology 6th edition, Elsevier)に新たな知見として記載されました。動脈管研究に加えて、小児循環器領域の継続した研究と若手研究者の育成に寄与したことが評価され今回の受賞となりました。
ひとこと:小児循環器学を志す者として故 高尾先生のお名前を冠した賞をいただいたことは身に余る光栄です。同時に、60歳未満の研究者に贈られる今後の活躍を期待される賞であることから、身の引き締まる思いです。これまでご指導下さった先生方、共に研究をしてくださった教室員、大学院生、医学部生の皆さんに厚く御礼申し上げます。今後も一層研究を推進できるよう精進してまいりますので、今後とも何卒よろしくお願い申し上げます。 - 小形 亜也子 先生(済生会横浜市南部病院 小児科)が国際学会 (日韓中小児腎臓セミナー) で Best Presentation Award を受賞
The 19th Japan-Korea-China Pediatric Nephrology Seminar 2023 - Best Presentation Award ~Hiroto Prize~, Seoul National University Hospital, Seoul, 2023.4.8
Title: Multinucleated podocyte may lead to a diagnosis of cystinosis
要旨:シスチノーシスは全身にシスチンが蓄積し、腎機能障害や眼症状をはじめ、様々な全身症状を呈する稀なライソゾーム病である。治療により死亡率や合併症を著明に低下させうるが、特に中間型はFanconi症候群などの典型的な所見を認めないため、しばしば診断に苦慮する。今回病理における糸球体上皮細胞の多核化が診断に寄与した2例を経験した。糸球体上皮細胞の多核化はシスチノーシスに特徴的であり、本症例においては多数の多核化を認めた。いずれの症例も早期診断をし得たことで早期に治療を開始し、軽度の腎障害以外の症状はなく経過できている。
シスチノーシスにおいて早期診断・早期治療が予後を改善するため、糸球体上皮細胞の多核化は診断の一助となる重要な所見である。
ひとこと:初めての英語、そして20分の比較的長い発表で、如何にオーディエンスを退屈させないかを意識して準備をすすめました。当日は伊藤教授のご協力のもと会場を巻き込んだ発表ができ、このような栄えある賞をいただけたことを嬉しく思います。国際学会での発表の機会をくださり、ご指導くださった伊藤秀一教授をはじめ、腎グループの先生方に心より感謝致します。
2022年
- 2022年 横浜市立大学小児科学教室 業績集 [2023年8月3日 掲載]
- 池川 健 先生(神奈川県立こども医療センター)が日本胎児心臓病学会で里見賞を受賞
第28回日本胎児心臓病学会学術集会 - 里見賞, 松本市(Webとのハイブリッド開催), 2022.2.18-19
題名:三尖弁異形成およびEbstein奇形の胎児期三尖弁逆流波形による予後予測
論文要旨:【背景】三尖弁異形成(TVD)およびEbstein奇形(EA)の右室機能評価として, 最大三尖弁逆流速度(TRVp)が用いられている. 胎児エコーで測定されたTRVpが同じでも出生後の予後がしばしば異なる. そのような症例に対してTRから求められるdP/dtが右室機能を補足的に評価することが期待される.
【目的】胎児診断されたTVDおよびEAのBVが成立する予後予測の基準を明らかにすること.
【対象と方法】2006-2021年に当院でTVDまたはEAと胎児診断され, 予後が明らかな39例を対象とした. 出生もしくは胎児死亡直前の胎児心エコーでTRからTRVpおよびdP/dtを求めた. dP/dtは変法を用い, TRVpの1/3から2/3まで変化するのにかかった時間で, 簡易ベルヌーイの法則で求めた推定右室圧の変化量を除して求めた. 予後はBV, 単心室循環(SV), 胎児死亡, 新生児死亡の4つで評価し, BVが成立したBV群とそれ以外のNBV群で検討した.
【結果】BV群21例, NBV群18例で検討した. TRVp(m/s)はBV群2.4-3.8(中央値3.2), NBV群1.0-3.4(中央値2.05)で分布した. TRVpが2.4m/s未満ではBVが成立した例はなく, 2.4-3.4m/sではBV群とNBV群が混在していた. TRVpが2.4-3.4m/sの範囲のBV群16例, NBV群4例に対してROC曲線で解析した. BVの成立予測に対して, TRVpはAUC 0.594, TRVp3.0m/s以上で感度56.3%, 特異度75.0%, dP/dtはAUC 0.734, 360mmHg/s以上で, 感度93.8%, 特異度75.0%であった.
【結語】TRVpが2.4-3.4m/sの症例ではBVが成立するか明らかではなかったが, dP/dt 360mmHg/s以上という指標を組み合わせることで, 生後のBV成立が高精度で予測できた.
ひとこと:Ebstein奇形の胎児期の予後予測として、実臨床の手ごたえから三尖弁逆流波形が非常に有用な印象を持っており、それを裏付けをしたかったことが、きっかけになります。神奈川こども医療センターに所属することで、研究をすることが出来ました。その機会を与えて下さった循環器グループの皆様、横浜市大医局員の皆様、伊藤秀一先生、また胎児エコーについてご指導下さった金基成先生、川瀧元良先生に深く感謝を申し上げます。
2021年
- 2021年 横浜市立大学小児科学教室 業績集
- 川田 愛子 先生(横浜労災病院)が日本小児救急医学会で市川光太郎賞を受賞
第34回 日本小児救急医学会学術集会 - 市川光太郎賞, 奈良(Webとのハイブリッド開催), 2021.6.18-20
題名:日本小児救急医学会・小児救急重篤疾患登録調査への登録データベースは自施設におけるChild Death Reviewの基礎資料となる. (日本小児救急医学会誌 2020; 19: 181-184)
論文要旨:本学会が行っている小児救急重篤疾患登録調査へ提供した死亡症例のデータベースを解析することにより, 2012年から2016年までの5年間の当院における死亡症例とその診療の実態を把握することを試みた.その結果,[1] 5歳までの乳幼児が過半数をしめ,3分の2は院外心停止であった,[2] 異状死として届けていた症例すべてで解剖実施の有無や実施された場合の解剖結果のフィードバックはなかった,[3] 不詳死が25%,予防可能死が40%存在した,ことが明らかとなった.本登録調査への登録データベースを解析することにより,心停止を未然にふせぐための予防医学や早期治療の確立,警察や法医学との連携,死因究明の質的向上,といった当院および当地域の問題点が容易に明確となった.本登録調査のデータベースは自施設におけるChild Death Reviewの基礎資料として有用であると考えられた.
ひとこと:横浜労災病院で小児科専攻医として修行中にテーマを頂きました。指導医と環境に恵まれ受賞に至りました。特に丁寧に指導して下さった佐藤厚夫先生には大変感謝しております。ありがとうございました。 - 佐々木 惠吾 先生(市大センター病院)が国際学会 (日韓中小児腎臓セミナー) で優秀演題賞を受賞
The 18th Japan-Korea-China Pediatric Nephrology Seminar 2021 - Excellent Presentation Award, Fukuoka chlidren's Hospital, Fukuoka, 2021.4.25
Title: Membranous nephropathy in a boy with Pompe disease undergoing enzyme replacement therapy
要旨:ポンペ病は、酸性α-グルコシダーゼ活性の低下により、グリコーゲンが蓄積し様々な臓器に障害が現れるライソゾーム病である。早期に酵素補充療法を開始することで、予後の改善が期待できるが、一部の症例では補充酵素に対する抗体産生を認め、治療効果の低下やアレルギー反応をはじめとした副作用が報告されている。
症例はポンペ病遅発型の14歳男児。4歳でポンペ病と診断され、以後酵素補充療法が開始されていたが、補充酵素に対する抗体価が高値で治療効果の減衰やinfusion reactionを認めていた。免疫寛容療法を行いながら酵素補充療法は継続されたが、高抗体価が持続し、治療効果が減衰していた。酵素補充療法が継続される中、14歳の学校検尿で蛋白尿を指摘され、腎生検の結果、補充酵素に対する抗体による膜性腎症と診断した。抗体産生細胞を標的としたBortezomibとRituximabによる積極的な免疫寛容療法により、抗体価は有意に低下し、蛋白尿が消失。酵素補充による治療効果も上昇した。
酵素補充療法に伴う膜性腎症の報告は少ない。BortezomibとRituximabによる抗体産生の抑制が効果的であった。酵素補充療法を受けている患者では定期的な尿検査で腎炎を早期発見することができる可能性がある。
ひとこと:もともと英語が苦手な私としては、国際学会での発表は初めてで、英語でのスライド作成(英語ならではの表記)、発音などわからないことばかりで、伊藤教授をはじめ、内村暢先生やその他多くの先生方にご指導頂き、なんとか形にすることができました。コロナ禍ということもあり、Web開催での特殊な環境下での受賞ではありますが、身に余る光栄な賞をいただき、また貴重な経験をさせていただきとても感謝しております。これからも励んでいきたいと思います。
2020年
- 2020年 横浜市立大学小児科学教室 業績集
- 本井 宏尚 先生(横浜医療センター)が小児神経学会で若手優秀ポスター賞を受賞
第62回日本小児神経学会学術集会, Web開催(主幹:国立精神・神経医療研究センター病院), 2020.9.1-9.30
演題名: 遊走性焦点発作を伴う乳児てんかん児における異周波数信号間強度による発作時脳波パターンの解析
【目的】異周波数間結合強度(Modulation Index: MI)は, てんかん原性領域の同定や焦点切除術後の予後予測に役立つという報告がある. 今回我々は,てんかん性脳症のひとつである遊走性焦点発作を伴う乳児てんかん(Epilepsy of Infancy with Migrating Focal Seizures: EIMFS)の発作時脳波でMIを算出し, EIMFSの診断におけるMIの有用性について検証した.
【方法】対象は, 現在5歳のEIMFS女児, 生後3か月より意識減損を伴う焦点発作や全身強直間代けいれんが日単位で出現した. 発作時脳波で焦点移動所見を認めたためEIMFSの診断に至った. のちに全エクソーム解析を施行し, KCNT1 variantが判明した. 生後3か月から5か月の間に施行された計6回の脳波を用いて, 低周波数位相3-4Hzと高周波数30-90Hzの振幅における各電極のMIを算出し, 発作時の焦点移動パターンとMIの相関を統計解析した. 焦点移動の定義は, 対側半球への伝播または同側半球であれば隣接しない電極への伝播とした.
【結果】捕捉された発作は計9回, 焦点移動パターンは同側1回, 対側8回であった. 脳波判読時に発作焦点移動ありとした電極とMIとの間に有意差を認めた(p<0.001).
【結論】MIを用いて焦点移動を判定することでEIMFSの診断に役立つ可能性がある. 今後もEIMFS症例を蓄積し, 発作焦点移動パターン, 原因遺伝子, てんかん予後の相関を解析していく必要がある. - 柴 徳生 先生(横浜市立大学附属病院)が日本小児血液・がん学会で血液基礎部門学術賞を受賞
第62回日本小児血液・がん学会学術集会 - 血液基礎部門学術賞, Web 開催(主幹:福島県立医大), 2020.11.20-11.22
論文名: Transcriptome analysis offers a comprehensive illustration of the genetic background of pediatric acute myeloid leukemia.
(Shiba N, Yoshida K, Hara Y, et al: Blood Adv 2019; 3: 3157-69. doi: 10.1182/bloodadvances.2019000404)
【要旨】急性骨髄性白血病(AML)は、様々な遺伝子異常を背景に有するヘテロな疾患群であるため、明確なリスク層別化が確立しておらず、その予後は3年全生存率で70%程度と急性リンパ性白血病に比べて低い現状がある。今回、遺伝子異常の観点からよりシンプルなリスク層別化を確立することを目的に、正常核型、複雑核型症例を中心に小児AML139例でトランスクリプトーム解析を施行した。その結果、RUNX1、NPM1、ETV6を中心に新規/レアな融合遺伝子が複数同定され、小児AMLにおいて少なくとも70%以上の症例で融合遺伝子が同定された。しかしながら、正常核型や複雑核型症例においては、新規の融合遺伝子はわずかであった。つまり、正常核型に多いCEBPAの両アリル変異やKMT2A-PTDがある症例では、融合遺伝子は検出されず、これらの異常だけでAML発症に十分であると考えられ、複雑核型症例においては染色体の構造異常自体が白血病化に寄与している可能性が考えられた。
また、PRDM16およびMECOM遺伝子の発現を併用することで、90%以上の症例で高精度に予後を予測することが可能であった。予後予測マーカーのない残りの10%については、複雑核型が多く、再発・死亡例も多いことから、現況としては中間ないし高リスクとして治療を行うことが望ましいと考えられた。予後良好とされるRUNX1-RUNX1T1症例では30-40%の症例が再発するが、多くの症例が移植でレスキューされていた。しかも、移植後合併症や感染症で死亡している例が多いことから、安全最優先で治療を行うことが重要と考えられる。一方、FUS-ERGやNUP98-NSD1といった予後不良な融合遺伝子を持つ症例においては、造血細胞移植を行っても死亡している例がほとんどであることから、新たな治療戦略の開発が急務だと考える。遺伝子発現の観点からは、これまでのマイクロアレイの結果を再確認する結果であり、PRDM16, MECOM, HOXA, HOXB遺伝子などの高発現が予後不良と密接に関係していた。さらに予後不良例ではHIST1H群の発現が高いことから、ヒストンテールの異常が予後不良に関連していることが示唆された。現在、DNAのメチル化解析を終え、エピジェネティックな観点から機能解析を進めており、さらなるAMLの病因に迫りたいと考えている。
2019年
- 2019年 横浜市立大学小児科学教室 業績集
- 小張 真吾 先生(横浜南共済病院)が日本ワクチン学会で学術集会若手奨励賞を受賞
第23回日本ワクチン学会学術集会 - 若手奨励賞, 東京, 2019.11.30-12.1
演題名:鼻腔内投与されたヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン(HP-b-CD)はIL-33を介してワクチンアジュバントとして作用する。
要旨:シクロデキストリンは環状オリゴ糖の一種で、名前は聞きなれませんが、普段使っている洗剤や食料品、医薬品などにも広く使われている添加物で、物質の溶解性や安定性を高めるために利用されています。自分が留学させていただいた医薬基盤・健康・栄養研究所 アジュバント開発プロジェクトでは、このシクロデキストリンにワクチンアジュバント(ワクチンの効果を高める物質のこと)効果があることを見出していました。今回自分が行った研究では、点鼻投与したシクロデキストリンが、どのような機序でワクチンアジュバント効果を起こすかを明らかにしました。シクロデキストリンはマウスに点鼻投与することにより、気管内にIL-33を大量に発生させ、そのIL-33がシクロデキストリンによる免疫反応を完全に制御していることを見出しました。他のワクチンアジュバントではこのような現象は観察されませんでした。また、シクロデキストリンを皮下投与した場合にもこのような現象は観察されませんでした。この実験結果の重要な点は二つあり、一つは同じ物質を使用しても、投与経路が違えば全く異なった機序で免疫反応が起こることです。近年ではインフルエンザワクチンなどでも点鼻投与のワクチンが注目されており、今後ますます増加するであろう気道投与型のワクチン開発を考える上で重要な知見です。もう一つは、非常に複雑な構造である生物の免疫系において、このようにたった一つのサイトカインにより完全に制御される系が存在するという点です。IL-33はアレルギー分野において注目を集めるサイトカインですが、免疫防御にも関与していることが判明し、生体内でどのような役割を持ってこの系が存在するのかは今後の研究課題として非常に興味深いと思っています。
ひとこと:基礎の知識を何も持たない自分が、留学先の先生方に指導していただき、このように賞を取らせていただけるような結果を出せたことに感謝しています。基礎研究の楽しさも、厳しさも痛感することができ、翻って臨床の仕事の意義も再認識させられた留学生活でした。ワクチンという、小児科医として必ずかかわる分野の知識を深められたことも、今後の自分のかけがえないのない財産になると思います。 - 本井 宏尚 先生(横浜医療センター)が日本てんかん学会で優秀ポスター賞を受賞
第53回日本てんかん学会学術集会 - 神戸ポートピア賞(優秀ポスター賞), 神戸, 2019.10.31-11.2
演題名:標準化Modulation Index統計的標準偏差を用いたてんかん原性領域の同定
要旨:【序論】薬物抵抗性てんかんのうち約77%が焦点切除術で発作消失する.術後に発作消失する必要十分な領域をてんかん原性領域(epileptogenic zone: EZ)と呼ぶ. 我々は,頭蓋内脳波を用いて算出した150Hz以上の高周波帯域の振幅と3-4Hz低周波の位相による異周波数信号間結合強度 (modulation index: MI)が, EZと発作起始域(seizure onset zone: SOZ)の同定に有用なバイオマーカーとなるかを後方視的に解析した.
【対象・方法】術後1年以上経過観察された123人を対象とした.解剖学的脳領域によるMI多様性を考慮するため,脳全領域に電極留置した123人中47人の非てんかん部の徐波睡眠脳波を用いてMI z-スコアを算出した.76人のうち脳波中に発作を認めた64人のSOZ同定に有用かを単変量解析で比較した.臨床情報,神経画像にMIを因子に加えた多変量解析により,国際抗てんかん連盟発作予後分類クラス 1の予測モデル精度を比較した.
【結果】術後90人が発作予後分類クラス 1 となった.単変量解析によるSOZと非SOZのMI z-スコア比較では,47人の総中央値: 0.96 vs 0.13(p<0.01),64人の総中央値: 1.28 vs 0.52,(p<0.01)であり,いずれもSOZの方がMI z-スコアが有意に高かった.発作予後予測のための多変量解析において,MIを説明因子に加えたフルモデルのAUCは0.847,MI情報を除いたモデル0.767,SOZ情報を除いたモデル0.782でありフルモデルの予後予測精度が最も高かった.
【結論】標準化MIがEZ,SOZの同定に役立つ可能性があるが,本研究は単施設による後方視的研究であるため,多施設による前方視的研究によるMIとEZとの関連の検証が期待される.
ひとこと: この度,優秀ポスター賞を受賞できたのは,留学先の先生方の熱心な指導のお陰です.心より感謝しております.今後も小児医療に貢献できるよう精進して参ります. - 西村 謙一 先生(横浜市立大学附属病院)が日本小児感染症学会で Young Investigator Award を受賞
第51回日本小児感染症学会総会・学術集会 - Young Investigator Award, 旭川, 2019.10.26-27
演題名:免疫抑制薬使用中のリウマチ性疾患患者に対する弱毒生ワクチンの前方視的研究
要旨:【背景】免疫抑制薬(IS)使用中の患者における水痘、ムンプスは、死亡を含む重症化が問題となっている。しかし弱毒生ワクチンは併用禁忌であり、IS使用中の患者に対する有効性や安全性の情報はほとんどない。IS使用中患者における弱毒生ワクチンの免疫原性と安全性を明らかにするため、前向き研究を行なった。
【方法】対象はISを1剤以上使用している小児期発症のリウマチ性疾患患者で、説明同意取得後に適性を確認し該当するワクチンを接種した。背景情報、ワクチン接種2~6か月後 (獲得率)・1年後の抗体価 (保持率)、3か月以内の有害事象を評価した。抗体が陽転化しない場合に1回の追加接種を可とした。
【結果】12名が登録され、年齢は11.5 (4.1-26.3) 歳で女性9名。原疾患の内訳は若年性特発性関節炎 3名、全身性エリテマトーデス 3名、若年性皮膚筋炎 2名、その他 4名。ISの内訳はミコフェノール酸 5名、メトトレキサート 4名、ミコフェノール酸とタクロリムス併用 1名、その他 2名で、9名が少量のプレドニゾロンを使用されていた。追加も含めたワクチン接種は23回で、水痘ワクチン12回 (うち追加接種5回)、麻疹ワクチン2回、風疹ワクチン1回、麻疹風疹混合ワクチン1回、ムンプスワクチン7回。抗体獲得率は、水痘 29%、麻疹 67%、風疹 100%、ムンプス 71%で、追加接種 (全例水痘)の獲得率は60%であった。有害事象は5件あり、発熱 3件、注射部位反応 1件、皮疹 1件。原疾患の再燃やワクチン株による感染症の発症はなかった。【結論】接種前評価を適切に行なったIS使用中のリウマチ性疾患患者に対する弱毒生ワクチンの免疫原性は比較的良好であり、安全に接種可能であった。
ひとこと:今まで、小児リウマチ学会で優秀演題候補に2回、選出していただきましたが、受賞は叶いませんでした。今回、受賞できるとは夢にも思わず、名前を呼ばれたときには嬉しさよりも驚きが勝りました。しかし、壇上に上がり、フラッシュを浴びているうちに、実感とともに研究が認められた喜びが沸いてきました。いつも私に元気をくださる患者さん、支えてくださるグループの皆、横浜市大医局員の皆様、そして伊藤秀一先生に感謝申し上げます。本研究は論文化し、ガイドラインの一部として必ずや患者さんにお返しする所存です。今後ともご指導の程よろしくお願いいたします。 - 塩谷 裕美 先生(横浜医療センター)が国際学会 (CIPP XVIII) で Poster Award を受賞
18th International Congress on Pediatric Pulomonology (CIPP XVIII) - Poster Awardee #1, Chiba, 2019.6.27-30
Title: Characteristics of Breath Sound in Infants with Risk Factors for Asthma Development
(Pediatric Pulmonology 2019; 54: S82)
【目的】乳幼児期の気管支喘息の早期診断、介入は重要であるが、診断にあたり、簡便かつ再現性に優れた客観的な評価法はなかった。これまで我々は肺音解析法が学童期の気道狭窄を評価する客観的方法として有用であり、乳幼児においても気道の評価が可能であることを前方視的に検討してきた。本研究では、喘息発症のリスクを有する乳幼児の気道の特徴について検討した。
【方法】2012年1月から2016年3月に各市町村の乳幼児健診のために来院した443名の乳幼児(平均9.9ヶ月、3-24ヶ月)を対象に、ATS-DLDを元にしたアンケートと肺音測定を実施した。アンケート結果と肺音解析の各パラメータ(F99、Slope、A3/AT、B4/AT、RPF75、RPF50)について解析した。
【結果】最終的に来院前1週間以内に気道感染のなかった283人の乳幼児を検討した。アレルギーあるいはアトピー性皮膚炎がある乳幼児のRPF75、RPF50、Slope、F99およびA3/ATは、アレルギー疾患のない乳幼児よりも有意に高い結果を示していた。
【結論】喘息発症の危険因子を有する乳児の肺音解析から、検査時に無症状であっても気道変化が存在する可能性が示唆された。さらに今後、肺音解析の結果が喘息発症の予測因子となりえるかを確認するため、対象が実際に喘息を発症したか否かについての経時的な観察を押し進める予定である。
ひとこと:本研究は東海大学小児科 望月 博之 教授を中心として獨協医科大学、大和市立病院、横浜医療センターの多施設共同研究として行われたものです。乳幼児喘息は日々診療機会の多い疾患でありながら、未だ客観的な評価法に乏しい現状があります。肺音解析は乳幼児にとって安全で簡便な客観的評価法となり得ると考えています。一般病院で臨床一辺倒だった私に研究の機会を与えてくださった伊藤秀一教授、アレルギーグループ長の只木弘美先生、共同研究者の先生方に心より感謝しております。今後も目の前の一人一人の患者さんを大切に日々の診療に努めてまいります。
2018年
- 2018年 横浜市立大学小児科学教室 業績集
- 矢内 貴憲 先生(横浜医療センター)が日本感染症学会東日本地方会で学会奨励賞を受賞
第67回 日本感染症学会東日本地方会 - 学会奨励賞, 東京, 2018.10.24-26
演題名:非PCV13対象血清型に限定した、肺炎球菌ペニシリン耐性率に関する検討
要旨:【緒言】小児領域において、肺炎球菌結合型ワクチン (PCV) の導入後、上咽頭定着の肺炎球菌は非PCV13対象血清型(以下、非PCV13型)が9割を占めることとなった。その耐性率は直近5年間で改善傾向にあるとされる。しかし、これらの検討はPCV7, 13型が含まれ、非PCV13型のみの報告は少ない。以上から、今回、非PCV13型の耐性率を検討した。
【方法】対象は2010年1月から17年8月の期間、横浜南共済病院で下気道感染症と診断された6歳以下の児。診断時に上咽頭ぬぐい液を採取し培養した。分離された菌株の血清型は、国立感染症研究所細菌第一部に送付し、莢膜膨化法で特定した。耐性率はベンジルペニシリン(PCG)について検討した。CLSI経口薬基準を用いて判定し、PISP+PRSPをPCG耐性と定義した。
【結果】検討対象の肺炎球菌は712株。うち非PCV13型は471株(66%)。PCG耐性率は、全肺炎球菌では2010年70%, 13年49% と減少した(p<0.001)。非PCV13型に限ると、耐性率は10年59%, 13年54%, 15年31%, 17年50% と有意差はなかった (p=0.34)。PCV7型の耐性率は79%と高かった (p<0.001)。非PCV13型のうち、15A, 35Bの耐性率は約80% と有意に高かった (p<0.001)。
【考察】近年の肺炎球菌のPCG耐性率の改善は、PCV7型が排除された影響がある。非PCV13型に限ると耐性率は7年間で不変である。ワクチン接種の推進のみでは耐性率の改善に限界があり、より一層の抗菌薬の適正使用に向けた啓発が望まれた。
ひとこと:肺炎球菌ワクチンの導入により、下気道感染症小児の後鼻腔から PCV13 対象血清型(いわゆる「悪玉」の血清型)が排除されました。本研究は、2015 年以降国内で趨勢となっている非 PCV13 血清型のみに着目し、耐性率の推移を示したものです。結果、非 PCV13 血清型の耐性率は改善していませんでした。一見改善しているように見える肺炎球菌耐性率は PCV13 対象血清型の排除の影響と考えられ、今後も継続して抗菌薬適正使用 (AMR) に取り組むべきと考えます。なお、こちらの研究は、著者前任の横浜南共済病院において、前部長の 成相 昭吉 先生より 10 年間継続している前向き観察研究です。研究継続の貴重な機会を賜りました、成相先生、西澤崇先生(現部長)に感謝申し上げます。
2017年
- 2017年 横浜市立大学小児科学教室 業績集
- 田野島 玲大 先生 (British Columbia) が国際学会 (E2i Research day) で Presentation Award を受賞
BC Children’s Hospital Research Institute Evidence to Innovation Research Day - Plenary Presentation Award, University of British Columbia, Vancouver, Canada, 2017.9.28
Title: Analyses of Adverse Drug Reactions Nationwide Active Surveillance Network: Canadian Pharmacogenomics Network for Drug Safety (CPNDS) database.
要旨:薬の有害反応は 先進国医療で大きな問題となっており,西洋では死亡原因の第4位となっているという報告もある.ゲノム薬理(Pharmacogenomics)は遺伝子変異と薬の効果・有害反応を研究する学問である.我々の研究室はカナダの多施設で遺伝子変異と薬の有害反応,効果の関係を研究するゲノム薬理のネットワーク (Canadian Pharmacogenomics Network for Drug Safety :CPNDS) の本拠地である. 2004年に始まったCPNDSはカナダ全土の主要な医療機関から薬の有害反応を生じた患者の臨床情報,血液・唾液などの検体を集め,これまで様々な有害反応に関する遺伝子変異を発見し,報告してきた.本研究の目的は,2005年5月から2017年5月まで12年間収集されたCPNDSのデータベースに含まれている臨床情報をまとめることであった.
CPNDSのデータベースには合計93,974例の薬剤使用に関する情報があり,10,475例の有害反応の報告と,83,499例の対照群(同じ薬剤を使用し有害事象が起こらなかった群)があった.有害反応報告のうち72.6%が小児例であった.患者・家族の自己申告による人種背景はヨーロッパ,カナダ,東アジアの順に多く,これは移民により構成されるカナダの人種を反映していた.データベースに多く含まれていた有害反応は1. 発疹,2. 末梢神経障害,3. 心毒性,4. 中枢神経毒性,5. 聴力障害であった.原因として多い薬剤は1. メトトレキサート,2. ビンクリスチン,3. ドキソルビシン,4. シスプラチン,5. L-アスパラギナーゼであった.また,薬剤に起因する死亡例が6例含まれていた.本研究で,CPNDSのデータベースには様々な有害反応の情報が含まれており,特に毒性の強い抗腫瘍薬に関する情報が多いことが示された.
ひとこと:こちらの研究室に来て間もなく,先人たちが長年積み上げたデータベースの臨床情報をまとめるプロジェクトを仰せつかり,結果をBC Children’s Hospital Research Instituteの研究会で発表する機会を頂きました.そして,光栄なことに演題がplenary talk に選ばれ,口演させて頂きました.CPNDSはこれまでアントラサイクリンの心毒性や,シスプラチンの聴力障害に関連する,臨床的に重要な新規の遺伝子変異を発見し,ゲノム薬理の世界に大きく貢献してきました.先達の業績を確認するとともに,ゲノム薬理研究の今後の方向性を俯瞰することができました.これまでの小児血液・腫瘍医,臨床薬理専門医としての経験を活かし,子ども達がより安全な薬物治療が享受できるよう,今後も日々研究を行いたいと思います.ご指導いただきました本研究室のDr. Bruce Carleton, 留学基金にお選びいただきました倶進会の先生方,様々な面でご理解とご協力をいただきました伊藤秀一教授と小児科学教室の諸先生方にこの場を借りて深謝いたします. - 柴 徳生先生(横浜市立大学附属病院)が小児血液・がん学会で血液臨床部門学術賞を受賞
第59回 日本小児血液がん学会 - 血液臨床部門学術賞, 愛媛, 2017.11.9-11 論文名:High PRDM16 expression identifies a prognostic subgroup of pediatric acute myeloid leukaemia correlated to FLT3-ITD, KMT2A-PTD, and NUP98-NSD1: the results of the Japanese Paediatric Leukaemia/Lymphoma Study Group AML-05 trial.
(Shiba N, Ohki K, Kobayashi T, et al. Br J Haematol 2016; 172: 581-91)
本邦では年間、180名前後の急性骨髄性白血病(AML)の新規小児患者が発生しており、このうち約10%が寛解に入らず、約30%が再発をきたします。3年生存率は70%程度と急性リンパ性白血病の90%前後と比較すると大きく水をあけられており、予後不良な小児がんのひとつとなっています。
AMLは非常にヘテロな疾患であり、非常に様々な遺伝子異常から発生してきます。小児AMLは現在、遺伝子異常と治療反応性によるリスク層別化が行われており、低リスク群、中間リスク群、高リスク群の3群に分けられて治療されていますが、低リスク群の予後が良好な一方で、中間リスク、高リスク群の予後は不良です。
中間リスク群は、登録症例の40%が割付される最も症例の多い群であるにもかかわらず、低リスク群にも高リスク群にも分類できない、真の病態が不明な、様々な遺伝子異常をもった症例の集合体でありその背景の解明が急務です。成人領域では多数の遺伝子変異が同定され、リスク因子に採用されていますが、小児ではそれらの頻度は極端に少なく、異なった背景が存在すると考えられます。
そこで私たちは、より簡単にこれらの染色体や遺伝子異常がない症例の治療層別化ができないかと考え、遺伝子発現に注目しました。
NUP98-NSD1, MLL-PTD, FLT3-ITDなどの予後不良な遺伝子異常をもつ症例に注目し、発現アレイのデータを用いて遺伝子発現パターンを検討した結果、予後不良例の多くの症例でPRDM16という遺伝子の発現が高くなっていることを見出しました。このPRDM16の発現を調べるだけで、中間リスク群の層別化のみならず、高リスク群に割り付けされるFLT3-ITD陽性例の予後予測も可能となりました。
さらに成人の白血病では、多くがAMLを占めており、年間7000人程度発症していると考えられ、成人AMLにもこの手法が応用できるので、このマーカーのもつポテンシャルは高いであろうと考えています。 - 神垣 佑先生(市大センター病院)が国際学会 (日韓中小児腎臓セミナー) で Poster Award を受賞
15th China Japan Korea Pediatric Nephrology Seminar - Poster Award, Seoul, 2017.4.8
Title: A case of Fanconi syndrome with mutation at p.R76W of HNF4A
要旨:HNF4A遺伝子異常は、先天性高インスリン血症や家族性若年糖尿病を発症することで知られている。興味深い事に、同遺伝子のp.R76Wの変異によってのみ、前記の症状に加え非典型的なFanconi症候群を併発すると報告されている。
症例は、出生後から反復する低血糖、直接ビリルビン高値の遷延性黄疸、肝腫大、肝・胆道系酵素の上昇、非典型的なFanconi症候群、肝・腎生検所見からFanconi-Bickel症候群(FBS) が疑われていた。その原因遺伝子SLC2A2 に異常はなく、追加で実施された次世代シークエンサーによる解析でHNF4Aの遺伝子変異 (p.R76W) が判明した。変異の位置はDNA結合部位であり、SLC2A2を含む多種の遺伝子の転写翻訳に関与しているため、FBS様症状を呈すると考えられる。世界で10例程度報告されているが、その中に出生時低体重を示した症例はなく、腎病理を報告したものはなかったため、貴重な報告と考えられる。
ひとこと:昨年に続いて受賞させていただきました。まさか受賞できるとは思っていなかったため、発表された時は本当に嬉しかったです。長らく診断がつかなかった症例が、NGSにより診断がつき、またその病態が非常に興味深かったため、貴重な症例を経験させていただきました。遺伝子検査を実施させていただき、また指導を賜りました遺伝学教室の先生方、情報収集に協力していただいた成育医療研究センターの先生方、御指導・御鞭撻をいただきました小児科の教授の伊藤先生に深謝致します。この経験を生かして他の学会での発表も一層頑張っていきたいと考えております。
2016年
- 2016年 横浜市立大学小児科学教室 業績集
- 神垣 佑 先生(市大センター病院)が国際学会 (日韓中小児腎臓セミナー) で Poster Award を受賞
14th China Japan Korea Pediatric Nephrology Seminar - Poster Award, 2016.5.7
Title: A 9-Year- Old Girl with Focal Segmental Glomerulosclerosis Caused by Schimke Immuno-osseousDysplasia (SIOD)
要旨:ステロイド抵抗性の高度蛋白尿の患児の経過中に、低身長と繰り返す感染が徐々に顕在化した。ステロイドの影響や原病に伴う低蛋白血症や免疫抑制薬の併用によるものと考え、経過観察を行ったが、低身長はステロイド中止後も進行し、感染の頻度は免疫抑制薬の量を変更していなかったにもかかわらず、増加傾向を示した。何らかの背景疾患を疑い、精査した結果、脊椎骨端異形成症とT細胞性免疫不全が判明し、臨床的にSIODと診断した。遺伝子解析でSMARCAL1遺伝子の複合ヘテロ接合体変異も確認された。低身長や感染反復が重度あるいは合併が認められるステロイド抵抗性の高度蛋白尿症例には本症を考慮する必要がある。
ひとこと:大きくはない研究会でしたが、英語でのプレゼンが必要だったため、英語での抄録作り・ポスター作製・発表練習など、様々な経験を一挙にでき、非常に勉強になりました。また、他施設の優秀な発表に強い刺激を受け、同学年や先輩の小児腎臓科医の先生方と知り合うことができた意義深い会でした。
2015年
- 2015年 横浜市立大学小児科学教室 業績集
- 伊藤 秀一 教授(横浜市大附属病院)が国際学会 (Update on Fabry nephropathy) で Travel Award を受賞
4th Update on Fabry nephropathy, 2015.6.1-2
Title: Complete elimination of renal glycosphingolipid deposition by 3 years of treatment with agalsidasebeta in a boy with Fabry disease.
要旨:古典型のFabry病男児にagalsidase beta の早期治療を導入したところ、発見動機であった足底の疼痛、さらに治療前の腎生検で腎臓に蓄積していたスフィンゴ糖脂質がほぼ完全に除去された。また、治療前に観察された糸球体上皮細胞のスリット膜の構成分子であるnephrinの発現減弱や電子顕微鏡での足突起融合などのPodocytopathyの所見が3年間の治療後に正常化した。腎を含む臓器症状出現前からの早期酵素補充療法の有効性が示された貴重な報告である。(Pediatric Nephrology in press)
ひとこと:EDTAと同時参加の研究会でした。Finlandや米国の同疾患の腎症を協同研究している仲間にも会えました。この患者さんは、成育のリウマチ外来に、数年間続く原因不明の間歇的な足底の激痛で紹介されました。私にとって初めて自分で診断したFabry病の患者さんです。この一例の経験により、様々な友人と知り合う機会、本症の早期症状や早期治療の啓発などに関わる機会を得ました。