横浜市立大学 医学部 消化器内科学教室

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三輪 治生先生(センター・講師)の論文が掲載されました.

三輪 治生先生(センター・講師)の論文が掲載されました.

Novel self-expandable metal stent with dumbbell-shape and spiral cover to prevent stent-related cholecystitis.Endoscopy. 2025 Dec;57(S 01):E271-E272.

ABIS社より発売された新型HILZO stentについて10月に初回使用例の報告をしておりましたが,このたびステント関連胆嚢炎の合併を予防しえた症例を経験したため,Endoscopy E-videoに報告させて頂きました.このステントは,肝側端に逸脱防止のダンベル形状を有し,外層PTFEカバーに隙間を作ることで胆嚢管・膵管閉塞予防が期待される製品になります.

切除不能胆道・膵臓癌の診療を行う上で,治療開始時にステントを原因とする胆嚢炎・膵炎を合併し,化学療法導入が遅れる症例をしばしば経験します.胆嚢管が狭窄部近くから分岐する場合には,胆嚢内にプラスチックステントを留置することもありますが,手技が煩雑であり,胆嚢管穿孔などのリスクも生じます.

今回報告した1例目では,狭窄直上から分岐した胆嚢管に造影剤の貯留を認めていましたが,ステント留置後に造影剤が速やかに流出し,胆嚢管閉塞を回避できたことを確認しました.また,2例目では同様に胆嚢管を被覆する形でステントを留置しましたが,留置後のCTでは胆嚢が虚脱しており,胆嚢炎を危惧することなく化学療法の導入が可能でした.当院ではこれまでに10例ほどに使用していますが,胆嚢炎・膵炎を含む合併症を認めずに治療を行えています.

悪性遠位胆道閉塞に対する治療は,アンカバードステントが有用であるとの報告も増えておりますが,腫瘍の増大によるin growthを予防でき,閉塞時に抜去できるフルカバーステントの需要は今後も増えていくものと考えます.本報告が最適なデバイス選択の一助になることを願います.

このたび投稿に際してご助力いただきました前田教授,消化器病センターの皆様に御礼を申し上げます.
なお,これまで20年以上にわたって当教室および消化器病センターを牽引し多くの教室員をご指導いただきました沼田和司部長が3月をもってご退官されました.肝臓癌治療・超音波医学に残した多くの功績はもちろんのこと,センター病院で沼田先生と過ごした素晴らしい日々に感謝の念を抱きつつ,これからも医学の発展と患者さんの治療に貢献できるよう尽力して参りたいと思います.この場をお借りして,心から御礼を申し上げます.  2025年3月末日 三輪 治生