血液・腫瘍グループ
診療内容と特色
血液グループは先天性・後天性血液疾患および白血病や固形腫瘍などの腫瘍性疾患の診療、造血細胞移植を担当しており、済生会横浜市南部病院小児科の血液グループとともに毎年20-30例前後の新患患者さんの診療にあたっています。内科的疾患のみではなく、外科的な治療が必要な疾患に対しては、脳神経外科、整形外科、一般外科、泌尿器科、耳鼻咽喉科、歯科口腔外科など外科系部門の医療スタッフと連携して診療を行っています。現在の医療はチーム医療が前提となっています。主治医、受け持ち看護師、血液グループスタッフに加え、小児看護専門看護師、看護師、薬剤師、リハビリテーション科医、作業療法士、理学療法士、児童精神科医、臨床心理士、放射線科医、緩和医療専門医などなど多職種がチームとして患者さん一人一人にきめ細かい医療を提供しています。患者さんの病状や気持ち、ご家族の考え方などになるべく沿う治療方針を選択するべく常に努力をしております。「大きな小児病院ではできない医療」を提供いたします。
2015年の診療実績
新規診断患者数造血器腫瘍 | 急性リンパ性白血病 | 4 |
急性骨髄性白血病 | 2 | |
悪性リンパ腫 | 2 | |
その他造血器腫瘍 | 4 | |
脳腫瘍 | 6 | |
固形腫瘍 | ユーイング肉腫 | 2 |
横紋筋肉腫 | 2 | |
胚細胞腫瘍 | 1 | |
その他血液疾患 | 5 | |
合計 | 28 |
非血縁同種骨髄移植 | 3 | |
血縁同種骨髄移植 | 5 | |
非血縁同種臍帯血移植 | 2 | |
自家末梢血幹細胞移植 | 2 | |
合計 | 12 |
臨床研究
小児血液疾患、小児悪性腫瘍患者の予後は近年ずいぶん改善されましたが、安全性や効果という点で、現在行なわれている治療法は決して完成されたものではありません。より良い治療法の開発を目指して、私たちは東京小児がん研究グループ(TCCSG)、日本小児白血病リンパ腫研究グループ(JPLSG)の参加施設として小児悪性腫瘍の臨床研究に取り組んでいます。
造血細胞移植
私たちのグループは従来から造血細胞移植に積極的に取り組んできました。血縁骨髄移植、血縁末梢血細胞移植から、骨髄バンクや臍帯血バンクを通した非血縁造血細胞移植も経験を重ね、開院以来250名を超える患者さんに造血細胞移植を行ってきました。また、HLA一致ドナーが得られない難治性白血病・固形腫瘍に対するHLA半合致血縁ドナーからの造血幹細胞移植は、当院倫理委員会の承認を得て、臨床試験として行なっています。現在までに15名を超える患者さんにHLA半合致移植を行い、近年は安全に行える治療法として確立されました。
院内学級
入院期間が長期におよぶ場合、患児の成長や発達に対する配慮が必要です。病棟には保育士が常勤しており、院内学級も併設されています。院内学級では小学部と中学部がそれぞれ教室を持っており、専任の教員(5-6名)による授業が行われています。体調が良くない時にはベッドサイドで授業を受けることもできます。病棟では毎月1回(夏休みは毎週)「豆まき」「七夕まつり」などの季節に合った行事が行われています。
長期フォローアップ
もともとの病気や治療による影響で起こりうる晩期障害や心理社会的問題を明らかにし、個々の患者さんに対し最善策を還元することを目的として、もとの病気が治癒した後も外来での継続的なフォローアップを行っております。成人となった後も継続してフォローアップをしておりますので、長い人生の伴走者として共に歩めたらと考えております。成長ホルモンや甲状腺ホルモンなどの内分泌学的問題については、横浜市市民総合医療センターの小児内分泌専門医と連携して患者さんの診療にあたっています。
基礎研究
化学療法とそれに伴う支持療法の薬物動態学と薬力学理論に基づく効果、副作用の評価
薬剤トランスポーターや代謝酵素の遺伝子多型に基づいた安全で効率的な化学療法の確立
造血細胞移植後の免疫能の解析
マウス移植モデルを用いた移植免疫の解析
家族の会
血液グループで治療を受けた卒業生の保護者の方たちが中心に親子の会「さんふらわ」や遺族の会「ラブふぁみり~」が活動されており、私たちの医療をサポートしていただいております。医療者だけでなく様々な方にサポート頂き、小児血液疾患の「トータルケア」の概念に即した医療の提供を目指しています。