三輪治生先生(センター講師)の症例報告が掲載されました.
十二指腸乳頭部腫瘍に対する内視鏡的乳頭切除術(EP)は普及している治療法ですが,しばしば重篤な偶発症をきたすことが知られています.このたび,EP後に膵管の高度屈曲により膵管損傷をきたした症例についてEndoscopy誌E-videoに報告させていただきました.本例ではEP後に膵管損傷による後腹膜への膵液瘻が持続した場合,膿瘍形成,出血,消化管穿孔などの重篤な合併症を引き起こすことが強く懸念されたため,緊急に超音波内視鏡下膵管ドレナージ術(EUS-PDD)を施行しました.非拡張膵管でしたが,22G針で穿刺が可能であり,膵頭部主膵管を経由して十二指腸への挿入にも成功したため,EUS下膵管胃吻合術(EUS-PGS)とランデブー法による経乳頭的膵管ドレナージを同時に施行し,持続的な膵液瘻の予防に成功しました.術後経過は良好であり,治療予定通りに退院となりました.EP後の膵液瘻に対してEUS-PDDを施行した報告はこれまでになく,Salvage法の一つになりうることを報告させていただきました.特殊な手技ですが,EP後の偶発症に対する治療法の一つとして役立つことを願います.投稿に際してご指導・ご協力いただきました前田教授,困難な治療をともに乗り切ってくれた肝胆膵のみんな,治療報告を快諾していただいた患者様とご家族に深謝いたします.(三輪)