横浜市立大学 医学部 消化器内科学教室

MEMBER PAGE ENGLISH PAGE

鈴木 良優先生(附属・助教)の論文が掲載されました.

鈴木 良優先生(附属・助教)の論文が掲載されました.

Development of a novel PIK3CA-mutated pancreatic tumor mouse model and evaluation of the therapeutic effects of a PI3K inhibitor.PLoS One. 2025 Jul 10;20(7):e0326491.

PIK3CA遺伝子はPI3Kのサブユニットをコードするがん遺伝子であり,乳癌や胃癌などで比較的高頻度に変異が見られます.本論文は,膵特異的にPIK3CA遺伝子と癌抑制遺伝子であるTP53に変異を入れた膵癌モデルマウスを作成し,PIK3CA遺伝子変異が膵癌においてもドライバー変異となることを示したものです.さらに同腫瘍にはPI3K阻害剤が有用であることを確認し,MEK阻害剤との併用の可能性を述べました.

PI3K阻害剤はその下流のAKT阻害剤とともにPIK3CA変異陽性乳癌などに対して臨床応用されつつありますが,膵癌では変異の頻度が低いことから実用化には至っていません.本論文で作成したモデルはKras変異陰性膵癌であり,このモデルが当てはまるような症例は極めて少数です.しかしゲノム医療が普及した昨今,このような希少セグメントの炙り出しも比較的容易になってきており,アンメットメディカルニーズに応えるべく本研究が少しでも膵癌患者さんの予後改善につながれば幸いです.

学位論文に続けて2本目の論文になります.学位論文に比べれば内容はスリムですがやはり論文を1本書くにはかなりの労力が必要だなと身に染みて感じます.いつも近くでざっくばらんにご指導いただいている前田教授や基礎チームの先生方を始め,共著者の先生方に深く感謝いたします.またリサクラで当科をまわった学生の川内さんのデータも一部使用しました,本当にありがとう.最後に,会計処理や業者・事務方とのやりとりを含めいつも秘書を超えた様々な任務を担ってくださっている佐藤亜矢子様にも,この場を借りて心より感謝申し上げます.(鈴木良優)