精神疾患は生涯において5人に1人が罹患すると言われています。しかしながら、わが国においては精神保健や医療が身近な存在とはいえません。一度でも精神疾患の診断をされれば、差別され生涯大事な役割を任せてもらえないのではないか?薬物治療をはじめると一生薬に頼って生きていかなければならないのではないか?など、誤解や偏見が多く見られます。他の診療科と同様気軽に心の不調時に相談をいただければ良いのですが、受診をためらうお子さんやご家族は当然ながらいらっしゃいます。この中で、学校において精神科医療からの助言や支援を学校側が得たいにも関わらず、お子さんやご家族が医療受診をためらう場合がよくあります。
お子さんやご家族が早めに医療機関を受診することで、よいきっかけが生まれることを期待して受診の説得に懸命になられる学校関係者をときにお見受けします。しかしながら、医療機関を受診する行為は本来プライベートなもので、お子さんやご家族が主体的に決定することなのです。さらにつけ加えるならば、精神科の敷居は他の科よりもとても高いものがあります。まずは、お子さんが困っていることに対して学校とご家族が協力して支援できる内容を今一度考えた上で、お子さんとご家族が「やはり医療機関の助言をもらった方がよい」という結論が出た場合に医療機関をご紹介くださるのが良いと思われます。お子さんとご家族が医療受診の必要性について理解しないまま、来院された場合の通院継続は難しい場合が多々あります。
援助を受けるのにも、自分の困り感を自覚する力や、他の人にそれをさらけ出す勇気や覚悟が必要なものです。「大丈夫です」は問題意識を持っていない場合と、問題意識はあるものの認めたがらない場合、不信感から周囲の関わりを拒否している場合があり得ます。「困っているはず」な部分を「○○の様子があるから私(たち)は心配している」と率直に伝え、相談しやすい環境を作りましょう。また、なぜ支援者に不信感を持っているのか、その背景を明らかにすることも今後の支援にとって重要です。
受診の必要性についてお子さんやご家族が理解していない場合、周囲の偏見を気にする場合、病状により外出が困難な場合、経済的な理由がある場合、主治医との信頼関係が築けなかった場合、薬の副作用を気にしている場合など医療受診を中断する理由は様々です。困難な事情がある場合、それを主治医と共有することが重要なのですが、主治医に話すことに敷居の高さを感じる人たちもいます。そのような場合、通院先の医療ソーシャルワーカーや看護師など医師以外の職種が最初の相談窓口になることがあります。受診の希望はあるものの、これまでの通院先への不信感が強く、医療中断している場合は別の医療機関を検討することも一つの方法です。その場合は、次に受診する医師がこれまでの治療経過を把握できるように紹介状を作成してもらうのが理想的です。場合によっては、相談先があることを望んでいるものの医療機関の継続を希望しない場合もあります。教育委員会の相談窓口や青少年相談センターはひきこもりや不登校、非行や家庭内暴力といったお子さんの情緒的な問題について、電話相談や来所にての相談を受け付けています。地域に数か所あるユースプラザや若者サポートステーションと連携しながら、思春期から青年期にかけての就労支援や居場所づくりにも協力してくれるはずです。