8月レジデント抄読会

8月4日はシニアレジデント抄読会を開催しました。市民総合医療センターの宇賀神北斗医師より「 Antipsychotic medication versus psychological intervention versus a combination of both in adolescents with first-episode psychosis (MAPS): a multicentre, three-arm, randomised controlled pilot and feasibility study 」、附属病院の武越百恵医師より「 Reports of parental maltreatment during childhood in a United States population-based surveyof homosexual, bisexual, and heterosexual adults 」の2つの論文について各自の臨床疑問と共に紹介をいただきました。1つ目の論文は初回精神病エピソードに対して抗精神病薬治療、認知行動療法と家族療法、抗精神病薬と認知行動療法と家族療法の3つによる現実的な治療実施可能性を検討した報告でした。児童青年期の精神病エピソードは統合失調症の確定診断がしにくいものが多く、当初予定した治療法から別の治療に切り替える例が多いという結果でした。目の前の精神病エピソードを呈する子どもがどのような診断なのかどのような治療が最適なのかは経過と相談しながら検討していくという現実的な治療を描きだす内容でした。実際宇賀神先生が診療している患者さんも診断が悩ましい事例で治療方針についても試行錯誤の連続のようです。2つ目の論文はやや古い論文ですが、1990年代にアメリカで実施されたゲイ、レズビアン、バイセクシャルの人々の幼少期の虐待体験についてインタビューした大規模疫学調査の報告です。今では性の多様性について多くの人が認識する時代になりましたが、20年以上前のアメリカでは自分の性的指向を報告する人が数パーセントと極端に少ないことが印象的でした。LGBTQの人たちと小児期逆境体験、精神不調の関係は数多く報告されていますが、我々児童精神科医も性別不合に悩む子どもたちに積極的相談にのっていくべきであることを確認しました。