医学会講演会



平成30年度 横浜市立大学医学会講演会


回数 演者 演題 期日
 1
(197)
恒松 由記子 先生
順天堂大学医学部
小児科学講座 客員教授
「家族性腫瘍例に対する最新のゲノム診療~Lifraumeni症候群を中心に~」 
 ⇒ 内容要旨
2018/4/11(水)
2
(198) 
Alexandre Mendonça Munhoz.
University of São Paulo School of Medicine
Breast Surgery Division Professor
Hybrid Surgery and Fat:Insights and Perspectives in Modern Aesthetic and Reconstructive Breast Surgery
 ⇒ 内容要旨
2018/4/16(月)
 3
(199)
島田 悠一 先生
コロンビア大学病院循環器内科
准教授
肥大型心筋症センターリサーチディレクター
 「米国における卒前卒後臨床教育の実際」
 ⇒ 内容要旨
 2018/6/27(水)
4
(200) 
 田野島 玲大 先生
University of British Columbia
Reseach Associate
横浜市立大学小児科
 「ゲノム薬理と個別化治療」
 ⇒ 内容要旨
 2018/7/17(火)
 5(201)  Daniel P. Cahill M.D.,Ph.D
Associate Professor
Department of Neurosurgery,
Massachusetts General Hospital,
Harvard Medical School
  「Precision Medicine for Brain Tumor」
 ⇒ 内容要旨
 2018/11/30(金)
6(202)   桑島 巌 先生
NPO法人臨床研究適正評価教育機構
理事長
「変貌する日本の臨床研究」
 ⇒ 内容要旨
 2018/11/17(土)
7(203)   小田 兵馬 先生
金沢区三師会 会長
 「『衣食住』から『医食住』へ」
真の長寿リスペクトしあえる社会を実現するために横浜市立大学は・・・
⇒ 内容要旨
 2019/2/6(水)
 8(204)  瀬々 潤 先生
ヒューマノーム研究所代表取締役社長
産業技術総合研究所 人工知能研究センター 招聘研究員
 「マルチオミックスによる遺伝子発現制御の先端的医学共同研究拠点」セミナー
「医学分野の発展に向けた人工知能・機械学習入門
⇒ 内容要旨
 2019/3/29(金)



第197回横浜市立大学医学会講演会
演題 家族性腫瘍症例に対する最新のゲノム診療
   ~ LiFraumeni症候群を中心に~
演者 恒松 由記子 先生
順天堂大学医学部 小児科学講座 客員教授
要旨  第197回横浜市立大学医学会講演会は第10回メディカルゲノム勉強会を兼ねておりました(メディカルゲノム勉強会は,横浜市大附属病院メディカルゲノムセンター構想の活動の一環として附属病院遺伝子診療科,医学研究科遺伝学教室で企画しております).
 恒松先生は小児の希少がんの診療と疫学研究に長年従事され,とくに遺伝性腫瘍であるLi-Fraumeni 症候群に関しては国内外でオピニオンリーダーの先生です.これまでの病態解明の歴史や最新の知見を踏まえ,遺伝性腫瘍について総括的にご講演いただきました.近年のがんゲノム診療の進展に合わせて,今後のがん家系症例やがん易罹患性を示す症例に対してどのようにアプローチすることが求められるのか,大変考えさせられる内容でした.
(1) Li-Fraumeni症候群はTP53遺伝子の生殖細胞系列のヘテロ接合性変異が原因であり,発生する癌腫の圧倒的な多さが特徴である.
(2) 入念な家族歴の聴取,家系員からの徹底的な検体収集が,病態の解明に寄与した.これは,今日のがんゲノム診療に携わる医療者にも備えるべき重要な姿勢である.
(3) 今後は,がんクリニカルシーケンスなどに伴い予期せずTP53生殖細胞変異が検出される事も考えられるため,対象者に対して適切な遺伝カウンセリングや変異保有者へのサーベイランスが提案される必要がある.しかし,現段階でそのあり方についての統一見解は存在せず,早急に体制を整えるべきである.
 当日の聴講者は22名.活発な討議がなされ,大変有意義な会でした.
(文責 浜之上 はるか)
主催 横浜市立大学医学会、遺伝学教室、遺伝診療科部
「横浜医学」 69巻1・2号より転載
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第198回横浜市立大学医学会講演会
演題 Hybrid Surgery and Fat:Insights and Perspectives in Modern Aesthetic and Reconstructive Breast Surgery
演者 Alexandre Mendonça Munhoz.
University of São Paulo School of Medicine Breast Surgery Division Professor
要旨   Munhoz先生はブラジルの乳房再建分野で大変ご活躍の先生で,80を超える論文の執筆や20回以上の表彰をされています.今回脂肪注入とインプラントを同時に行うハイブリッド手術に関してご講演いただきました.
 ・ 米国では年間68,000件の脂肪注入が施行されており,年々増加してきている.
 ・ 特に乳房における脂肪注入はそのうちの72%を占めており,手術件数が多い.
 ・ 痩せている女性にインプラント豊胸術を行うとデコルテ部分が急峻で不自然な胸の形になるため,
  そのリカバーに脂肪注入が有効である.
 ・ 大きな乳房の女性の減量術には手術による減量に加えてデコルテ部分の脂肪注入を駆使するこ
  とでより自然な形を作ることができる.
 実際の手術の写真や図・イラストを用いながら講演してくださり,分かりやすい講演でした.
 当日は同門形成外科の先生方が多く聴講にいらっしゃり,大変有意義な会となりました.
(文責 青木 宏信)
主催 横浜市立大学医学会、附属市民総合医療センター形成外科
「横浜医学」 69巻4号より転載
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第199回横浜市立大学医学会講演会
演題 米国における卒前卒後臨床教育の実際~海外留学のすべて~
演者 島田 悠一 先生
コロンビア大学病院循環器内科 准教授
肥大型心筋症センター リサーチディレクター
要旨  平成30年6 月27日(水)福浦キャンパスヘボンホールにおきましてコロンビア大学循環器内科准教授島田悠一先生に「米国における卒前卒後研修の実際」という演題を元に米国と日本の医学教育の違い・レジデント教育の違いなどについてご講演いただきました.
 島田先生ご本人の米国での実際の経験をもとに非常に興味深いお話を細部までしていただきました.さらに会場にはボストンで島田先生とご一緒に働かれていた鈴木ありさ先生もいらっしゃり,米国での臨床をお二人の立場から貴重なご意見をうかがうことができました.会場に来場していた若手医師にとって今後の米国留学をはじめ海外留学へのあこがれがさらに助長されたのではないかと思います.
 第2 部におきまして米国・ニューヨークで基礎研究留学をしていた私と壇上での会場からの質疑応答を行いました.会場からの質問も非常に多く,熱心に我々から情報を聞いていたのが非常に印象的でありました.実際に留学してみないとわからないことが多々あるかと思いますが,少しでも彼らの留学への一歩に貢献できたかなと思います.
 講演終了後も島田先生や小生に対する個人的な質問,それには経済的な問題であったり,言葉の問題であったりより具体的な質問を受け,海外留学への熱意を身近に肌で感じることができました.
 今後も海外で活躍されている日本人医師・研究者,さらには海外で最前線の研究・臨床をしている研究者・医師と一層の交流が持てるような招請講演や海外交流を救急医学教室で積極的に行っていきたいと思います.
(文責 小川 史洋)
主催 横浜市立大学医学会、救急医学教室、医学教育センターグローバル推進部門・医学教育推進部門
「横浜医学」 69巻4号より転載
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第200回横浜市立大学医学会講演会
演題 ゲノム薬理と個別化治療~カナダのサーベイネットワークと臨床応用ランス
演者 田野島 玲大 先生
Canadian Pharmacogenomics Network for Drug Safety(CPNDS)
University of British Columbia Reseach Associate
横浜市立大学小児科
要旨  2018年7 月17日に第200回横浜市立大学医学会講演会を開催いたしました.この講演は若手医師に海外留学に興味を持ってもらうことを目的として,横浜市立大学小児科医局若手勉強会特別編を兼ねておりました.
 田野島先生は横浜市大小児科に所属し,小児血液腫瘍医として診療を行った後,ブリティッシュコロンビア大学でResearch associate として薬理遺伝学に関する研究にご活躍されています.
 今回の講演では以下の内容についてお話いただきました.
①薬物治療は現代医療の大きな柱の一つであり,疾病の治療に大きく貢献をして来た.その一方,薬剤による有害事象は先進国で大きな問題であり,可能な限り有害事象を減らしつつ薬物治療の効果を上げることが求められている.個人の遺伝的性質による個別化治療(ゲノム薬理)はその目標達成のための有用な方法の1 つであること.
②Canadian Pharmacogenomics Network for Drug Safety(CPNDS)は2005年にバンクーバーで立ち上がった,カナダのゲノム薬理のサーベイランスネットワークである.シスプラチンの聴毒性,アントラサイクリンの心毒性に関する新規遺伝子など,ゲノム薬理に関する数多くの研究成果を世に送りだして来たこと.CPNDSの成り立ち,これまでの活動と臨床応用,個別化医療について.
③バンクーバーでの生活,海外留学の魅力,心構えについて.
 講演には医局員だけでなく,海外留学に興味のある初期研修医,ゲノム遺伝学に興味ある大学院生,薬剤師の方も聴講にお見えになり,活発な討論があり大変有意義な会となりました.
(文責 竹内 正宣)
主催 横浜市立大学医学会、小児科学教室
「横浜医学」 69巻4号より転載
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第201回横浜市立大学医学会講演会
演題 Precision Medicine for Brain Tumor
演者 Daniel P. Cahill M.D.,Ph.D
ハーバード大学・マサチューセッツ総合病院脳神経外科
Associate Professor
要旨  近年の大規模遺伝子解析により良性,悪性脳腫瘍に関連する多くの遺伝子異常が明らかになっている.本講演では,それらの遺伝子異常に基づく個別的な治療法が米国の主導的医療機関においてどのように展開されているかマサチューセッツ総合病院(MGH)から来日されたCahill先生に講演いただいた.
 WHO脳腫瘍規約の改訂により脳腫瘍の診断は従来の病理診断から分子診断を加えた統合的診断に舵がきられた.その背景には大規模遺伝子解析を通じて,それぞれの脳腫瘍に対して共通した遺伝子異常の存在が明らかになったことが挙げられる.例えば神経膠腫ではIDH 1 変異,髄膜腫ではAKT,SMO遺伝子変異などがその代表である.現在,我が国ではがんゲノム診断プロジェクトが展開されているが,診断の先にある個別化医療(PrecisionMedicine)への応用は限定されているのが現状である.これに対して米国では2016年度オバマ大統領が一般教書演説で宣言したようにprecision medicineが加速的に進んでいる.脳腫瘍も例外ではなく神経膠芽腫のような悪性腫瘍のみならず,髄膜腫や神経鞘腫のような良性脳腫瘍もprecision medicineの対象となっている.本講演では全米有数の医療研究機関であるマサチューセッツ総合病院(MGH)脳神経外科よりDr. Cahill をお招きしてMGHにおける脳腫瘍に対するPrecision medicineの現状,前臨床研究から医療応用までの流れ,更には見えてきた課題について概説頂いた.遺伝子解析手法の進歩に伴いさらに遺伝子解析はより身近なものになると予想される.その中で個々の患者さんから得られた腫瘍組織から見出される遺伝子異常をいかに臨床に応用するかは本学においても近い将来重要な課題となることが予想される.本講演はその課題に対する一つの大きなヒントとなったと考えられ大変意義深い内容であった.
(文責 立石 健祐)
主催 横浜市立大学医学会、脳神経外科教室
「横浜医学」 70巻1号より転載
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第202回横浜市立大学医学会講演会
演題 変貌を遂げる,日本の臨床研究
演者 桑島 巌 先生
NPO法人臨床研究適正評価教育機構 理事長

東京都健康長寿医療センター顧問
要旨 本年度より,特定臨床研究法が施行された.特定臨床研究法とは,未承認・適応外薬品の臨床研究および製薬企業から資金提供をうけた医薬品の臨床研究について適用される.本法律は研究や学問の自由を束縛するものとして反対する研究者も少なくなかったが,わが国の臨床研究の信頼性の回復のために求められる法律として発効にいたったものである.
 そもそも本法律が発起された原因となった降圧薬バルサルタン(ディオバン)に関わる不正事件について,その経過と発生要因について解説したい.
 本事件は1990年代におけるARBの激しい販売競争の中で発生した.JIKEI HEART Study,Kyoto Heart StudyなどARBディオバンの心血管合併症予防効果を非ARB治療群と比較した₅ つのランダム化比較試験の企画,統計解析などにおいて支援企業の職員が深く関与しており,その結果も一般常識からあまりにもかけ離れていたことか
ら研究結果に疑義が抱かれたのである.本事件は真相究明のために厚労省による調査委員会が立ち上げられ,その結果ついには,立件,そして企業職員の逮捕,裁判にまで至るという前代未聞のできごととなった.本事件の原因は,まず研究費取得や実績といった科学とは関係のない不純な動機から研究企画が始まったことに由来するが,なにより研究責任者の臨床研究や統計に対する知識不足と軽視が大きく関わっている.本講演では,本事件をきっかけに変貌が求められる日本の臨床研究においける研究者の医学研究に対する姿勢と,研究論文の適正評価について述べる予定である.
(文責 石上 友章)
主催 横浜市立大学医学会、循環器・腎臓・高血圧内科学教室、日本血管血流学会
「横浜医学」 70巻1号より転載
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第203回横浜市立大学医学会講演会
演題 衣食住』から『医食住』へ
~ 真に長寿をリスペクトしあえる社会を実現するために横浜市立大学は…~
演者 小田 兵馬 先生
金沢区三師会 会長
小田薬局 社長
薬剤師
要旨  当講演会は医学教育センター 医学教育推進部門の教職員向けFD講演会「社会とのつながり」として企画され,横浜医学会との共催とさせていただきました.小田兵馬先生は老舗の薬局の薬剤師,経営者であるかたわら,全国でも珍しい医・歯・薬の三師合同事業の長として長らく活躍され,様々な社会活動に参加されています.また,横浜が誇るシンガー・ソング・ライター小田和正さんのお兄様としてもご高名です.
 かつて存在した『世間』は生活の場として重きを置かれていたが,『情報化』が進行し,『世間』そのものが多様に変化してきた.そんな時代の変化とともに大学医学部もその責務の変化に敏感にならなければならない.社会活動として期待されるのは,高齢者医療,福祉にとどまらず,将来の地域の担い手である子ども達にも及ばなければ意味がない.今の社会を作り上げた「高齢者」は自ら医療,福祉を享受するのみならず,生ける限り,後に続く住民に対して責任を持つ覚悟を持つべきである.『医食住』の時代だからこそ,住民としての「アイデア」を医療職に提供していくことが求められる.横浜市立大学医学部もこうした地域住民の「アイデア」に耳を傾け,地域の発展,地域住民との共生を目指した活動にも注力されることを望みたい.
 弟君の小田和正さんが学生時代を過ごした仙台では東北大学は街の誇りであり,仙台住民は街ぐるみで東北大学の学生を育てようとしていた.横浜市立大学もそうあって欲しいとエールをいただきました.例示された昭和から平成に至るまでの様々な社会事件,社会情勢は,まさに現代医の我々が解決していくべき問題のメタファーでした.大学としての存在価値がグローバルに向かうべきであることは当然としても,遠くを見すぎて足下がぐらつくことがないよう,グローバル時代のローカルに大学人としてどう関わるべきかを考えさせる意義あるご講演でした.
(文責 太田 光泰)
主催 横浜市立大学医学会、医学教育センター、医学教育推進部門
「横浜医学」 70巻2号より転載
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第204回横浜市立大学医学会講演会
演題 医学分野の発展に向けた人工知能・機械学習入門
演者 瀬々 潤 先生
ヒューマノーム研究所 代表取締役社長
産業技術総合研究所 人工知能研究センター 召喚研究員
要旨  ヒューマノーム研究所の瀬々 潤先生から,人工知能・機械学習の医学領域における応用について,以下の内容に関してご講演していただきました.
 人工知能や機械学習の分野は学問的な研究にとどまらず,広く社会の中で応用されるフェーズへと移行しつつあり,医学や医療の領域でも今後の発展が期待されていますが,その学術的および数理科学的背景については十分に理解されているとは言い難く,結論が得られるまでの経過はブラックボックスとなりがちです.そのような現状を踏まえ,本講演では瀬々先生から深層学習の基盤となるニューラルネットの基本原理から,最近の研究動向,ブレークスルーとなった研究など,専門分野外の聴講者にも解りやすく解説していただきました.
 また瀬々先生はヒューマノーム研究所において,スマートウォッチなどの電子デバイスを用いて体温や心拍数など人の様々な活動を表すデータを計測し,それらを疾患発症の予測へ応用する研究に取り組んでいることなどが紹介されました.近い将来,人工知能を用いたデータ解析技術が医学や医療の分野で広く応用されることになると実感できる内容でした.
 当日は計35名の聴講者に参加していただきましたが,内訳は教職員から学部学生にまで及び,この分野に対する関心の高さがうかがわれました.講演内容について瀬々先生と活発な議論がなされ,非常に有意義な会となりました. (文責 中林 潤)
主催 横浜市立大学医学会、循環器・腎臓・高血圧内科学教室、日本血管血流学会
「横浜医学」 70巻2号より転載
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