広報誌・コラム

コラム「検査のはなし」


尿・血液検査、血液型・輸血、あるいは心電図や超音波(エコー)にまつわる一般的な話から新しい情報まで、
臨床検査部の医師や技師が交代で執筆しています。

 掲載日  タイトル  関連分野
 2005年  
 12月3日  お酒と検査  生化学
 9月24日  最近、ウエストがきつくなっていませんか?  メタボ
 8月11日  白血球の働き  血液
 8月10日  このところ爪が白く・厚くなりませんでしたか?-爪白癬の検査について-  微生物
 7月27日  血液型ミニ知識  輸血
 7月14日  あれ?と思ったらまず検査  全体
 6月22日  あなたは貧血と言われたことがありますか?  血液
 6月15日  検査のはなしスタート  全体
 2009年のコラム2008年のコラム2007年のコラム2006年のコラム

2005.12.3
お酒と検査

〜忘年会・新年会など、お酒を飲む機会の多い時期ですが・・・〜
忘年会の時期が到来しました。お酒 飲酒の機会も増える時期ですね。

お酒といえば、やはり気になるのは“肝臓”。 あなたの肝臓は大丈夫ですか?

肝臓は“沈黙の臓器”と呼ばれることもあり、病気があっても症状が現れないことが多いのです。
肝臓は予備能力が大きく、肝細胞に再生能力があることも関係しているかもしれませんね。

“だるい”“疲れやすい”“食欲不振”が肝臓の状態が起因している事もありますが、どんな病気でも出やすい症状で、直ぐに、肝臓の異常と気付かないことも多く、気付いた時には大分悪くなっていることもあります。

手遅れにならない為には、定期的な肝機能検査を受けることが大切ですね。
γ-GTPは、飲酒で上昇し易い事が良く知られています。
飲みすぎによって上昇し、節酒、禁酒で低下します。

AST(GOT)、ALT(GPT)も肝臓の状態で、変化する事が知られていますね。
これらは、アミノ酸の代謝などに働いている酵素で、細胞が壊れると血液中に漏れ出して高値を示しますが、アルコール性肝炎以外でも上昇します。そこで、アルコール性肝炎と慢性肝炎の簡単な鑑別法として、AST/ALT比(あるいはGOT/GPT比)があります。アルコール性肝炎では、AST/ALT比>0.87が知られています。これは、肝臓の障害部位により酵素の含有量が異なる事や半減期(血液から消えていく速さ)の差によると考えられています。
健康診断でチェックされる事が最も多い検査項目のひとつですので、注意して見てみましょう。

ところで、肝臓の形の異常(肝癌など)や脂肪の含まれる状態(脂肪肝)の確認は、血液検査よりも超音波検査やCT検査がより適しています。

飲み過ぎると肝臓に負担をかけますが、適量であれば、HDL-コレルテロール(善玉コレステロール)を増やし、心血管病(狭心症など)を減らす事が知られています。まさに“百薬の長“ですね。
適量とは、エタノール量で男性20-30g/日、女性10-20g/日、ビール中瓶1〜2本(日本酒1合もしくはワイン1杯)位です。 お酒を飲むときは、ほどほどに・・ということですね!

S.Kazuyo / 宮島
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2005.9.24
最近、ウエストがきつくなっていませんか?

―最近話題のメタボリックシンドロームとは―
高血圧・高脂血症・糖尿病といった生活習慣病と診断されていなくても、腹部肥満を伴う場合は、心筋梗塞や脳梗塞などの動脈硬化性疾患が発症し易いことが知られていました。これらは内臓脂肪が増加したためにインスリンの働きが悪くなっている状態(インスリン抵抗性といいます)が共通の基盤にあることが明らかになりました。

そこで、腹部肥満(内臓脂肪面積が≧100cm2に相当する臍部のウエスト周囲径が男性で85cm以上、女性では90cm以上)がある場合で、生活習慣病(高血圧・高脂血症・糖尿病)予備軍の基準を2つ以上満たす場合を“メタボリックシンドローム”と呼ぶことになりました。

メタボリックシンドロームの診断基準(腹部肥満に@-Bの2つ以上を併せ持つ):@中性脂肪150mg/dl以上、または善玉コレステロール(HDL)40mg/dl未満、
A収縮期血圧130mmHg以上、または拡張期血圧85mmHg以上、
B空腹時血糖110mg/dl以上。

すなわち、高血圧、高脂血症、あるいは糖尿病と診断されていなくても、上記診断基準2項目以上を満たし、かつ、腹部肥満を有する方は、メタボリックシンドロームと診断されます。

メタボリックシンドロームは、従来の高血圧、高脂血症、糖尿病と同等あるいはそれ以上に心筋梗塞や脳梗塞などの動脈硬化性疾患発症のリスクであり、一刻も早く認識(診断)し、治療を開始する必要があります。食事療法や運動療法により内臓脂肪を減少させることで改善されますが、薬物療法を併用した方が良い場合もあります。思い当たる人は、一日も早く、かかりつけ医に相談してみましょう。

K.Yuko / 宮島 (イラスト by 濱田)
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 2005.8.11
白血球の働き
 白血球数は変動が大きい項目です。
怪我をすると多くなり、風邪をひくと多くなったり、少なくなったりします。
男女ではあまり差がないものの、年齢では差があり、新生児や1才未満の小児では、 成人より多く、老人では少なくなる傾向があります。
その他、喫煙者や妊婦では高くなることがあります。
健康な成人では、日々およそ1千億個という膨大な数の白血球が作られ、一方では古くなった白血球は壊れていきます。
さらに炎症などがおきると、白血球が作られるスピードが あがり、より多くの白血球が作られます。

白血球には種類があり、その働きや形から、好中球、好酸球、抗塩基球、単球、リンパ球 などに分けられます。

「好中球」
好中球(こうちゅうきゅう)
細菌などの異物が体内に侵入した際、その部位に集まり、貪食・殺菌し、処理します。
骨髄で作られ、7〜14日で末梢血に出て、10〜12時間経つと組織へ移動するので、1日に2回くらい新しい細胞と入れ替わっているのです。
組織に出た好中球は2〜4日で寿命を迎えます。

「リンパ球」
リンパ球
ウィルス感染細胞を、攻撃し壊します。 免疫に必要な物質を作ります。
骨髄や胸腺で作られ、全身の血液やリンパ節に送られます。リンパ球の寿命は一定ではなく3〜4日の短命なものから、半年から数年におよぶ長命なものもあります。

「好酸球」
好酸球(こうさんきゅう)
気管支喘息やアレルギー疾患、皮膚疾患のときに多くなります。
骨髄で作られ、7日くらいで末梢血に出てきます。 血中には約1日滞留します。

血液検査室
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 2005.8.10
このところ爪が白く・厚くなりませんでしたか?

-爪白癬の検査について-
 蒸し暑い日が続いております。  
病院のイラスト
最近、街中でサンダル履きの足先を見ていると、白濁、さらにはやや肥厚した爪を持った方をお見かけします。
もしこうした爪の変化がすべての爪ではなく、何本かは正常な爪も残っているとしたら、それは「爪白癬(つめはくせん)」といって、いわゆる爪の水虫である可能性があります。  

白癬とは真菌、つまりカビの一種です。この白癬が足の皮膚を侵せば足白癬、爪を侵せば爪白癬です。爪白癬は足白癬を合併していることがほとんどです。
日本では、主な原因菌としては紅色菌(Trichophyton rubrum)という菌種が多く見られます。  

さて、爪白癬は痛みなどは特にないそうですが、そのまま放置しておくと、周囲の人間、あるいはご自身の他部位にも感染してしまう危険性が高く、さらに巻き爪などを合併して歩行障害をきたす恐れもあり、すぐにでも治療を受けるべきなのですが・・・病院でいったいどのような痛い検査・治療をされるのわからないから躊躇しているという人も中にはいらっしゃるのではないでしょうか?  

ここでは爪白癬の検査に関して簡単にご紹介させていただきます。

T.カセイカリ鏡検法(直接顕微鏡検査)  
白癬菌の顕微鏡写真診察室内で簡単に実施可能であり、痛みもなく、ほとんどの爪白癬はこの方法を用いて10〜15分程度で簡単に診断がつきます。  
詳しい方法ですが、ピンセットやはさみ、あるいはメスを用いて爪の一部をガリガリと剥ぎ取り、それをスライドグラスというガラスの板に載せます。(あくまでも爪の一部です!生爪をすべて剥がされたりすることはまずありません!)  

次に水虫の細胞壁を破壊する溶解剤として、20%程度のKOH(水酸化カリウム)溶液を数滴滴下して、カバーガラスという、これまた薄いガラスの板で蓋をして、顕微鏡で観察します(写真)。
この方法で白癬菌が発見されれば、検査はおしまいです。

U.培養検査  
水虫が好む栄養素を含んだサブロー培地という寒天に爪の破片を塗布し、水虫を育てる方法です。しかし真菌の発育は遅く、2週間以上を要することなどの理由からこの方法はあまり用いられません。  

治療ですが、内服薬の服用により半年程度で治癒するそうです。  
やっかいな水虫とさよならしましょう!
ばいばいき-ん ばいばい

微生物・分子生物室担当
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 2005.7.27
血液型ミニ知識
 顕微鏡血液型といえば、ABO式による性格判断をテレビなどでもよく見かけますが、これは赤血球の分類方法のひとつに過ぎず、その分類のもととなる血液型抗原は200種類以上が発見されています。  

例えば抗原の有無(+または−)による分類のひとつRh血液型は、よくABO血液型と組み合わせてA型(+)などのように表現されますが、通常使われているのはこの2つの血液型分類です。
その他、生まれた時は(−)であったのに2〜3年後には9割の人が(+)に変化するルイス血液型(Lewis)や蒙古斑が出現するモンゴロイド(日本人も含まれる)特有のディエゴ(Diego)血液型、など人種特有の血液型もあります。
また、性別によって差のある血液型もあり、Xg血液型は男性が70%、女性は90%が(+)などのようにちょっと変わり者の血液型もあります。  

ABO血液型の割合は、日本人でA型40%、O型30%、B型20%、AB型10%です。 

RhD抗原(+)は99.5%、(−)の人は0.5%、日本人では200人に一人の稀な血液型です。
これが、白人ですと15〜20%がRhD(−)とかなりありふれた血液型になります。
血液型は遺伝によって受け継がれていきますので、人種や地域によって特徴があります。

人の性格もよく観察すると様々なように、もし血液型と性格が関連あるとすれば、4種類ではなく200種類の分類法で分析すると、もっと実態に近づくかもしれません。  

赤血球の血液型以外に、骨髄移植の時などに検査する白血球型(HLA抗原)や血小板輸血の時に必要になる事がある血小板型(HPA抗原)があります。

このように、輸血管理室では必要に応じて検査を行い、輸血がより安全に行われるように努めています。                          

輸血管理室担当 S.Naotake
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2005.7.14
あれ?と思ったらまず検査
 注射器お医者さん皆さんが体の具合が悪くなって病院にかかると、医師はその症状によっていろいろな検査をするように指示します。この検査結果をみて医師は病気の診断や治療方法などを決めます。
また、治療が始まってからは、治療が上手くいっているかどうか確かめるためにも検査が行われます。
つまり病気の診断、そして治療過程においても、皆さんはさまざまな検査を受けることになるのです。  

検査を受けることが皆さんにとってどのようなメリットがあるか、ここでは検査を受けて異常が見つかった時と、異常が見つからなかった時の二つに分けて少し考えてみましょう。  

まず検査を受けて異常が見つかった時は、病気の診断が決まり治療を早く始められる事が最大のメリットです。さらにもっと詳しい検査をすることも出来ます。患者さんも病気がどんどん悪くなる前に治療でき、検査を受けて良かったという事になります。  

それでは検査を受けて異常がなかった時はどうでしょうか。
この場合は検査を受けなくても、もともと異常がなかったので病気の診断や治療が開始される事がなく、検査を受けた事が無駄だったと皆さんは思われるでしょうか。
この時の最大のメリットは患者さんが「自分は病気ではなかったんだ」とわかり、安心できる事です。
「もしかしたら自分は病気なのではないか」という不安な気持ちで頭の中がいっぱいになり、何事にも集中出来なくなってしまうというようなことを、皆さんは経験した事がありませんか。そんな時に検査を受けて異常がないという事が分かったなら、安心してほっとした気持ちになれますね。今までのもやもやした気持ちもすっきり晴れて、明日からはまた何いつもどおりの元気な生活に戻る事ができます。  

このように検査を受けて異常が見つかった時も、見つからなかった時もメリットはあります。
検査を受けることは、自動車保険や生命保険にはいる事と似ています。万が一のときは役に立ち、そうでない時も安心できるからです。

ですから皆さんも体の調子が悪く「あれ?ちょっと変だな」と思ったら、ぜひ検査を怖がったりせずに進んで受けるようにしましょう。
検査担当の私たちも、皆さんの緊張を少しでも和らげられるように努力したいと思います。

1階中央採血室担当
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 2005.6.22
あなたは貧血と言われたことがありませんか?

― 平均赤血球恒数による貧血の分類 ―
 赤血球検査結果の中に、MCV(平均赤血球容積)、MCHC(平均赤血球ヘモグロビン濃度)という項目があるのをご存知でしょうか?
聞きなれない言葉ですが、簡単に言うとMCVとは赤血球の大きさ、MCHCとは赤血球のなかのヘモグロビン(血色素)の濃度を表します。 このMCVやMCHCを平均赤血球恒数といいます。
赤血球(RBC)数やヘモグロビン(Hb)量が正常以下に減少した状態を貧血といいますが、さらにMCVおよびMCHCの値によって下記の3型に分類され、診断の目安にされます。
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1. 小球性低色素性貧血 ・・・ MCV(fL) <80  MCHC(%)<30  
ほとんどが鉄分の不足による貧血で、原因は、慢性的な消化管出血、痔出血、女性で生理による出血があります。成人男性や閉経後の女性で認められた場合には悪性腫瘍が出血源になっていることもあり、注意が必要です。

2. 正球性(正色素性)貧血 ・・・ MCV(fL) 80〜100  MCHC(%)31〜36  
出血直後、再生不良性貧血、溶血性貧血、腎不全に伴う貧血等があります。再生不良性貧血とは造血がうまく行われていない状態。溶血性貧血とは何らかの原因で赤血球の崩壊が亢進している場合に見られます。

3. 大球性(正色素性)貧血 ・・・ MCV(fL) >100  MCHC(%)31〜36  
ビタミンB12あるいは葉酸欠乏により発症し、胃を(部分)切除した場合やアルコール多飲者によく見られます。しかし胃癌の合併頻度が高いビタミンB12不足による悪性貧血や、ご高齢の場合に専門医による精査が必要な骨髄異形性症候群(MDS)で、この貧血像を呈する場合があり、かかりつけ医に相談する必要があります。
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赤血球貧血の所見・自覚症状は、皮膚・粘膜の蒼白、動悸、耳鳴り、息切れなどさまざまです。 もし、お手元に血液検査データをお持ちでしたらきっとMCV、MCHCが計算されていると思います。ご覧になってみてください。

血液検査室担当
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 2005.6.15
「検査のはなし」スタート
 “検査のはなし”コーナーを新設しました。
業務連絡を中心とした従来の臨床検査部のホームページとは異なり、検査に関する情報や解説、患者様からの質問疑問にお答えするなど、親しみ易いホームページを目指します。  

『コラム』では、尿・血液検査、血液型・輸血、あるいは心電図や超音波(エコー)にまつわる一般的な話から新しい情報まで、臨床検査部の医師や技師が交代で執筆します。  

『検査いろいろ』では、当院臨床検査部で実際に行なわれているものを中心に、検査の方法や意義などについて、図や写真を使って解かり易く説明します。第一回目は、「血液の旅」というタイトルで、患者様から採血した血液が、どのような旅路を経て、最終的に患者様や担当医の手許に結果として届くか御案内します。  

『検査Q&A』では、患者様より直接寄せられたご質問にお答えします。  

『血液検査の見方』では、主な検査項目が疾患別・ABCアイウエオ順に検索でき、それぞれの正常値(基準範囲)や検査の目的について解説します。  

出来るだけ新鮮な情報をお届けできるようスタッフも努力しておりますが、なにぶん通常業務の終了後アフターファイブの作業となりますので、なかなか更新されない時もあるかと思います。どうぞ懲りずにアクセスをお願いします。

臨床検査部長 宮島 栄治 (宮島先生の診察室 http://ycuem.web.fc2.com/)

※このコラムは2005年6月15日に書かれたものです。
2011年1月のホームページリニューアルにともない、「検査いろいろ」「検査Q&A」「血液検査の見方」のページは削除されました。ご了承ください。
リニューアル後のホームページ内にも「採血・採尿のご案内」「採血Q&A」「生理検査Q&A」「血液検査基準値」のページがありますので、参考にしてください。

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家具

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