医学会講演会



令和5年度 横浜市立大学医学会講演会


回数 演者 演題 期日
 1
(225)
奈良 信雄 先生
一般社団法人
日本医学教育評価機構  常任理事
国際基準に基づく医学教育評価-医学部教育の改善・質向上に与える影響-

 ⇒ 内容要旨
2023/4/19(水)
 2
(226)
Dr.Tony K.T. Lam
Departments of Medicine and Physiology
Temerty Faculty of Medicine, University of Toronto
Professo
 「The kidney regulates food intake and body weight」

 ⇒ 内容要旨
 2023/6/6(火)
 3
(227)
高橋 誠 先生
北海道大学大学院医学研究科
医学教育・国際交流推進センター
統括副センター長・教授
臨床実習の評価記録ツールCC-EPOC

 ⇒ 内容要旨
2023/9/28(木)
 4
(228)
橋詰 倫太郎 先生
University of Alabama at Birmingham Childlren’s of Alabama
Department of Pediatrics
Associate Professor
Altered Epigenetics in Pediatric Brain Tumor  -- Insight into Epigenetic Therapy

 ⇒ 内容要旨
 
2023/12/11(月)



第225回横浜市立大学医学会講演会
演題 国際基準に基づく医学教育評価-医学部教育の改善・質向上に与える影響-
演者 奈良 信雄 先生
一般社団法人
日本医学教育評価機構  常任理事
要旨  令和5 年4 月19日,福浦キャンパス,ヘボンホールにて,奈良信雄先生にご講演いただきました.
 日本医学教育評価機構常勤理事であられる奈良先生は,長きにわたり,日本の医学教育評価に尽力されてこられました.今回は,今秋に控える本学の二巡目の医学教育分野別評価受審を前に,「国際基準に基づく医学教育評価 医学部教育の改善・質向上に与える影響」というテーマでお話しいただきました.
 近年,医学部の国際的質保証が求められるようになりました.2023年より,ECFMG(Educational Commission for Foreign Medical Graduates)の資格申請において,申請者が卒業した医学部が国際基準に基づき認定されていることが要件となることがきっかけとなっています.それを踏まえて国内においても,医学部として社会の要請に応えられる医療人材を輩出できているか,定期的に評価を行うことが必要とされています.
 奈良先生は,医学部教育の質向上のため,評価,ひいては改善を,PDCAサイクルとして継続的に行うことが重要であると述べられました.その上で,二巡目の医学教育分野別評価において克服すべきものとして,一巡目の評価で明らかになった課題を紹介されました.多くの大学において,「診療参加型臨床実習」,「学生の臨床実習での形成的評価」,「学生の能動的学修」,「教育プログラムの定期的な評価」が不十分と評価され,改善が求められるとのことでした.
 講演の後半では,二巡目の医学教育分野別評価で求められる成果物や日程,審査のポイント等,具体的な評価方法ついてお話しいただきました.講演後は,活発な質疑応答がなされ,今秋の医学教育分野別評価受審に向けて,本学教員がその目的を強く意識することができたと感じました.
(文責 稲森 正彦)
主催 横浜市立大学医学会、医学教育学
「横浜医学」 74巻4号より転載



第226回横浜市立大学医学会講演会
演題 The kidney regulates food intake and body weight
演者 Dr.Tony K.T. Lam
Departments of Medicine and Physiology Temerty Faculty of Medicine, University of Toronto
Professo
要旨  トロント大学のTony K.T. Lam 先生をお招きして,演題名『腎臓が食事摂取と体重を調節する』にてご講演いただきました.
 メトホルミンは糖尿病の治療に用いられる薬物で,血糖値低下作用に加えて,げっ歯類およびヒトにおいて摂食量,体重を低下させることが知られていますが,その作用機序については良くわかっていませんでした.Lam先生らは,ラットを用いて,メトホルミンが腎臓でGDF15の産生を促進して,血中GDF15を増加させるメカニズムを明らかにしました.GDF15は後脳葉領域(AP)と孤束路核(NTS)に高発現しているGDNFファミリー受容体α様(GFRAL)を活性化して摂食量と体重を低下させることが示されました.講演の中で,GDF15の腎臓特異的ノックダウン,GFRALのAP特異的ノックダウンによって,メトホルミンの食事摂取抑制・体重減少作用が消失することが強調されました.すなわち,腎臓がメトホルミンの標的臓器であり,腎臓のGDF15依存性AP軸を通してエネルギー恒常性を制御していることが明らかにされました.
 Lam先生らの研究は,MetforminやGDF15による体重調節メカニズムを理解する上で重要であり,将来的に肥満や糖尿病などの代謝性疾患の治療法や予防法の開発に寄与する可能性があると思いました.
 講演後には多数の質問があり,Lam先生はそれら一つ一つに対してわかりやすく丁寧に回答されていました.当日は教職員,大学院生,医学生など30人を超える出席があり,大変盛況で有意義な会となりました.
(文責 涌井 広道)
主催 横浜市立大学医学会、循環器・腎臓・高血圧内科学、分子内分泌・糖尿病内科学
「横浜医学」 75巻1号より転載



第227回横浜市立大学医学会講演会
演題 臨床実習の評価記録ツールCC-EPOC
演者 高橋 誠 先生
北海道大学大学院医学研究科
医学教育・国際交流推進センター
統括副センター長・教授
要旨  令和5 年9 月28日,国立大学病院長会議EPOC運営委員会の委員として,臨床教育の評価記録ツールであるCCEPOCの開発に携わってこられた高橋誠先生によるオンラインセミナーを開催しました.
 医学部卒業前の臨床実習を診療参加型に移行し,卒前・卒後にわたり,シームレスな臨床教育を実施するには,評価もシームレスに行うことが望まれます.本学でも,そのような評価を目指し,2022年1 月よりCC-EPOCを導入していますが,よりいっそう活用していくため,本セミナーを企画しました.
 講演の前半では,CC-EPOCに先行して運用が始まった,卒後臨床研修評価ツールであるPG-EPOCについてお話しいただきました.2020年に卒後臨床研修の評価方法が見直され,従来の研修の実施状況を確認するチェックリスト形式から,医師としての「基本的価値観」,「資質・能力」,「基本的診療業務」のレベル到達度を問う形式への変更が求められました.PG-EPOCは,そうした要求に応えるべく開発され,CC-EPOCは,同様の評価を卒前学生にまで拡張した評価システムであることを説明いただきました.
 講演の後半では,実際にどのようにCC-EPOCを使用するかを説明いただき,PG-EPOCおよびCC-EPOCの利用を通じて,評価データが蓄積されていくことにより,医師の生涯学習につながるポートフォリオが作成されることは,学生にとって大きなメリットとなるとのお話をいただきました.
 講演後,CC-EPOCの利用に携わる教職員から活発な質問があり,高橋先生が所属される北海道大学での事例等,今後,本学でCC-EPOCを活用していく上で参考になるであろうお話をいただきました.
 卒前・卒後の評価が完全にシームレスなものになるには,評価シートの統合等,制度の整備が必要となりますが,システム上は環境が整ってきていると感じられました.
(文責 稲森 正彦)
主催 横浜市立大学医学会、医学教育学
「横浜医学」 75巻1号より転載



第228回横浜市立大学医学会講演会
演題 Altered Epigenetics in Pediatric Brain Tumor  -- Insight into Epigenetic Therapy
演者 橋詰 倫太郎 先生
University of Alabama at Birmingham Childlren’s of Alabama
Department of Pediatrics
Associate Professor
要旨  アラバマ大学バーミンガム校小児科でPIとして活躍されている橋詰倫太郎先生を招聘し,小児難治性脳悪性腫瘍であるびまん性脳幹グリオーマ(diffuse intrinsic pontine glioma, DIPG)と後頭蓋窩上衣腫研究( posterior fossa ependymoma, TypeA, PFA)に対する最前線の研究について講演いただいた.DIPGにおいては腫瘍発生部位の特性から本邦では生検術を回避する傾向にあるが,米国では発症時や剖検時の生検が積極的に行われており,その背景には難治性疾患に研究―診療面で立ち向かう姿勢の違いが感じられた.これらの希少性腫瘍に対する研究手法としてpatient-derived xenograft( PDX)の樹立を図りつつ,PDXを用いて薬剤スクリーニング,ヒストン異常を中心としたエピゲノム変化を標的とした薬剤の開発,放射線治療との併用効果,血液脳関門を通過しない薬剤に対し
て鼻腔経由での薬剤到達法の開発など多岐にわたる研究成果を呈示頂いた.また得られた研究成果をどのように臨床に反映させているか,実例をあげて解説いただいた.ご自身のこれまでの研究報告のみならず,留学の意義,質の高い論文発表に向けた課題,更には日本における研究課題や日本人研究者の特性など,米国で活動する立場から考察いただいた.その後の質疑応答では様々な立場の研究者から質の高い議論がかわされ,共同研究の話まで膨らむなど有意義な時間となった.学内の基礎研究者,小児科医や脳神経外科医を始めとする複数の臨床医など多くの方が参加され成功裏に修了した.
(文責 立石 健祐)
主催 横浜市立大学医学会、脳神経外科
「横浜医学」 75巻2号より転載

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