多羅尾 和郎先生の論文が掲載されました.
B型肝硬変症に抗ウイルス剤であるentecavirを投与すると,肝発癌率が低下することは周知の事実である.しかし長期entecavir投与下での肝発癌に関する発表論文を見ると,世界各地で発癌率が著しく異なり,最も低いスペイン(1%/年)と最も高い韓国(3.6~3.8%/年)では3倍以上異なることに私は気付き,その原因はどこにあるのかをPubMedの発表論文で検討した.投与開始時のHBV-DNA量に殆ど差はなく,その他各地の浸淫度にも関係なく,HBV genotypeが大いに関係し,ヨーロッパに多いgenotype Dでは1.89 %/年と良く抑えられているのに対し,極東アジアに多いgenotype Cでは発癌が抑えられず2.91 %/年と,発癌が有意に高率であることが判明した(p<0.01) .このように論文を読む時には,どうしてその様な現象が起こるのかを考えながら読むことが重要であると思われた.(多羅尾)