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感染症グループ

グループについて

感染症は、全ての患者の全ての臓器に発生する最も普遍的な疾患です。どの専門領域の医師も感染症に遭遇することは避けて通れません。感染症内科の中でも小児感染症は特に専門的な知識と経験が求められる特殊な領域です。

小児感染症の大部分を占める通常感冒、市中肺炎、胃腸炎などの一般感染症は、general pediatricianで対応が可能です。しかし、滅多に遭遇しない希少感染症、初期治療で原因微生物をカバーしなければ致死的状態に至る可能性の高い重症感染症や日本ではこれまで発生することがなく診療経験が浅い輸入感染症や新興・再興感染症になると、その適切なmanagementのためには高い専門性が要求されます。

私たち感染症グループが小児感染症の専門家集団として、連携病院を始めとして地域で診療をされている横浜市大小児科の教室員の感染症診療のサポートができればと考え、平成28年12月に設立しました。

活動の四本柱

感染症グループの活動の四本柱は感染症診療、感染制御、研究、教育です。

1)感染症診療
診療対象となる疾患は下記に示すように全ての感染症です。比較的頻度の高い血管カテーテル感染症や人工呼吸器肺炎などの医療関連感染症を始めとして、感染性心内膜炎、骨髄炎、結核などの希少感染症があります。また、成人の梅毒が近年増加しており、先天梅毒の増加も懸念されています。抗菌薬の不適切な使用や感染対策の破綻により、耐性菌患者は増加の一途を辿っています。高度耐性菌治療は、有効な抗菌薬が限定されるため、抗菌薬の選択には注意が必要です。また、海外渡航者の増加とともに、成人に帯同する小児も稀ではなくなり、渡航前の適切な予防接種および帰国後の発熱に対する診療が要求されます。

<診療対象となる感染症疾患>

2)感染制御
感染症が成立する絶対条件として、病原体と宿主、そして感染経路があります。この中で遮断することが最も安価で、確実であるものが感染経路です。従って感染症診療と同程度に感染制御は重要であると考えます。下表の通り、個人防護具(PPE)の適切な選択と装着、アウトブレイク対応を中心として、そこから派生した公衆衛生的業務も含めて、幅広い知識が要求されます。

<感染症を発生・拡大させないための感染制御>

3)研究
感染症グループにおける研究は現在、臨床研究が中心になります。日常診療で思いつくClinical Questionに答えを出せるように、様々な角度から臨床研究を行います。また単症例であっても教育的価値の高いものに関しては積極的に症例報告も行います。
関連する学会は、日本小児感染症学会を始めとして、日本感染症学会、日本化学療法学会、日本環境感染学会、日本臨床微生物学会、日本ウイルス学会、日本結核病学会など多くの学会と関連します。
取得できる資格は、現在小児感染症学会が具体的に進めている小児感染症認定医・専門医があります。その他、感染症専門医、抗菌化学療法認定医、Infection Control Doctor(ICD)があります。興味があれば、国際渡航医学認定医(Certificate in Travel Health)も海外での試験を受験する必要がありますが、取得可能です。

4)教育
横浜市大小児科教室員を対象としたメーリングリストを用いた感染症コンサルテーションを行っています。教室員であれば誰でも登録可能で、コンサルト内容は感染症診療、感染制御など感染症に関わることは何でも構いません。また、オンラインストレージサービスを用いて、小児感染症に関連する資料(各種感染症への統一マネージメント、ガイドライン、抗菌薬スペクトラム表、小児抗菌薬推奨投与量、抄読会資料など)を共有します。
連携病院で、治療に難渋している症例、興味深い症例があれば、訪問して症例検討を行います。希望があればテーマに応じた講義も行います。
小児感染症学会で現在設立を進めている小児感染症認定医・専門医制度に対応するため、横浜市立大学小児感染症研修プログラムを構築しました。

感染症グループの責務・目標

活動の四本柱を軸にして、感染症グループの責務・目標として下記を掲げます。

  • 連携病院も含めた横浜市立大学小児科の感染症診療を、理論と根拠に基づいた、抗菌薬適正使用(Antimicrobial stewardship program)を遵守したものにする。
  • 教室員からのコンサルテーションを受けることで、小児感染症の専門知識、経験を共有し、最適な診療ができるようにサポートする。
  • 診療から得られるClinical Questionを大切にし、臨床研究を計画・実行し、学会発表・論文執筆を行うことで、日本の小児感染症の発展に貢献する。
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