遠藤 和樹先生(大学院生)の論文が掲載されました.
このたび,EUS-HGSにおける穿刺テクニックとして,「Scope withdrawal technique」と命名し,ご報告させていただきました.
B2穿刺の際には,縦隔穿刺を回避するための注意が必要ですが,最初に穿刺部が胃粘膜であることを確認していても,EUS画面上で穿刺ラインを微調整していく過程で,無意識にスコープを引いてしまい,結果として縦隔を穿刺してしまうリスクがあります.
本テクニックは,そうしたリスクを回避することを目的としています。最初に胃粘膜を穿刺した状態でスコープをわずかに引くことで,胃粘膜がスライドし,穿刺点を変えることなく,穿刺ラインの調整が可能になります.この方法により,縦隔穿刺のリスクを低減できると考えています.
報告症例では,ほんの数ミリの変化ではありますが,interventional EUSの領域では,この数ミリが手技の成否を分ける極めて重要な要素であると実感しています.本報告にあたり,この数ミリの違いを視覚的に伝えるため,シェーマ作成にも力を入れました.
穿刺ラインを微調整する際には,針を完全に抜去せず,本テクニックをぜひご活用いただければ幸いです.
なお,このテクニックは,EUS-TAの際に血管を避けるために行われる手法と同様であり,当該症例では私自身も無意識に行っておりました.三輪先生が,このテクニックの有用性をご指摘いただき,このたび報告の機会を得ることができました.
EUS-HGSは,現在こそ高い手技成功率を誇っていますが,その背景にはデバイスの進歩のみならず,様々な重要な手技の報告が積み重ねられてきた歴史があります.
本報告も,EUS-HGSのさらなる発展にわずかでも貢献できれば幸いです.
最後に,本報告に際しご指導いただいた三輪先生,前田教授,そしてセンター病院の先生方に深く感謝申し上げます.(遠藤)