横浜市立大学 医学部 消化器内科学教室

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手塚 瞬先生(PMDA)のASCO-GI2023報告です.

手塚 瞬先生(PMDA)のASCO-GI2023報告です.

ASCO -GI 2023報告

2023年1月19日から21日にかけて米国,サンフランシスコで開催された米国臨床腫瘍学会消化器学会消化器癌シンポジウム(ASCO Gastrointestinal Cancers Symposium 2023〈ASCO-GI 2023〉)に参加いたしました.ASCO-GIは米国臨床腫瘍学会(ASCO)の消化器領域の分会で,消化器癌の国際学会としては,ASCO本会,欧州臨床腫瘍学会(ESMO)本会に次ぐ規模の学会になります.
当医局からは,医局員が筆頭演者の5演題がポスタープレゼンテーションで採択されました.神奈川県立がんセンター(現在PMDA所属)の手塚からはSCRUM -JAPANとJCOG肝胆膵グループの多施設研究の結果をそれぞれ1演題,国立がん研究センター中央病院の善浪先生からは自施設研究と多施設研究(国立がん研究センター中央病院,がん研有明病院,東京慈恵医科大学,東北大学)の結果をそれぞれ1演題,同じく国立がん研究センター中央病院の廣瀬先生からは自施設研究の結果を報告しました.
今回のASCO-GIでは実施中から注目されていた多数の第III相試験の結果が発表されました.自身の肝胆膵領域では,化学療法歴のない治癒切除不能な膵癌患者を対象にリポソーム型イリノテカン塩酸塩水和物,オキサリプラチン,フルオロウラシル及びレボホリナートの併用(NALIRIFOX)とゲムシタビン塩酸塩とnab-Paclitaxelとの併用(GnP)の有効性及び安全性を比較することを目的とした海外第III相試験(NAPOLI-3試験)において,主要評価項目の全生存期間について,現在の標準治療の一つであるGnPに対するNALIRIFOXの優越性が検証された旨が報告されました.その他にも多数の注目演題が目白押しだった今回,胃癌では,Claudin18.2陽性かつHER2陰性の治癒切除不能な胃癌患者を対象に実施された国際共同第III相試験(SPOTLIGHT試験)において,mFOLFOX療法への抗Claudin18.2抗体であるZolbetuximabの上乗せが主要評価項目(無増悪生存期間)を達成した旨が報告されました.
コロナウイルスの影響でハイブリッド開催でしたが,発表者は現地参加が原則となっており,学会会場は前回自身が参加したパンデミック直前の2020年1月に劣らない賑わいを取り戻しつつありました.サンフランシスコの街中では,コロナウイルスの検査ブースが散見され,マスクを付けている人々も渡米前の予想よりはアジア系の人々を中心に多かったものの,大半の人々がマスクなしで過ごしている状況でした.治安についても,コロナの影響で悪化した噂を聴いていましたが,数日の滞在では以前と表面的には変わらない印象で,学会参加以外は坂が特徴的なサンフランシスコの街中を散策したりして過ごしました.
学会の内容自体はWEB等でも把握することが可能であったものの,注目演題発表の肌で感じるインパクト,自身の発表についてのdiscussion,そして,国内外の有識者と交流することは現地参加でしか得られないと改めて実感した今回のASCO-GI 2023でした.(手塚瞬〈PMDA /神奈川県立がんセンター非常勤〉)

手塚  瞬
• Early tumor shrinkage as a predictor of survival in patients with locally advanced pancreatic cancer treated with modified FOLFIRINOX or gemcitabine plus nab-paclitaxel combination therapy: An exploratory analysis of JCOG1407
• Interim analysis results of gut microbiota in patients with unresectable cholangiopancreatic cancer: SCRUM-Japan MONSTAR-SCREEN

善浪 佑理
• A multi-institutional observational study evaluating the incidence and the clinicopathological characteristics of NeoRAS wild-type metastatic colorectal cancer
• Safety and short-term efficacy of preoperative FLOT therapy in patients with resectable esophageal squamous cell carcinoma

廣瀬 俊晴
• Safety of adjuvant nivolumab therapy after neoadjuvant docetaxel plus cisplatin, 5-FU therapy for locally advanced esophageal squamous cell carcinoma