近視の進行予測の
アルゴリズム、リスク解析
近視の人口は世界規模で飛躍的に増大しており、文明国において有病率が高く、日本においては高校生の60%が近視であると報告されております。近視は、裸眼視力ではなく、水晶体屈折率の増加や強度の眼軸延長が成因であります。正常な眼では、近くを見るときは水晶体がふくらみ光の屈折を強くし、遠くを見るときは薄くなり光の屈折を弱くして焦点を網膜に合わせています。しかし、強度近視(ディオプター≧D-6)は眼軸延長の程度が強いため、網膜の中心部(黄斑部)に負荷がかかり、深刻な視力障害や合併症さらには失明を引き起こす危険性があります。一端視力を失う状況になってしまうと有効な治療法がありません。
強度近視は環境要因と遺伝要因に影響され発症すると考えられておりますが、近視にくらべ遺伝要因が強く関わっている様で、血縁者での相対リスクは4.9~20.0倍と報告されております。また、世界中からGWAS解析やGWASメタ解析により、多くの強度近視感受性遺伝子が報告されています。
このような情報と、我々が大規模な集団で得たGWASデータ、生活習慣、生活環境、臨床検査データを組み合わせて、早期に個人がどの程度強度近視に罹りやすいか予測可能な「罹患予測アルゴリズム」の開発を試みております。
近視進行度予測アルゴリズムの確立
近視は世界的に罹患率が高く特にアジア諸国に多い疾患で、日本人集団においても同様の傾向を認めます。また近視の進行は10歳から14歳で顕著になり、22歳から23歳くらいまでは緩やかに近視化が続き、その後まもなくして停止すると言われていますが、将来の近視の進行度を予測する方法は今までありませんでした。
そこで私たちは5年間経過観察できた4歳から84歳の約20万人のデータを対象として、各年齢層、性別および屈折度で細分化して、5年間の屈折度数の変化を解析し、さらに構築したデータベースをもとに、数年後の屈折率がどのようになるかを確率的に予測する、ロジスティク曲線を計算し、将来の屈折度を予測できるようなアルゴリズムを作成しました。
このアルゴリズムをもとに臨床の現場で適切な屈折管理や指導、また将来的には近視抑制治療ができるようになることを期待しています。
[将来のジオプター値の予測式]
Da= | β0+β1×Age+β2×Age2+β3×Age3+β4×Age4+β5×Db+β6×Sex+β7×(R or L) |
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Da: | 期間経過後のジオプター値 |
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βn: | 各年令と多項式の各項により示される表の値をとる係数 |
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Age: | 現在の年令 |
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Db: | 現在のジオプター値 |
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Sex: | 男性であれば1、女性であれば2を代入 |
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R or L: | 右眼であれば1、左眼であれば2を代入 |
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関連リンク:横浜近視予防研究所株式会社