横浜市立大学 医学部 消化器内科学教室

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澤田敦史先生(センター・助教)の論文が掲載されました.

澤田敦史先生(センター・助教)の論文が掲載されました.

Clinicopathological and Genetic Features in Superficial Nonampullary Duodenal Epithelial Tumors.  Gastroenterol Res Pract. 2025 May 27:2025:1063863.

表在性非乳頭部十二指腸上皮性腫瘍(superficial non-ampullary duodenal epithelial tumor, SNADET)は,粘液形質に基づき腸型と胃型に分類されますが,胃型は腸型に比べて高い悪性度を示す可能性が指摘されています.しかしながら,その稀少性ゆえに,病理学的および遺伝的特徴,ならびに発癌機序に関する知見は未だ限られているのが現状です.

本研究では,内視鏡的切除を施行した胃型SNADETを対象とし,その臨床病理学的特徴ならびに早期のゲノムイベントを明らかにすることを目的としました.胃型腫瘍や粘膜下層(SM)浸潤癌の症例数が限られていたため,インパクトのある統計的結果を得るには至りませんでしたが,胃型SNADETではGNAS変異が特異的に認められ,腺腫から癌に至る過程で共通して存在していた点は注目に値します.これらの所見から,現時点では胃型SNADETに対しては積極的な切除を検討すべきではないかと考えております.

今後は本研究の知見を礎に,十二指腸癌という希少癌に対し,多施設共同で胃型腫瘍やSM癌の症例を集積し,より大規模かつ精緻な解析が進むことを期待しております.

本研究の遂行にあたり,終始ご指導くださった前田愼先生,平澤欣吾先生には,心より御礼申し上げます.また,病理評価に関して多大なるご助言を賜りました稲山嘉明先生,市民総合医療センター病理部技師の皆様にも深く感謝申し上げます.共著者の皆様をはじめ,本研究にご協力いただいたすべての方々に,心より感謝申し上げます.

とりわけ,がんゲノム診療科の杉森慎先生には,免疫染色から遺伝子解析に至るまで,全く知識のなかった私に丁寧にご指導くださり,本研究の根幹となる解析工程のすべてを担っていただきました.この場を借りて深く御礼申し上げます.

タイパ(タイムパフォーマンス)やコスパ(コストパフォーマンス)が重視される現代において,本研究はそのいずれの面でも効率的とは言い難いものでした.しかし,十二指腸を理解するために胃や大腸を学び,試料を何度もプレパラートで観察しながら試行錯誤を重ねた経験は,私の今日の臨床に確かな礎を築いてくれたと実感しております.最後に,このような形で研究成果を残すことができたことを,改めて多くの皆様に心より感謝申し上げます.(澤田)