食物を摂取し、吸収し、代謝するという消化機能は、胃や腸などの消化管、肝臓、膵臓、唾液腺などの複数の臓器によって担われています。すなわち、消化器系(digestive system)は、ひとつの幹細胞システムにより構成される中枢神経系や血液系とは大きく異なり、複数の幹細胞システムにより細胞社会が成り立つという極めてユニークな生体システムとして機能しています。そのため、消化器系の全容を解明するためには、各臓器における幹細胞を調べるだけではなく、それらの相互関係を「統合的」に理解することが必要です。そのため、私どもの研究室では消化器系を構成する複数臓器(肝臓・膵臓・腸管・唾液腺)の幹細胞の同定と解析を並行して推進しています。このような「統合的」な研究手法は、世界的にみても独自性の極めて高いアプローチであり、消化器系の全容解明における「先駆け」となる重要な研究です。消化器領域における「再生医療」の開発や「癌」の生物学的理解に大きな進歩をもたらす研究です。
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