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留学便り

本井先生のデトロイト便り

2019.05.15

臨床勤務に復帰して1か月が経過しましたが,アメリカでの研究生活が随分昔の出来事のように感じます.あっという間に過ぎた2年半でしたが,自分の人間性・価値観・医師としての働き方に大きな影響を与える貴重な経験をすることが出来ました.

帰国後,友人や医局員に「医師にとって海外への研究留学は必要ですか?」と質問されることが度々あります.個人的には海外への研究留学は必須ではないと考えますが,メリットは幾つかあります.1つ目は,各領域のトップランナーに師事できること.2つ目は,国内では出会うことのなかった仲間と日常的にディスカッションできること.3つ目は,環境変化です.全く新しい環境に身を置きながら,第一線で情報発信をしている人の思考に触れ,同じ志を持つ同僚と共有する時間は臨床では体験できなかったと思います.私が海外への研究留学は必須ではないと考える理由は,日本国内にも世界水準の研究室が存在するからです.自分が興味ある分野の研究に関わることが出来るのであれば,必ずしも海外留学する必要はないです.研究に携わる意義は,「未知の答えの仮説をたてる→入念に研究計画を練る→結果を解釈して論文を構築する」という過程を繰り返すことで,臨床診療でも役立つ問題解決能力をトレーニングする機会を得ることです.臨床研究でも修練はできますが,多忙な日常診療の中で研究のみに没入する時間を作ることは非常に困難と考えます.小児科医として臨床に進まれた若い方々が,このさき研究に関わる機会に遭遇した際には,思い切って飛び込んでみることを強くお勧めします.これから続く長い医師人生の中で,数年だけでも研究の世界に身を投じ,異なる環境で生活をすることは,決して無駄な時間とはならないはずです.

最後に,研究経験の乏しい自分を受け入れてくださり,てんかん研究・論文作成,ミシガンでの魚釣りに至るまで懇切丁寧に御指導してくださったウェイン州立大学・ミシガン小児病院の浅野英司教授に,深甚なる謝意を表します.また,貴重な海外留学の機会を与えてくださった伊藤秀一教授をはじめとする横浜市立大学小児科医局員の皆様に深謝致します.

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2019.01.06

Travel

今回は、旅行記パート 2を書きたいと思います。海外留学の1番の目的は、もちろん『研究』ですが、もうひとつのテーマは『旅』と考えていました。日本での多忙な臨床業務中よりも時間が作り易く、場所によっては日本から渡航するより時間・費用ともに大幅に削減できる利点があります。

まずは、アメリカ国内のアリゾナ・ニューメキシコです。前半は、グランドサークルと呼ばれるアリゾナ州とユタ州にまたがるレイクパウエルを中心とした約230㎞の円に含まれるエリアを巡りました。隆起した地層、川や風により削られた地形の間をトレッキングすることで、地球の成り立ちと荒々しさを肌で感じることができる世界でも貴重な場所です。後半のニューメキシコでは、ギャラップとサンタフェに滞在しました。サンタフェと聞くとある女優さんを想起させる方もいるかもしれませんが、とても素晴らしい街で、古く独特な形状の建物が多く残り、国内では隠れたリゾート地として人気があります。デトロイトとは明らかに異なる暑さや乾いた空気と砂埃でフィルターをかけたような色彩の間を延々と車で走るのは、実に心地が良かったです。

つづいて、アイスランドに行ってきました。ビョークやシガー・ロスの影響か、映画Lifeを観たからなのか分かりませんが、ここ数年ずっと気になっていた国でした。アイスランドは、北大西洋に位置し、国土は北海道と四国を合わせたくらいの小さな島国で、人口34万人のうち75%は首都であるレイキャヴィクで暮らしています。島を一周するリングロードにのって1340㎞を走るロードトリップでしたが、空港を離れるとすぐにこれまで見たことのない自然に出会え、エリアによって全く異なる景観が飛び込んできます。岩肌を覆う緑苔や水量豊富な滝、月面や火星を想像させるような溶岩と氷河など飽きることはありません。また、途中宿泊したSteigという小さな町の農場を改築したゲストハウスで食べた鯵の燻製と自家製チーズの美味しさは生涯残る記憶となりました。旅の最終日、ブルーラグーンという世界最大の露天風呂に入りながら、いつか再訪する機会があれば、ハイランドと呼ばれるアイスランド内陸地をキャンプしながらトレッキングしようと妄想しました。また、近年急増している観光客のためホテルが乱立したり、廃棄されるゴミなどにより大自然が損なわれてしまわなければ良いなと考えました。

Grand canyon

Monument valley

Gallup

Arizona

Santa Fe

Seljalandsfoss

Jokulsarlon

Hofn

Hverir

Reykjavik

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2018.03.30

Americans

早いものでアメリカに来てから1年半が経過しました。今回は、自分が感じるアメリカ人の特性について書きたいと思います。アメリカ合衆国は建国242年であり、比較的新しい国と言えます(日本は2678年)。歴史的には若い国ですが、産業・経済・医療・スポーツの各分野において世界を牽引している力の源は何でしょうか?最も大きく影響しているのは、アメリカの教育制度だと思います。アメリカは移民で出来上がった国であり、他国から沢山の人を積極的に受け入れてきた歴史があります。その結果、この国で自分が求める職を得るためには、厳しい競争を勝ち抜かなければなりません。よって、アメリカの学生たちは、競争社会を生きていくための術を幼少期より訓練されます。授業内容は多くの日本人が受けているものとは異なり、既に解答がある問題(名称・年号・数式など)を解くことが中心でなく、実際の社会に存在する様々な問題に対してグループディスカッションを繰り返し、学生たち自身で答えを模索していく授業が重視されています。このやり方は自分が通う語学学校でも同様であり、まずディスカッションをして、その後グループや個人の意見を発表する機会が多いです。幼少期から反復されるこれらの授業の成果で、アメリカの学生や医師は、問題解決をするための思考過程が成熟しており、プレゼンテーション能力がとても高いように感じます。

また、アメリカ人は最初に選んだ大学や仕事を最終キャリアとは考えません。新たな分野に興味を持ったり、異なる職に就くために必要な資格があれば、その時点で大学や大学院に行くことも珍しくありません。良い条件の職場への転職も当たり前であり、多くの企業が中途採用に積極的です。なぜ前の仕事を辞めたかよりも、これまで習得した知識や技能によって、どれくらい新しい仕事に貢献できるかが重要となってきます。語学学校のNancy先生は、「人生はいつでも再挑戦ができる。年齢や性別は関係ない。」という言葉を繰り返します。日本であれば定年退職を迎えている年齢である方ですが、何歳になっても社会に貢献したいという先生の言葉や考え方は、いつもエネルギーに満ちております。

しかし、アメリカの教育制度が全て優れているとは思いません。競争社会の結果として生じる経済格差は日本よりも顕著で、大きな社会問題となっています。大学の学費は公立校であっても非常に高額である上、返済不要の奨学金を得ることは容易でないため、全員が大学に進学できるわけではありません。よって、貧困層の人々が、その環境から抜け出せないという負のスパイラルが形成されます。どの国の教育が最も優れているかは一概に言えませんが、アメリカの学生や医師と接することで自分との力の差を痛感します。また、アメリカで暮らすことで、自分と異なる価値観を肌で感じることができる良い機会となっています。

ワシントン D.C.
アメリカてんかん学会

デトロイト マラソン

廃工場

旧友を訪ねてミネソタ州へ

語学学校

Patti Smith
御年70歳 まだまだ元気です

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2017.11.24

Travel

今回は,冬期・夏季休暇に出かけた旅について書きたいと思います。学生時代に読んだ椎名誠や松浦弥太郎の本に影響され,様々な国に行きました。新しい土地を訪れ,そこに住む人や文化に触れることは,自分にとって刺激的なことであり,人生に活力を与えてくれます。この頃から,いつかは日本以外でも生活してみたいと考えるようになり,海外留学を志した動機の一因となったように思います。

まずは,2月にカナダのイエローナイフを訪れました。ここはアラスカや北欧と並び,オーロラ観測ができる世界有数の街です。現地のガイドさんによると,オーロラはアジア人(特に日本人)には人気ですが,欧米からの旅行者は少ないようです。また,オーロラ帯の直下にあるイエローナイフでは,数日間滞在すれば高確率でオーロラを観測できるとのことです。現地ツアーに参加して,21時から3時までオーロラの出現を待ちますが,夜間の気温はマイナス20℃を下回るので,防寒具を着ていてもかなり寒いです。その日の天候を考慮しながら場所を移動していると,突如オーロラが現れました。無音の中,雪の上に寝転びながら刻一刻と色や形を変えていくオーロラを眺めていると,何とも言えない不思議な感覚になりました。

つづいて,7月に南フランスを訪れました。この旅では,プロヴァンスとコート・ダジュールに点在する小さな村を巡りました。ニース空港でレンタカーを借り,まずはプロヴァンス地方を目指しました。普段は温厚で気さくなフランス人ですが,車の運転となると突然気性が荒くなり,街中ではクラクションが鳴り響きます。徐々に運転に慣れ,車を郊外に走らせると都市部とは打って変わり,糸杉やオリーブ畑が続く長閑な風景を見ることができます。ゴッホゆかりの地や蚤の市に寄りながら,鷲の巣村と呼ばれる岩山に作られた小さな村々を訪れました。中世から残る古城や教会の近くに広場があり,それを囲むように色彩豊かな窓や扉を持つ新旧の住宅が所狭しと建ち並んでいます。広場にあるカフェやレストランでは,地元の人や旅行者がワインやおしゃべりを楽しんでいます。多くの村は,敵からの侵入を防ぐため村全体が迷路の様な構造になっており,細い道や階段が張り巡らされています。路地好きの自分としては歩いているだけでワクワクする場所でした。

まだまだ訪問したことがない国や地域が沢山あるので,今後も研究生活の合間で時間を作り,様々なところを旅したいと思っています。

イエローナイフ

イエローナイフ

イエローナイフ

ユニテ・ダビタシオン ル・コルビュジエ作

ゴルド

エズ

カップ・マルタン

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2017.05.29

Epilepsy Surgery Conference

今回は、てんかん外科症例検討会についてお話したいと思います。

症例検討会は、毎週月曜日にミシガン小児病院神経科とウェイン州立大学神経科合同で行われます。小児神経科医・成人神経科医・脳神経外科医・放射線科医・神経病理医・臨床神経心理士・脳波技師・てんかん手術専属看護師など様々な職種が一堂に会します。各フェローが病歴・ビデオ脳波・脳神経画像を供覧したのち、診断・治療に関して積極的に意見交換をします。てんかんにおける治療決定で最も大切なのは、本当にてんかん発作なのか?真の発作ならばてんかん分類は何か?など正しい診断をすることです。多くのてんかんは薬物療法でコントロール可能ですが、難治症例では手術療法(焦点切除術・遮断術・迷走神経刺激療法)、食事療法(ケトン・修正アトキンス療法)が追加治療となります。また、ミシガン州では抗てんかん作用を有する医療用大麻の使用が認められているため、選択肢のひとつとなります。小児症例では、早い段階で外科治療を選択することで発達・予後が改善することがあります。よって、適切な手術時期を逸しないことが大切になってきます。発作型や検査から責任病巣を推測し、正確な診断をしたうえで、各患者の社会的背景も含めた最良の治療法を選択していく症例検討会は大変勉強になります。

オンラインによる救急外来の待ち時間確認画面

ミシガン小児病院 郊外の分院

デトロイト ダウンタウン

デトロイト ダウンタウン

デトロイト ダウンタウン

ダルビッシュ 有

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2017.01.14

はじめまして。横浜市大小児科、神経グループの本井宏尚と申します。2016年10月よりアメリカ合衆国、ミシガン州、デトロイトにあるChildren’s Hospital of Michigan (ミシガン小児病院)、神経診断部に留学しております。

皆様はデトロイトに対してどのようなイメージをお持ちでしょうか?GMやFordなど自動車産業の街、モータウンレコードやデトロイトテクノなど音楽の街、映画ロボコップや8 Mileのような危険な街を想像するかもしれません。私自身、渡米前は特に治安の事が心配でした。ところが、現在は都市再開発が進み治安はかなり改善してきている様です。また、自分の住居がある郊外 (ダウンタウンから車で30分のエリア) は大変安全で、横浜 (阪東橋付近) よりも治安が良いかもしれません。

ミシガン小児病院は222床を有し、年間入院者数1万人、救急受診者数9万人であり、ミシガン州の小児医療において重要な役割を果たしています。また、当院は北米のてんかん治療・研究を牽引している施設のひとつです。てんかんは、罹患率が約1%と頻度の高い疾患ですが、うち15%は難治てんかんとなります。薬剤抵抗性を有するてんかんに対して外科手術が奏功する症例があります。こちらでの研究テーマは、てんかん外科手術を必要とする患児に対して硬膜下電極を留置し、そこから得られる脳波データを用いた切除範囲の決定や時間周波数解析を用いたてんかん原性の同定です。臨床と直結する研究であり、大変興味深く取り組んでおります。

今回、海外留学という貴重な機会を与えてくださった伊藤秀一教授、鉾碕医局長、神経グループ・医局員の皆様には大変感謝しております。研究生活にどっぷり浸かりながら、異国での生活を楽しみたいと思います。

病院 エントランス

病院 中庭

自宅近所の公園

ミシガン湖畔

病院内

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