男女別の制服、男女別の名簿、ランドセルや道具箱の男女差、「君付け、さん付け」の呼び分けがあったり、「男の子らしく、女の子らしく」と求められて苦しく感じている人はいないでしょうか。また、異性への恋愛感情については周りに相談できても、同性への恋愛感情についてはなかなか口にすることはできない雰囲気があるかもしれません。こういった社会的慣習のせいで「自分の感じ方はおかしいのではないか」「悩みを口にすることもしてはいけないことなんじゃないか」と悩んでいる人たちは多くいます。
児童精神科を訪れる10代の皆さんの約1割は恋愛対象や自らの性別に悩みを抱えており、このような悩みがある人はそうでない人に比べて自分を傷つける行動や死にたい気持ちを抱えていることが多いことがわかっています。このような不調は誰にも相談できないという孤立感とも関係しているようです。ところが、心の悩みを相談しに訪れたはずの児童精神科でも性にまつわる悩みを話していいものか、医師や看護師などの医療従事者にどう思われるのかを心配して相談をためらってしまう人も多くいるようです。
横浜市立大学児童精神科ではそのような皆さんに対して、学校生活や家庭生活の中での悩み、対人関係の悩みに寄り添い相談に乗ります。プライベートなことなので、家族とは別でお話ししたいという人は気軽に担当医に伝えてください。専門の看護師さんやソーシャルワーカーさんにも相談できますので、ピアサポートなど地域の相談先や居場所づくりのお手伝いもできます。ただし、第二次性徴抑制療法などのホルモン治療は2年以上の専門外来での経過観察が必要ですので、ジェンダークリニックなどの専門外来にも紹介させていただいています。