再生医療とは?
今、目の前に、不幸にして腕を切断されてしまった患者さんが運び込まれて来たとします。ある外科医は、腕を何とか縫い合わせて「再建」をしようとするでしょう。また、ある外科医は、より質の良い別な腕や人工的な代用物を使用することにより、傷害を受けてしまった腕の「置換」を試みるでしょう。このような患者さんに、今までのコンセプトとは異なる新しい治療が可能であるとしたならば、それはどのようなものなのでしょうか。ひとつの可能性として、再び新しい腕を生やしてやるというような考え方は、非常に大きな魅力があります。このような治療方法の開発を目指す試みが、「再生医療」と呼ばれる新しいコンセプトです。「再生医療」のための技術開発を指向する科学が「再生医学」です。
生物学的プロセスを人為的に再現し医療に役立てる!
「再生医学(Regenerative Medicine)」は、1990年代に急速に解明の進んだ発生生物学や幹細胞生物学の新知見を、臨床医学(患者さんの治療を目的とする医学)へ応用することを目指していく大きな動きです。すなわち、器官発生や組織再生などに見られる“生物学的プロセス”を、人為的に最大化あるいは最適化することにより、革新的な治療法を開発することを試みる新しい医学であるといえます。21世紀の臨床医学に対する大きな期待のひとつは、このような “生物学的プロセス”を自在に操る実用化技術を開発すること、そして、それらを医療として系統的に実践していくことにあります。移植用の細胞・組織・臓器の工業的生産、あるいは何らかの手法による器官再生の人為的誘導、このような革新的な医療を目指して研究開発を展開する必要があります。
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