医学会講演会



平成28年度 横浜市立大学医学会講演会


回数 演者 演題 期日
 1
(186)
成瀬 恵治 先生
岡山大学大学院医歯薬総合研究科,
システム生理学教授
メカノメディスン:メカノバイオロジーを駆使した医学研究・医療応用への展開
 ⇒ 内容要旨
2016/5/19
 2
(187)
嶋 雄一 先生
川崎医科大学 
解剖学 准教授
ライディッヒ細胞の脱分化・分化転換による精巣間質の組織構築機構
 ⇒ 内容要旨
2016/8/24
 3
(188)
 浦野 勉 先生
独立行政法人 医薬品医療機器総合機構(PMDA) 
ワクチン等審査 部長
「医薬品の承認審査」~感染症予防ワクチンのリスク・ベネフィットバランス~
 ⇒ 内容要旨
2016/10/7
 4
(189)
 古川 洋一 先生
東京大学 医科学研究所 
臨床ゲノム腫瘍学分野 教授
がん化にかかわるゲノム変異
          ~研究から臨床へ~
 ⇒ 内容要旨
2016/11/21
5
(190) 
 江口 暁 先生
米国 テンプル大学
Department of Physiology and Cardiovascular Research Center 教授
在米日本人研究者の体験とアンジオテンシン情報伝達研究の成果:高血圧性臓器障害に対するミトコンドリア治療の可能性
 ⇒ 内容要旨
2017/2/9
6
(191) 
 Dr.Keiko Ozato
Head
Section on Molecular Genetics of Immunity,Program in Genomics of Differentiation
National Institute of Child Health and Human Development
NIH,USA
 IRF8 in diseases,mutations and microglia
 ⇒ 内容要旨
2017/2/20



第186回横浜市立大学医学会講演会
演題 メカノメディスン:メカノバイオロジーを駆使した医学研究・医療応用への展開
演者 成瀬 恵治 先生
岡山大学大学院医歯薬総合研究科, システム生理学教授
要旨  成瀬恵治先生は,機械的刺激と生体応答の分野で長年にわたりご活躍であり,メカノバイオロジーの学術領域を牽引されています.機械的刺激とは,骨格筋の運動,心臓の動き,体表面が受ける痛みや触覚,呼吸運動,関節にかかる圧力,などがあります.成瀬恵治先生は,機械的刺激を生体が感受する分子メカニズムから,不妊症治療や止血剤への治療応用までの幅広いご研究をされており,その多岐に渡る内容をご講演いただきました.
 細胞が伸展するときにどのようなことが起こるのかを調べるために,まずシリコンで培養皿を作り,コンピューター制御で精密な進展刺激を負荷できるような装置を作製されたこと,さらに,細胞の伸展刺激により細胞内カルシウムが増加することを明らかにした上で,その細胞応答を担う分子,Mid 1 ,SAKCA,TRPV 2 を同定されたことをご説明いただきました.心臓は常に収縮と拡張を繰り返し,進展刺激に晒されていますが,成瀬先生は心臓でTRPV 2 を欠損させると著明な心臓の拡大と心機能の低下をもたらすことを明らかにされました.単一細胞の進展装置も開発され,心筋細胞の機械的刺激と不整脈の関連があることもお示しいただきました. マイクロ流路を用いて細胞運動機能が高い細胞と低い細胞が分離できることを発見され,この技術を応用して運動能の高い精子を分離することで不妊治療を開始し,効果を上げていること,また,受精卵が卵管をゆっくりと通過するときのように傾斜をかけた培養装置で受精卵を刺激すると体外受精の成功率が上がることなど,既に臨床応用されている内容もご紹介いただきました.
 当日は多数の先生方が聴講されました.特に若手研究者からは,成瀬先生が大学₂ 年生より研究に携わり,大学院生の時に細胞伸展をするための装置を開発してベンチャーを立ち上げた,といったお話を伺って大変刺激を受けたという声もきかれ,有意義な会となりました.
(文責 横山 詩子)
主催 横浜市立大学医学会、循環制御医学教室
「横浜医学」 67巻2号より転載
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第187回横浜市立大学医学会講演会
演題 ライディッヒ細胞の脱分化・分化転換による精巣間質の組織構築機構
演者 嶋 雄一 先生
川崎医科大学 解剖学 准教授
要旨   川崎医科大学解剖学教室の嶋雄一先生より,Ad 4 BP遺伝子の転写調節機構という観点から,内分泌組織(副腎皮質や精巣ライディッヒ細胞)の分化メカニズムに関して,以下の内容に関して,ご講演して頂きました.
 ライディッヒ細胞が男性ホルモンを産生する細胞であることは広く知られているが,哺乳類において,胎仔期と生後(思春期以降)にそれぞれ出現するライディッヒ細胞(胎仔型ライディッヒ細胞と成獣型ライディッヒ細胞)の機能が異なることはあまり知られていない.これまで,両者は別個の細胞集団であると一般に考えられてきた.しかしながら,それぞれの細胞系譜を明確に示した実験結果は報告されておらず,両者の発生学的な関連は,長い間未解決の問題として残されていた.
 この疑問にたいして,核内受容体型の転写因子をコードするAd 4 BP/SF- 1 遺伝子の上流領域に存在する,胎仔型ライディッヒ細胞特異的な発現調節領域を用いて細胞運命追跡実験を行った.その結果,胎仔型ライディッヒ細胞の一部が出生前後に脱分化を起こしていた.また,脱分化した細胞は思春期に至ると再度分化し,成獣型ライディッヒ細胞としての機能を獲得することが明らかになった.さらに興味深いことに,脱分化した細胞の一部が,精巣間質の重要な構成細胞である精細管周囲筋様細胞や血管周皮細胞へと分化転換することが示唆された.
 この結果を踏まえ,ライディッヒ細胞の分化・脱分化を障害した種々の遺伝子改変マウスを作成・解析した.その結果,ライディッヒ細胞の分化・脱分化・分化転換が,胎仔期後期から思春期にかけて,男性ホルモンの産生に加えて精細管や血管といった精巣間質組織の構築に寄与し,ひいては全身のオス化や精子形成に不可欠な役割を果たしていることが示唆された.
 当日は,生命医科学研究科・生殖再生医学教室の小川毅彦教授をはじめ多数の先生方に出席して頂き,嶋先生のご講演内容について活発な議論が行われ,有意義な会となりました.
(文責 佐藤 由典)
主催 横浜市立大学医学会、組織学教室
「横浜医学」 67巻2号より転載
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第188回横浜市立大学医学会講演会
演題 「医薬品の承認審査」~感染症予防ワクチンのリスク・ベネフィットバランス~
演者 浦野 勉 先生
独立行政法人 医薬品医療機器総合機構(PMDA) ワクチン等審査 部長
要旨  浦野勉先生は独立行政法人 医薬品医療機器総合機構(PMDA)にて長らくワクチン等審査部の部長をされ,現在では薬事戦略相談業務調整役としてご活躍されています.
 今回の講演では,PMDAの役割,新薬開発から承認にいたるプロセス,また承認審査の具体的な仕組みなどを中心にご説明をいただきました.
 なかでもワクチン(生物由来製品)に関わる規制に関しては,過去のワクチンによる健康被害事件等の具体的事例を踏まえながら,通常なかなかお聞きすることの出来ない,詳細な内容を解説していただきました.
 また,生物テロ対策や,エボラ・デング熱等の海外で流行している感染症流入の可能性が話題となる中で,ワクチンの開発審査におけるリスク評価,およびワクチンのリスクとベネフィットのバランスについても詳しくご講義いただきました.
 今回の講演会では,実際に医薬品医療機器総合機構(PMDA)において該当業務にあたられている浦野先生から,直接現場でのお話をご紹介いただける貴重な機会となりました.
(文責 稲森 正彦)
主催 横浜市立大学医学会、社会予防医学教室、循環制御医学教室
「横浜医学」 67巻4号より転載
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第189回横浜市立大学医学会講演会
演題 がん化にかかわるゲノム変異          ~研究から臨床へ~
演者 古川 洋一 先生
東京大学 医科学研究所 臨床ゲノム腫瘍学分野 教授
要旨  平成28年11月21日(月)に横浜市立大学福浦キャンパス 講義棟2 階 D1 講義室にて,第189回横浜市立大学医学会講演会を行いました.この講演会は第7回メディカルゲノム勉強会を兼ねておりました.(メディカルゲノム勉強会は,横浜市大附属病院メディカルゲノムセンター構想の活動の一環として附属病院遺伝子診療部,医学研究科遺伝学教室で企画しております.)
 古川先生は日本のがんゲノム研究で大変ご活躍の先生です.今回はがん化にかかわるゲノム変異というトピックで,主に遺伝性腫瘍について,臨床の遺伝子診療がどのように行われ,その原因を探るゲノム研究にどのようにつながっていくのか,何がわかってきたか,またその知見をどう診療につなげていくか,についてご自身の経験例を元に非常にわかりやすいご講演をしていただきました.また人工知能(AI)を用いた遺伝子解析を研究されておられ,近未来型のビッグデータを用いたゲノム医療についてもご講義頂きました.ご講演の要旨をまとめますと,
( 1 ) 遺伝性腫瘍と遺伝子解析について:遺伝性乳がん卵巣がん症候群,家族性大腸線腫症,リンチ症候群などの臨床,遺伝学的要因について最近わかってきたこと
( 2 ) 分子標的薬と個別化医療:分子標的薬の原理,どのような分子標的薬が開発され,どう選択されているか
( 3 ) 臨床シーケンスとWatson Genomic Analytics を用いた標的予測:次世代シーケンサーは遺伝性腫瘍の原因となる病的変異を同定するための有用なツールであり,生殖細胞系列の変異のみならず,がん化にかかわるいろいろな体細胞変異も検出できる.AI は膨大なシーケンスデータの中から,原因となる変異を同定したり,個別化医療のための薬剤選択をしたりするのに非常に有用である.
 当日は天候の悪い中,学内外からいろいろな専門分野の先生方が聴講にいらっしゃって,大変有意義な会となりました.
(文責 宮武 聡子)
主催 横浜市立大学医学会、附属病院遺伝子診療部、大学院医学研究科遺伝学教室
「横浜医学」 67巻4号より転載
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第190回横浜市立大学医学会講演会
演題 在米日本人研究者の体験とアンジオテンシン情報伝達研究の成果:高血圧性臓器障害に対する
ミトコンドリア治療の可能性
演者 江口 暁 先生
米国 テンプル大学
Department of Physiology and Cardiovascular Research Center 教授
要旨   江口暁先生はRenin-Angiotensin 系の分野で業績を上げ,米国で長年にわたりご活躍されています.田村功一教授の座長により,前半では,米国における医学部の学生及び教員の実情について,後半ではアンジオテンシンII(AII)の細胞内シグナルに関してご講演して頂きました.
 米国の医学部の学生のコースにはMD,MD/PhD,PhDの3種類があり,一般的な医師を養成するMDコースの定員が約150人と多く,学費は日本の私立医大並みである.MD/PhD,PhDコースの定員は少数で,学費は無料である.米国が研究者の養成に力を入れていることがわかる.医学部の教員の種類 テニア,テニアトラック,非常勤があり,テニアの教授になるために少額の研究費を得て,徐々に高額のグラントを得る必要があること.グラントを得るとNIHから大学に特別の予算が割り振られるため,大学にとってはグラントを多数有する研究者をかかえることが,経営の安定につながる.
 AIIによる細胞内シグナル伝達には血管収縮につながる経路と細胞肥大,細胞増殖を誘導し,動脈硬化につながる経路の2種類が存在する.後者の経路はADAM17を介するシグナルが重要であり,ADAM17のモノクローナル抗体で阻害することによりAII による動脈硬化が抑制される.また,ADAM17はTNFαによる血管の炎症惹起作用にも関連しており,ADAM17を阻害することによりTNFによる血管の炎症も抑制される.AIIはミトコンドリア機能障害を引き起こすが,その機序はミトコンドリアのfission を増やすことが関与している.この作用を阻害すると,AII によるミトコントドリアの機能障害が抑制され,さらにAII による動脈硬化が抑制されることが示唆された.
 当日は多数の先生方が出席され,寺内 康夫教授に閉会の辞の述べていただき,大変有意義な会となりました.
(文責:山川 正)
主催 横浜市立大学医学会、内分泌・糖尿病内科学、循環器・腎臓内科学
「横浜医学」 68巻1・2号より転載
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第191回横浜市立大学医学会講演会
演題  IRF8 in diseases,mutations and microglia
演者  Dr.Keiko Ozato
Head
Section on Molecular Genetics of Immunity,Program in Genomics of Differentiation
National Institute of Child Health and Human Development NIH,USA
要旨   Keiko Ozato先生は,1981年から米国国立衛生研究所にてラボを主宰され,長く免疫学,分子生物学の第一人者としてご活躍されています.また,日米間の学術交流にも尽力されており,留学先として20名を超える日本人研究者を受け入れられています.2012年には,これまでのOzato 先生ご自身の研究や国際的な学術交流が評価され,瑞宝中綬章を授章されました.
 今回のご講演では,ご自身が発見された転写因子Interferon regulatory factor8( IRF8)を中心に,細菌感染に対する生体防御ならびに,自己免疫疾患における転写因子の役割についてご講義いただきました.なかでも,米国国立衛生研究所でIRF₈の新しい変異が発見されたこと,さらにこの変異がIRF8の標的遺伝子の活性化を妨げることにより,易感染性を招くことについてご紹介いただきました.また,リステリアなどの細胞内寄生細菌の排除を担うオートファジーにおいても,IRF8によるオートファジー関連遺伝子の発現調節が非常に重要であることを解説いただきました.
 Ozato 先生に非常にわかりやすく,かつ熱のこもった講演をしていただいた後には,免疫学教室田村教授から医学会記念牌が贈答されました.今回の講演では,本学の先生方に加え,Ozato 先生のラボに留学された他大学の先生方にも多数ご参加いただき,またとない貴重な機会となりました.
(文責 西山 晃)
主催 横浜市立大学医学会、免疫学
「横浜医学」 68巻1・2号より転載
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