リウマチ・免疫グループ
私たちの担当する領域は小児リウマチ性疾患(膠原病、関節炎)、周期性発熱症候群を含む自己炎症性疾患、川崎病、結核を主とした特殊感染症、免疫不全症など多岐にわたりますが、「炎症、免疫が関係する疾患」や「手足やその他の部位に痛みを生じる疾患」が主体です。
当科では、
1. 関節、筋肉、腱等の痛みや腫れがある
2. 原因不明の微熱や発熱が持続・繰り返す
3. 原因不明の発疹や口内炎の持続・繰り返す
などの症状がある場合はご相談ください。
また、小児リウマチ性疾患の多くは慢性疾患であるため、患児の健全な成長と自立を支えられるよう、小児期から成人期まで長期的視野に立った医療を提供できるよう努めています。
1. 小児リウマチ性疾患、小児膠原病、自己炎症性疾患
私たちが診療を担当している患者さんで最も多いのが小児リウマチ性疾患です。先代教授である横田俊平先生を中心に、先進的治療の実践を継続することで、横浜・神奈川のみならず全国の医療機関から患者さんを御紹介いただいております。小児のリウマチ性疾患の診療患者数は全国随一です(表1、図1)現在は後任の伊藤秀一教授(日本リウマチ学会指導医・専門医)を中心としたチームで小児リウマチ性疾患の診療を行っています。小児科専門医でかつリウマチ専門医の資格を持っていて大学病院や小児病院などに勤務している医師は、全国でも70名程度であり、極めて専門家の少ない分野です。しかし、当科では伊藤を筆頭に常時3~5名の小児リウマチ専門医が外来・病棟診療に当たっています。免疫学の進歩に伴って免疫・炎症が原因となるリウマチ性疾患に対する診断・治療は目覚ましい進歩を見せており、これらを活用して小児リウマチ性疾患の患児、特にまれな病態、重症の病態の児に適切な医療を提供するのが私たちの責務です。 主な対象疾患は若年性特発性関節炎(JIA)、全身性エリテマトーデス(SLE)、若年性皮膚筋炎・多発性筋炎(JDM,JPM)、混合性結語組織病(MCTD)、シェーグレン症候群、高安動脈炎(大動脈炎)、全身性強皮症、ベーチェット病などの疾患への診療経験が豊富です。2014年は述べ2907名の患者さんが当グループのリウマチ外来を受診されました。また、生物学的製剤を用いた治療は外来でも対応しており、外来化学療法外来(アクテムラを始めとしたリウマチ薬の定期点滴投与)には毎日10名弱の患者さんが受診しています。
* 小児リウマチ疾患について
小児リウマチ・膠原病の代表的疾患である以下の疾患について説明しています。疾患情報は順次追加予定です。
1) 若年性特発性関節炎(JIA)
2) 全身性エリテマトーデス(SLE)
3) 若年性皮膚筋炎(JDM)
4) 高安動脈炎
5) 自己炎症性症候群
6) 線維筋痛症
当グループは、多くの臨床研究や治験も積極的に推進しています。小児リウマチ性疾患のうち最も多い若年性特発性関節炎(JIA)に関しては、新規薬剤の国内臨床試験に積極的に関わっており、特に生物学的製剤では現在国内で認可を得ている3剤、トシリズマブ(アクテムラ®)・エタネルセプト(エンブレル®)・アダリムマブ(ヒュミラ®)全ての臨床試験に参加しております。また、2015年1月現在もJIAを対象とする新規薬剤の臨床試験を実施しております。また、高安動脈炎、自己炎症症候群に対する臨床試験にも参加しており、今後募集予定です。当科で実施中の臨床試験に関する詳細は当院臨床試験支援管理室までお問い合わせください。
当教室の協力病院のみならず県下医療機関、あるいは他県・地域からも小児リウマチ性疾患症例やその疑い症例の診察依頼を承っています。また、入院中であるなど当院への外来受診が困難な場合には、必要に応じて依頼元医療機関と連携した訪問診療も行っています。お気軽にご相談ください。
2. 川崎病の診療について
川崎病はこども200人のうち1人程度が生涯のうちに発症する比較的頻度の高い全身性炎症性疾患で、乳幼児に好発します。川崎病では後遺症である心臓の冠動脈瘤を防ぐことが重要です。当グループでは大量ガンマグロブリン療法無効例に対する血漿交換療法を国内外の他の医療機関に先駆けて実施し、良好な治療効果が得られることを提示してきました。このため、現在では血漿交換療法を実施する国内医療機関は徐々に増えてきています。また症例に応じて、サイトカイン阻害薬であるインフリキシマブによる難治例の治療も先進的に取り組んできました。この取り組みはインフリキシマブの国内臨床試験実施(2011-2014)につながりました。川崎病は横浜市立大学小児科の地域連携病院では、毎年100名以上が診断され治療を受けることになりますが、川崎病の診断~初期治療~難治例の治療を、地域基幹病院と横浜市立大学附属2病院で連携して行っています。
3. 小児結核の診療について
小児結核に関する専門医療のニーズは多岐にわたります。まず第一に、結核を発症した患児の治療です。結核発症者は、感染性がなくなるまで結核病棟に入院し治療を受けることが法律で規定されています。成人を対象とする結核病棟を持つ病院は県内各地に点在していますが、小児対応が可能な結核病棟は県下では当院のみとなっています。このため、県内で発生した感染性結核の患者さんについて、地域の保健所・保健センターと連携して入院加療の対応を行っています。 また、2004年からBCG接種前のツベルクリン検査が廃止されたことにより、BCG接種部位の早期変化、いわゆるコッホ現象がみられる児が増加しています。コッホ現象がみられた赤ちゃんはBCG接種前に結核菌の感染を起こしている可能性が疑われるため、診察・検査などによる結核感染の判定と慎重な経過観察が必要となります。コッホ現象症例の精密検査も保健所・保健センターや地域医療機関と連携して対応しています。また、BCG骨炎・リンパ節炎といったBCG接種の合併症への対応も行っております。
免疫力の未熟な乳児は結核の重症化が多く、また速やかな経過で進展することが知られています。私たちは従来用いられてきたレントゲン・CT・ツベルクリン検査・細菌学的検査等に加え、結核診療の新たなツールであるIGRA(免疫反応を利用した血液検査法)を応用することによって、結核の発症・重症化・周囲への感染拡大を防ぐ診療を目標に診療を行っています。
小児結核を専門的に扱う医療機関は全国的にも少なく、結核患者数の減少に伴って小児結核の診療経験を有する医師も少ないのが現状です。横浜・神奈川のみならず全国のこどもが適切な結核の診療を受けられるようになるための一助として、当グループでは最新の知見に基づいた「小児結核診療マニュアル」を作成し医療機関に提供しております。