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留学便り

野澤先生のトロント便り

2019.03.03

2018年4月からカナダ・オンタリオ州のトロント小児病院リウマチ部門で、リサーチフェローとして、研究留学しています。トロントは、-20℃まで下がる厳しい冬を迎えています。風が強い都市ですので、体感温度は、-35℃前後となるため、より寒く感じられます。

さて、トロント小児病院は、非常に国際色豊かな病院・研究施設です。カナダ国内外から、多くの臨床医・研究者が自然と集まってきます。クリニカルフェローは、病院から給料が支払われるのですが、私のポジションである研究職のリサーチフェローは、労働条件が厳しく審査されます。現在、留学助成金 (フェローシップ) もしくは、研究室からの給料を合わせ、年間4万カナダドルの最低賃金を確保していることが前提でした。無給労働禁止という、労働者保護という意味では非常にありがたい基準ではありますが、私にとっては留学のための大きな関門でした。

私が所属するリウマチ部門は、北米・欧州における小児リウマチ・膠原病の臨床・基礎研究を行う中心的な施設として知られています。リウマチ部門には、疾患・分野ごとに担当が分かれた教室が4つあり、それぞれの教授がトロント大学の教授も併任され、診療・研究・教育に大きく力を注いでいます。その中で、私の指導責任者となってくださったのが、Prof. Brian Feldmanです。Prof. Feldmanの専門分野は、小児リウマチ一般、特に若年性皮膚筋炎 (JDM)、若年性特発性関節炎です。実際、2008年にLancetに掲載されたProf. FeldmanのJDMのレビューは世界的に有名で、10年以上経過した今日でも多くの論文に引用されています。その他にも、Prof. Feldmanは疫学・統計学を専門とされており、とくにベイズ統計学に基づいた臨床研究や臨床試験に力を注がれ、小児リウマチ関連の欧米のガイドライン作成の他、多くの業績を残されています。

さて、1週間の生活の流れですが、火曜日午前は、フェロー向けの講義が行われます。火曜日午後には、Prof. Feldmanのリウマチ一般外来もしくはJDM外来を見学し、日本での診療・治療との違い等をディスカッションさせていただいています。金曜の朝には、JDMに限定した抄読会、午後は、現在、それぞれ担当している研究に関するプレゼンテーションが行われます。その他、週1回、Prof. Feldmanと1対1のミーティングが30分間程度あります。最初の頃は、英語の問題で、こちらの意図することがうまく伝わらず、“What do you mean?”を連呼されてばかりでしたが、最近はほとんど無くなったように思います。Prof. Feldmanは、meetingの時以外でも、廊下ですれ違ったときに、「今週末の予定は何かあるのか」など家族の生活にまで気遣ってくださる温かい人柄の方です。これらの基本業務以外は、21階建てのリサーチセンターで、データ収集・解析を行っています。また、土日は基本、休みですが、日本から頂く仕事や、こちらでの研究のデータ整理などに時間を当てることも多いです。

トロント小児病院には、臨床及び研究のために、日本人の先生方が多く留学されていますが、リウマチ部門には日本人はいませんので、全て英語でコミュケーションをとる必要があります。他の留学先でも同様かと思いますが、海外留学には、ある程度語学力を高めるべきと身を染みています。当然でしょうか…。

今回の留学に際し、伊藤秀一先生を始め、横浜市大小児科内外の多くの先生方に大変お世話になりました。この場をお借りいたしまして、御礼を申し上げます。今回の留学で、一つでも多くのことを吸収できるよう、日々精進して参りたいと思います。

The Hospital for Sick Childrenのリサーチセンター (2019年2月撮影)

The Hospital for Sick Childrenのリサーチセンター (2019年2月撮影)

The Hospital for Sick Children (病院) (2019年3月撮影)

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