広報誌・コラム

コラム「検査のはなし」


尿・血液検査、血液型・輸血、あるいは心電図や超音波(エコー)にまつわる一般的な話から新しい情報まで、
臨床検査部の医師や技師が交代で執筆しています。

 掲載日  タイトル  関連分野
 2009年  
 5月12日  輸血のはなし  輸血
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2009.5.12
輸血のはなし
“輸血”と聞くと手術や出血、貧血・・・などが思い浮かぶと思います。輸血とは、簡単にいうと血液を血管内に入れてあげること、つまり失われてしまった、もしくは作られなくなってしまった血液成分を体内に入れてあげ、体を健康な状態に近づけてあげることです。
日本で最初に輸血が行われたのは1919年, 第一次世界大戦の頃ですが、他人の血液を輸血することはなかなか患者さんからの理解が得られず普及しませんでした。しかし1930年、当時の首相(浜口雄幸)が暴漢に襲われた際、輸血を行って延命に成功したことから輸血医療が広く行われるようになりました。  

輸血に使う血液は健康な方の善意による献血から造られており、日本赤十字血液センターが管理しています。献血には全血献血と成分献血があり、それによっていろいろな種類の血液製剤が製造されます。赤血球製剤、血漿製剤、血小板製剤、血液凝固因子製剤・・・。輸血が開始された頃は全部の血液をそのまま輸血していましたが、今は必要とする成分だけを輸血する成分輸血が広く用いられています。
ただし、輸血は血液の移植であり、一種の臓器移植です。感染症や免疫反応の影響を受けるといった問題もあります。現在は様々な検査法が発達し、一昔前よりは献血血液の安全性はかなり向上しましたが、完全に解決されているわけではありません。そこで、一部ですが手術の時に輸血を行う場合、自分の血液をあらかじめ貯血しておく自己血輸血といった方法も取られるようになってきました。自分の血液なら安心ですよね。また、血液を増やす薬も開発され、昔ならばすぐ輸血する必要があった患者さんも、今は薬を服用したり、注射として打ったりすることで輸血をしなくてもすむようになってきました。もう少し医療が発達すると、献血血液ではなく感染症などの問題がない安全な人工血液が広く普及されるかもしれません。そうすると血液型の検査など行わなくてもすぐに輸血用血液として使用できるようになるはずです。  

輸血は充分な検査を行えば怖いものではありません。「輸血をすると体がぽかぽかしてとっても気持ちよくなる!」と、ある患者さんから聞いたことがあります。生命を救う大切な治療のひとつです。輸血を受けられる方は医師の話を納得いくまで聞いてから臨んで下さい。医師は説明する義務があります。また健康な方はぜひ、これを機に献血に行って人助けのお手伝いをしてみてはいかがでしょうか。

輸血管理室
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