最新情報 08.10.22

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08.10.22

[論文紹介]

Journal of Cell Science 121, 2481-2492 (2008)
aPKC enables development of zonula adherens by antagonizing centripetal contraction of the circumferential actomyosin cables.

私達はこれまでPAR-aPKCシステムの中心的な出力分子の一つであるaPKC(atypical protein kinase C)が上皮細胞特有の接着構造、特にapical側で細胞を一周取り囲む接着帯(ZA:zonula adherens)の形成に必須な機能を果たしていることを示してきました(JCB 152:1183-96. 2001; JCS 115:3565-73, 2002.)。今回の論文では、高解像度のtime lapse confocal顕微鏡などを駆使して、このaPKCの作用のメカニズムを詳細に解析しました。ZAは、これまた細胞を一周取り囲んでいる「収縮性のアクトミオシン束(perijunctional belt)」によって裏打ちされていますが、このアクトミオシン束の(求心的な)収縮力が個々の細胞をapical端で絞り上げることによって、筒様の細胞が蜜に接着した上皮細胞層の形成が可能になっていると考えられます。本論文では、接着形成過程においては「このアクトミオシン束の求心的な収縮力が遠心的な力によって相殺される必要がある」ことを明らかにした上で、aPKCがこの過程を制御することによって接着形成過程に関与していることを示しました。多細胞生物はその発生過程において、このアクトミオシン束の収縮力を微妙に制御することによって上皮細胞層のダイナミックな形態形成運動を可能にしています。したがって、今回明らかにしたaPKCの作用は、こうした発生過程にも重要な寄与をしていることが十分に考えられるという点でも非常に興味深いと思っています。

今後は、こうした知見に基づいて、この過程におけるaPKCの標的分子を絞り込むことが私達の最大の課題の一つです。

 

大野茂男 (ohnos@med.yokohama-cu.ac.jp)
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