遺伝学教室の研究について
次世代シーケンサーを用いた希少遺伝性難病の原因解明
遺伝学教室では、これまでに1.5万サンプルの全エクソーム解析(タンパク質をコードする全遺伝子をシーケンス)を施行し、60疾患の原因遺伝子を特定しました。以下に全リストを提示します(病名・原因遺伝子・発表論文を示す)。これは国内外でも突出した成果です。
原因未解明の希少遺伝性難病に対して
これらの研究を通じて現行の解析手法の問題点も明らかになってきました。全エクソーム解析はショートリード次世代シーケンサー(NGS)を用いています。ショートリードNGSを用いた解析は、150〜250 bpの短いリードを大量にシーケンスをする技術です。この技術を用いた全エクソーム解析で独立した(血縁のない)症例の解決率は35.3%(2745/7773例)です(下図)。これは解析した症例の3例に1例で原因が判明することを示しますが、逆に残りの2名は未解決となってしまいます。
新しいアプローチ
遺伝学教室では、この未解決症例に対して新しいタイプのNGSを導入し解析をスタートしています。ロングリードNGSという技術で、このシーケンサーを用いると10 kb以上のゲノム領域を1リードで読んでしまうことが可能になります。1リードが10 kbであれば、ショートリードNGSでは解析が不可能であったヒトゲノム上のリピート領域や複雑な構造を有する領域を比較的容易に解読することが可能になります。我々は2015年よりロングリードNGSを開始しています。現在PacBio社のSequel IおよびSequel II、Oxford Nanopore社のPromethIONを導入しフル稼働で原因未解明の症例の解析を進めています。