研究統括

「新しい産学連携拠点形成の基盤ができました」

平野 久
研究統括
横浜市立大学特任教授
平野 久

 私は、本プロジェクトが始まった平成20年から7年間、拠点長としてプロジェクトの推進に携わってきました。本年3月末日で定年退職したため、4月から拠点長を大野茂男教授と交代しました。現在は、研究統括として拠点長を支援する業務に携わっています。 本プロジェクトは、翻訳後修飾異常と病気の関係を、最新のプロテオーム解析技術を用いて明らかにし、診断マーカーの開発、疾患の原因蛋白質の解明や創薬を産学が継続的に行えるイノベーション創出拠点の形成を目指しています。現在、協働機関9社と横浜市立大学が一体となって事業を推進しています。横浜市立大学は、拠点形成を促進するため、融合領域研究の促進、拠点の中心施設、先端医科学研究センターの建設と増築、バイオバンクの設置、研究開発プロジェクトの実施によるシーズ開発、若手研究プロジェクトの実施など様々なシステム改革を行いました。その結果、基盤技術の開発研究、開発された基盤技術に基づく予防技術や診断薬、治療薬に関するシーズならびに出口研究が大きく進展しました。例えば、卵巣明細胞腺がんで発現が変動する蛋白質に対する抗体は、診断マーカーとしてあと2年ほどで実用化できる見通しとなりました。また、脳の可塑性を高める効果が見いだされた化合物は、脳損傷動物の運動機能の回復(リハビリテーション)を促進する作用があることが見いだされました。リハビリテーション効果促進薬の創出に一歩近づきました。このような医薬品は発想自体存在しなかったもので、これが実現すると大きな社会波及効果があります。一方、本プロジェクトで検出された膨大な翻訳後修飾データについては、ModProtと命名した独自の翻訳後修飾データベースに収納しています。これまでに4,055 蛋白質、142,470 ペプチドの翻訳後修飾情報がデータベース化されています。個人の健常時と罹病時の翻訳後修飾データベースが完成すれば、疾患による翻訳後修飾異常が明白になりますので、その異常を治療する効果的な戦略を立てることができると考えています。今後は、本プロジェクトでこれまで得られた研究成果を基にして、新しい医療体制の構築、診断薬・治療薬の産業的な展開、新市場の開拓を進めることができる拠点の創生が大きな目標になると思います。この目標に向かって大野拠点長を中心に事業が飛躍的に発展することを期待しています。

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