肝臓グループ
対象疾患
ウイルス性肝炎 (B型肝炎、C型肝炎他)、自己免疫性肝炎、原発性胆汁性胆管炎、非アルコール性脂肪性肝疾患、肝障害 (アルコール性、薬剤性、代謝性他)、肝腫瘍 (肝細胞癌、肝内胆管癌他)、肝硬変、食道胃静脈瘤等
・C型肝炎治療
肝疾患連携拠点病院の付属市民総合医療センターを中心として、C型肝炎に対して数多くの抗ウイルス治療を行ってきた。特に最近では、インターフェロンフリーの経口抗ウイルス剤(DAAs)の治療が主体となっている。具体的には、ダクラタスビル・アスナプレビル併用療法が130例以上で導入され、治癒率(SVR24)は約90%である。また、ソフォスブビル・レジパスビル併用療法の導入実績が210例以上、ソフォスブビル・リバビリン併用療法が160例以上であり、いずれも現在までのところ、96%以上の治癒率を達成している。また、随時発売になる新薬についても導入をしており、新たなDAAsの臨床治験も実施している。
・肝癌治療
肝細胞癌における治療は、肝障害度 (肝機能)、腫瘍数、腫瘍径から日本肝臓学会、肝癌研究会のガイドラインより、下図のように指針されています。
治療としては、外科的切除、ラジオ波焼灼療法、エタノール注入療法、肝動脈化学塞栓療法、肝動注化学療法、全身化学療法、定位放射線治療と個々の状況に応じて選択の幅が多くあります。
1) ラジオ波焼灼療法;RFA
当センターでは、2000年よりラジオ波焼灼療法(RFA)を導入し、2017年までに約1400件 (2016年70件)を施行しています。RFAは腫瘍に対してラジオ波電極針を穿刺し,この電極針から発生するラジオ波電流により,腫瘍とその周囲を熱凝固、壊死に陥らせる治療です (下図)。RFAは超音波下で体外からアプローチしますが、当センターでは、超音波検査にも力を入れて診断治療の向上に努めています(<造影超音波>参照)。
治療前のCT(左下図)では肝臓のS3領域に2cm径の肝癌を認め (赤矢印)、RFA後のCT(右下図)ではその白い“染まり”が消失しました。腫瘍よりやや広く“マージン”をとって(黄矢印)熱凝固されているのがわかります。
2) 肝動脈化学塞栓療法および肝動注化学療法
当院では、外科治療やラジオ波焼灼療法が難しい場合には、附属市民総合医療センターを中心に、血管造影検査とCT検査が同時に行えるIVR-CTを用いて、 肝動脈化学塞栓療法および肝動注化学療法を行なっています。2015年には肝動脈化学塞栓療法136例、肝動注化学療法56例、2016年には肝動脈化学塞栓療法140例、肝動注化学療法67例行なっています。また、附属市民総合医療センターでは随時、肝細胞癌破裂に対する塞栓止血療法を施行しています。
3) 分子標的治療
これまでに、進行肝細胞癌220例の患者さんに対して分子標的薬sorafenibを投与してきました。更にGlobalの様々な分子標的薬の治験に参加し、治療困難な進行肝癌の予後改善に向けて取り組んでいます。
造影超音波
2007年1月より世界に先駆けて日本で市販された超音波造影剤ソノゾイドは血液よりも小さい気泡であり、体のなかで分解されてしまい、最終的には肺から排出される。CTやMRIで使用されるヨード造影剤と異なり、腎臓が悪いかたでも使用可能である。またヨードアレルギーのある方でも使用が可能である。いままで5千人以上の方に使用してきたが、明らかな副作用がで方はおらず、妊婦さんにも安全に使用可能な造影剤である。一回にわずか0.2ccを静脈注射するだけで、注射後15-45秒の動脈優位相で腫瘍血管と腫瘍濃染を、1分半の門脈優位相で腫瘍濃染の程度を、そして10分後の後血管相で腫瘍と周囲との輝度の差を観察し、腫瘍の存在診断(腫瘍があるかないかの判定)と質的診断(その腫瘍がどんな腫瘍であるかを診断する)が可能である。その造影剤を用いて三次元で腫瘍を描出することで診断や治療の効果判定にもちいたり、またCTやMRIを参照にする融合画像を用いることで、超音波だけでは検出できない病変を検出し、超音波ガイドで治療したり、それを効果判定することも可能になった。点滴の必要があるが、誰でも安心、安全により精密な検査をうけることができ、その結果、診断と治療方針を決定することができる検査であります。2016年は約600件施行しております。