最新情報 09.06.22

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09.06.22

鈴木准教授らの研究グループが、細胞自らが自身の周りに細胞外基質を集めてくる性質を持っていることを見いだしました。

Intracellular polarity protein PAR-1 regulates extracellular laminin assembly by regulating the dystroglycan Complex.
Masuda-Hirata M, Suzuki A, Amano Y, Yamashita K, Ide M, Yamanaka T, Sakai M, Imamura M and Ohno S.
Genes to Cells, 14(7), 835-850), 2009.

 上皮組織の形成や維持は、個々の細胞間の接着、細胞とその周りに存在する細胞外基質(Extracellular Matrix)との接着が大きな役割を担っています。従って、細胞外基質がどのようにして組織化され、どのようにして細胞と協調して組織を形成しているかを理解する事を、生医学上の大きな課題となっています。

ExtracellularMatrix 今回、鈴木准教授らは、細胞の極性を決めているタンパク質の一つであるPAR-1が、細胞外基質の主要成分であるラミニンの細胞表層への集積の役割を担っていることを突き止めました。細胞が自分自身で、自身の周りの環境を整える機構の存在がわかったことになります。

 さらに、細胞内のタンパク質であるPAR-1が、ラミニン受容体であるジストログリカン複合体と直接結合し、その制御を介して、細胞外のラミニンの再配置に大きな役割を果たしていることを突き止めました。

Dystroglycan  ジストログリカンDystroglycan複合体は、筋ジストロフィー症の責任遺伝子として同定されたジストロフィンDystrophinを含む分子複合体で、細胞外のラミニンと細胞骨格であるアクチン線維とを結びつける役割を果たしています。この複合体の他の分子、ジストログリカンDystroglycan、シントロフィンSuntrophin、やジストログリカンの糖鎖修飾酵素などのいずれに異常が生じても筋ジストロフィー症になることもわかっています。
  上皮細胞では、ジストロフィンDystrophinの替わりにユートロフィンUtrophinがジストログリカンDystroglycan複合体を構成し、同様の役割をもっていると考えられてきました。
  今回の一連の解析から、ジストログリカンDystroglycan複合体が、細胞表層へのラミニンの集積を通じて、上皮細胞の極性形成に大きな役割を果たしていることがわかりました。そして、その役割の少なくとも一部に、細胞極性タンパク質PAR-1が関わっていることがわかりました。

 PAR-1は、aPKC-PAR複合体の下流で、様々な細胞の極性形成に大きな役割を果たしている基本分子です。Wnt系との関わり、Notch系との関わり、微小管MTとの関わり、など様々な解析が行われていますが、その機能のほとんどは謎です。最近では、ピロリ菌の病原タンパク質の細胞内標的であることもわかってきました。

 今回の発見は、このPAR-1の役割の解析の上で大きな役割を果たすことが期待されます。

PAR-1b

大野茂男 (ohnos@med.yokohama-cu.ac.jp)
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