学校で先生にあてられたとき、グループ活動のときに自分の意見を言うときなど、人前で話さなければいけないときはとても緊張する、みんなの前で何か間違ったことをしていないか気になってしまう、人に会って話をしたり電話に出たりするのがとても緊張する人がいます。さらにその結果、ドキドキしたり、汗をかいたり、顔が真っ赤になったり、気持ち悪くなるなど、からだの症状が出る人もいます。
このような人は、“できれば人と会いたくない”、”人が集まるような場所には行きたくない”、という気持ちから、つい人との交流を避けてしまいがちです。こういった症状をお医者さんは「社交不安(しゃこうふあん)」と呼んでいます。以前は「対人恐怖(たいじんきょうふ)」と呼んでいたこともありました。この症状で病院に相談にくるお子さんはたくさんいます。病院で相談していると、この社会不安が不登校やひきこもりの背景になっていることが度々みられます。
はじめての人に会うこと、大勢の人に会うこと、苦手な人はたくさんいます。小さい頃は知ら居ない人に会ったらよく泣いていたとか、お母さんの後ろに隠れてしまっていた、という人もいるかもしれません。こういった子が大きくなったら、堂々と人前で話ができたり、演技や演奏をしたりできる場合もあります。ただし、それは人それぞれです。心が疲れていたり、自信がなくなることが重なったりする中で、もっと敏感になる人もいるのです。
もしも、人に会うこと、人に評価されること、人前で自分を表現することにとても敏感になって、学校生活や友だちとの交流、社会生活(アルバイトの面接など)に支障をきたしてしまったとしたら、それは「社交不安障害」と呼ばれ治療を考えてもよいレベルです。
人前で緊張してうまくいかないのは、「自分の心が弱いから」「自分が他人よりも劣っているから」というマイナス思考になって、さらに悪循環をたどっている人がいます。しかし、それは正しい考え方ではありません。そのような人はたくさんいて、生まれつき不安を感じやすい人は誰もが悩んでいます。マイナス思考に陥っているようであれば、それをお医者さんと相談して思いこみを減らすこともできるでしょう。また、不安を軽くするお薬をつかうことで気持ちを楽にすることができます。