お子さんが心の不調をきたしはじめると、最初は適切な相談先もなく、精神医療に関する正しい知識も手に入らないために、ご家族はたいてい迷っています。迷っている段階で、いきなり周囲の人たちから「精神科を受診してみたらどうか」と勧められると、まるで「心の病気だ」とか「家族の問題だ」などレッテルを貼られた気持になったり、 「うちの子でなくあの子たちに問題があるのに、なぜうちの子が受診を勧められるのか?」などと感じてご家族はしばしば戸惑います。精神医療はまだまだ日本では身近なものではありませんし、ましてや普段は元気なイメージの子どもが心の不調をきたして精神科を受診すること自体ピンとこない人も多いことでしょう。精神科受診に心理的な抵抗感・拒否感を感じることは、自然なことかもしれません。
精神科を受診することによって、「精神障害」のレッテルを貼られる、「薬づけ」になってしまう、という間違ったメッセージがマスメディアなどで流れることがあります。中にはそういった情報に影響をされる人がいて、精神科を受診することで自分の人生や経歴に傷がつくのではないか?などという悩みを聞くことがあります。
しかし、児童精神科は「親と子」が長い人生の中で羽を休める止まり木となる場所でありたいと思っています。私たちは「親子の心の止まり木」になれるような精神医療をめざしています。もしも、精神医療に対する不信感や不安感があるのであれば、まずそのような悩みからお話しください。医師はしっかり耳を傾け、丁寧に説明をいたします。
児童精神科医の行う医療行為が人生を左右するわけではありません。気軽に立ち寄るような気持で、相談にいらしていただければと思います。初診後の通院期間は一度だけの相談から数年単位の通院を要する人までそれぞれなのですが、継続治療の必要がなくなれば治療を終結します。
お子さんはまだ視野が狭いところがあり、多くは困難に陥ったときに「自分のせいだ」と思ってしまうか、「まわりが悪い」と短絡的な結論を出して悲観的になっていることがあります。病院に相談に来ることで、自分の疲れやすさや日頃のストレス、もしくは自分にそぐわない環境を改善していけば苦しい状況から抜け出せる可能性があることが学べるかもしれません。今起こっていることは誰のせいでもないのです。精神科医はお子さんに新たな解決に向けての視点を提供してくれるはずです。
お子さんの心が不調になると、これまでうまくいっていたお子さんやご家族同士のコミュニケーションも円滑にならなくなって、まるでお互いハレモノに触るような関係になっているとか、学校が信頼できなくなって担任とうまくコミュニケーションが取れないなどの悩みも聞かれます。病院の医師は中立的な立場でお子さんとご家族の話を聞きますので、それだけでもご家族の負担が減る場合があります。