遠藤和樹先生(センター・大学院)の論文が掲載されました.
膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMN)の「造影される壁在結節」は,治療方針を決定する上で重要な因子です.しかし,その「造影」の明確な定義はガイドライン上では示されていません.最も感度の高い検査として造影超音波内視鏡検査(CE-EUS)が知られていますが,本邦では保険適用の制約により,その実施が困難な状況です.
今回,超音波内視鏡を用いて微細血流信号を評価可能なDetective Flow Imaging(DFI)が壁在結節の血流評価に活用できるかを検討しました.CE-EUSをゴールデンスタンダードとし,DFI-EUSの壁在結節に対する血流診断能を評価した結果,感度83%,特異度100%,正診率93%という高い精度が得られました.この成果をDiagnostics誌に報告することができました.
本研究を通じて,初めて自らClinical Questionを立て,その解決策を検討・実施し、論文としてまとめる過程を経験しました.この過程を経て,医師として初めて小さな足跡を残すことができたと感じています.今回の経験を通じ,たとえ検査や治療が思うような結果に至らない場合でも,それを研究として検討・報告することで課題を明らかにし,今後の改善や成功につなげる意義を見出すことができると考えるようになりました.そして,こうした取り組みが,診療や検査で関わった患者さんへの恩返しになると考えるようになり,臨床と研究を並行することは決して容易ではありませんが,今後も継続していくことの重要性を実感しています.
また,研究に取り組む中で,より良い内視鏡画像を撮影しよう,さらに工夫できることはないかと自然に考えるようになり,結果として臨床能力や内視鏡技術の向上につながることも実感しています.
今後も臨床と研究を継続し,今回指導してくださった先生方のように,後輩を育成できる医師を目指していきたいと考えています.そして,自分が指導した後輩たちがその意志を受け継ぎ,さらに発展させてくれることを願っています.
最後に,今回の研究にご協力いただいた患者様,検査を担当してくださった先生方,ご助言をいただいた共著者の先生方,論文執筆を指導してくださった三輪先生,読影にご協力いただいた金子先生,杉森先生,そして前田教授に心より感謝申し上げます.(遠藤和樹)