11月定例症例検討会

11月17日には定例症例検討会を開催しました。宇賀神医師に症例を提示いただきました。先週の抄読会で自殺予防のテーマを提起するきっかけとなった事例です。外傷体験を有するものの、家族・児童相談所・学校と身近な支援のリソースがあってもなかなかケアされる機会に恵まれずに、傷つきを抱える苦痛から自殺企図が繰り返される事例について、話し合いました。治療者の視点は自殺予防、トラウマ治療と目に見える成果に行きがちで、家族や当事者と評価や治療について話題にしていくことがしばしばあります。しかしながら、経過の中で一度も人に頼ることができず自らの苦痛や体験をじっくり人と共有することをしないまま、ひたすら笑顔で取り繕って場をしのいできた子どももいます。そういう場合は、これ以上傷つかない安全で安心な環境の提供や味方となる大人が側にいる安心感をいかに補うかを考えることが先決です。そんなことを考える余裕のない家族もいます。家族も傷ついて必死なのかもしれません。家族の傷つきにも目を向けて家族ケアからはじめる必要もあるでしょう。本日は臨床で出会う子どもの深刻なトラウマ体験の背後の文脈を汲み取ることの重要性を確認した時間となりました。