医学会講演会
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平成21年度 横浜市立大学医学会講演会
回数 |
演者 |
演題 |
期日 |
1
(148) |
Prof. Ahmet Gul
イスタンブール大学 医学部
内科 リウマチ科 教授 |
Behcet's Disease: from Gene to the Patients
⇒ 内容要旨 |
2009/7/22 |
2
(149) |
石井 健 先生
大阪大学微生物研究所
分子原虫学分野
免疫学フロンティア研究センター 自然免疫学 准教授 |
自然免疫研究から新規ワクチンの開発戦略へ ⇒ 内容要旨 |
2009/10/14 |
3
(150) |
五十嵐 和彦 先生
東北大学大学院医学系研究科
生物化学分野 教授 |
転写因子Bach1による細胞老化とがん化の制御
⇒ 内容要旨 |
2010/1/12 |
第148回横浜市立大学医学会講演会
演題 |
Behcet's Disease: from Gene to the Patients |
演者 |
Prof. Ahmet Gul
イスタンブール大学 医学部 内科 リウマチ科 教授 |
要旨 |
7月24 日の厚生労働省ベーチェット病に関する調査研究(研究代表者: 石ヶ坪良明教授) の班会議の特別演者としてトルコより Ahmet Gul
教授をお招きし、多忙なスケジュールの中、講演をいただいた。ベーチェット病患者数の多いトルコでリウマチ医として診療にあたるGul教授は、その病態、病因に関する研究についても第一人者である。
ベーチェット病の病因には遺伝素因と感染病原体をはじめとする環境因子が関与しているが、講演ではその遺伝素因に関する最近の知見を明快に発表された。従来よりHLA-B51
は人種を越えた疾患感受性素因として知られているが、その役割は必ずしも明らかではない。 Gul教授は一つの仮説として、キラー阻害受容体(killer
inhibitory receptor; KIR) のうちKIR3DL1とHLA-B51 との相互作用について説明された。しかしながら、 HLA-B51
のみでは遺伝素因を説明することは不可能であることから、現在、トルコ、米国(NIH)、日本の共同で大規模なゲノムワイド研究が進められている。本講演では、未発表の貴重な研究成果のいったんについて紹介された。さらに、自己炎症症候群という新しい観点から病態を解析し、その代表疾患である家族性地中海熱に関わるMEFV
遺伝子がベーチェット病の病態にも関与している可能性を示めされた。このような基礎的知見の積み重ねが、将来的にはベーチェット病の診断マーカー、あるいは新しい治療法の開発に寄与するものと思われる。
厚生労働省ベーチェット病に関する調査研究事務局である当教室および眼科では多くのベーチェット病患者の診療にあたっており、その病因、病態を明らかにすることは重要な課題である。今回の講演会は、単にGul教授の知識を吸収できただけでなく、今後の学術的な交流を深める上でも大きな意義があった。 (文責
岳野光洋) |
主催 |
横浜市立大学医学会、免疫・血液・呼吸器内科学、眼科学 |
「横浜医学」60巻4号より転載
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第149回横浜市立大学医学会講演会
演題 |
自然免疫研究から新規ワクチンの開発戦略へ |
演者 |
石井 健 先生
大阪大学微生物研究所 分子原虫学分野 免疫学フロンティア研究センター 自然免疫学 准教授 |
要旨 |
平成21年10月14 日(水) に講義室にて、 第149回横浜市立大学医学会講演会を行ないました。演者は、本学平成5年卒で、 現在、大阪大学微生物研究所
分子原虫学分野、免疫学フロンティア研究センター 自然免疫学で准教授をされている石井健先生にお願い致しました。
石井先生は、Toll 様受容体の発見で知られる審良静男先生の教室において、中心的な存在としてご活躍されておられます。今回、最近問題になっているインフルエンザワクチンをはじめとする、ウイルス感染に対する細胞側のDNAセンサー分子の解析をはじめ、得られた解析結果を基盤に効果あるワクシネーションの理論構築を行なっておられ、その仕事を紹介して頂きました。特に、体の中でnecrosis
に陥った細胞から出されるRNA、DNA 断片や、外界から侵入するウイルスなどのRNA、DNAが、 10種類のToll様受容体ばかりでなく、NOD様受容体、RA-inducible
gene I 様受容体などを介して免疫誘導を起こしている事、核酸の配列やDNA 構造によるアジュバント効果の相違、さらには、その反応を介するTbkl
を中心とする細胞内シグナル系などの解析結果を詳細に紹介されました。また、先生のお話は、昨年神奈川県で起こった、インフルエンザワクチンを受けていたのにも関わらず、院内で集団感染が起こった例について、先生のご研究からみた原因の考察もご紹介を頂き、免疫学の領域をこえ、社会医学的な分野においても、大変ためになるお話をして頂きました。
司会は, この分野に詳しい、小児科の宮前多佳子先生にお願いし、会場には、細菌学、眼科、免疫学をはじめ、多くの大学院生、若い先生方もたくさん詰めかけられ、盛会に終わりました。(文責 大保和之) |
主催 |
横浜市立大学医学会、組織学、泌尿器科学 |
「横浜医学」60巻4号より転載
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第150回横浜市立大学医学会講演会
演題 |
転写因子Bach1による細胞老化とがん化の制御 |
演者 |
五十嵐 和彦 先生
東北大学大学院医学系研究科 生物化学分野 教授 |
要旨 |
五十嵐先生のグループは、basic leucine zipper (bZip)型の転写因子のひとつである Bach1 が、Maf 癌関連蛋白質群と二量体を形成してMARE(Maf
recognition element) に結合し、グロビン遺伝子や抗酸化作用を有するヘムオキシゲナーゼ-1 (HO-1) 遺伝子などの転写を抑制すること、またBach1
はヘムによる直接の制御を受けていることなどを今までに発見、報告されてきた。これらのヘム・Bath1 経路による赤血球分化や一般細胞での酸化ストレス応答の制御といった話題からさらに進み、今回は、細胞老化・がん化との関わりを中心にBach1
に関する最新の知見をご講演いただいた。
細胞老化はDNA 損傷や酸化ストレスなどに誘導される。酸化ストレス誘導性細胞老化はがん抑制因子p53の活性化により起きるが、Bach1 はこの作用を抑制することが分かった。詳しくは、Bach1
はp53、ヒストン脱アセチル化酵素1 (HDAC1) と複合体を作ってp53標的遺伝子に結合し、遺伝子上のヒストンの脱アセチル化を促進することで転写を抑制する。さらに、Bath1
ノックアウトマウス胎児線維芽細胞(MEF)において、 野生型と比べアポトーシスは変化なく老化のみが促進されることから、この抑制作用は細胞老化特異的に起こる現象であることが分かった。
また, 最近になり細胞老化を起こした細胞は様々な炎症性サイトカインやケモカインなどを分泌していることが分かり、 周囲の細胞・組織に働きかけ(autocrine,
paracrine)、 炎症制御や再生など組織恒常性維持に関与していると考えられるようになった(senescenceassociated secretory
phenotype (SASP))。 NFκB はSASPの重要な調節因子でありIL-6→STAT3 の経路を促すが、Bach1 ノックアウトMEF
ではTNFα刺激でNFκB のDNA 結合やIL‐6 産生、STAT3 のリン酸化が促進されることから、Bach1はNFκBを抑制性に制御していることも述べられた。
細胞老化はアポトーシスとともに重要ながん抑制機構の一つと考えられ、良性腫場では細胞老化が見られるのに対して悪性腫場では起こらない。また、SASP
では増殖因子の分泌が促され、かえって癌を進行させる可能性も考えられている。細胞老化で働く因子やBach1 の制御機構についてさらに明らかにされれば、それらが癌治療における治療標的となりうる可能性も示唆され、今後の研究が大いに期待されるご講演だった
(文責 浜 真麻) |
主催 |
病態免疫制御内科学、遺伝子発現制御学 |
「横浜医学」61巻1号より転載
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