11月レジデント抄読会

11月2日には附属病院の太田医師、深津医師、市民総合医療センターの重井医師らによる臨床疑問の提示とそれに沿った文献紹介が行われました。太田医師はなかなかよくならない不安症の子どもに対するSSRI以外の次の一手はないかと模索した結果、カンナビジオールというサプリメントに着目しました。(Berger M., et al. Cannabidiol for Treatment-Resistant Anxiety Disorders in Young People: An Open-Label Trial. J Clin Psychiatry, 2022. )これは難治性てんかんの治療薬として一部の医療機関で治験が実施されている大麻由来の成分でネット通販でも実は手に入れられるものです。ただし、これはオープンラベルのシングルアームデザインということから、まだまだ臨床的には提案できるものにするには程遠いこと、大麻使用に敏感な日本人の国民性を考えると慎重な議論が必要であることなどが話し合われました。深津医師は神経性やせ症のお子さんへの治療動機づけの一つとして脳MRI画像を説明に用いることがあるのですが、やせに伴う脳の萎縮がどの部位におき、臨床的意味がどの程度あるのかについて興味を持ちました。(Brodrick BB., et al. Structural brain differences in recovering and weight-recovered adult outpatient women with anorexia nervosa. J Eat Disord. 2021)神経性やせ症において、急性期では灰白質や白質の萎縮が全般的に起こることはこれまでの研究で知られていることですが、脱水などの影響もあるため神経性やせ症の臨床特徴につながる部位はどこなのかマスクされてわかりにくいというのが問題でしたが、この論文では急性期、回復期の両時期で画像を比較することで脳の形態変化が回復期も続いている部位を明らかにしたものです。この研究では右側の前頭眼窩部の萎縮が持続的に起こっていることが示されていました。この部位は報酬系や意思決定、行動制御に係る脳領域であり、神経性やせ症自体の臨床特徴に関与する可能性があります。あくまで形態変化を観察しているものなので、機能的にはどのような変化があるのかはまだまだ未知の領域ですが、興味深い内容でした。重井医師は強迫症の治療の際に、どのようにSSRIを増量すべきか、どの程度の量で効果があるのかを患者さんにうまく説明したいということから強迫症で適応があるFluvoxamineとうつ病に一般的に用いられるSertralineの治療効果を検討しました(Brar J. et al. Effect of sertraline and fluvoxamine on quality of life in patients with obsessive-compulsive disorder: A 12-week interventional study. Ind Psychiatry J. 2021)それぞれを50㎎から開始し100㎎まで増量する試験でしたがFluvoxamineは100㎎まで直線的に効果が高まるのに対し、Sertralineは途中で頭打ちとなりました。これは我々の強迫症に対する臨床実感を裏付ける内容で、その他の抗うつ薬についての臨床実感も参加者の間で話し合われました。