福地 剛英先生の論文が掲載されました.
食道扁平上皮癌(ESCC)罹患患者のイメージは,‘’飲酒・喫煙歴のある男性で内視鏡所見でまだら不染(LVL)が目立つ‘’ですが,ごくまれに‘’飲酒・喫煙歴も一切なく,LVLも全く見当たらない女性の患者‘’を見かけます.
このclinical questionから出発し,対象患者や病変の臨床病理学的特徴をまとめていくうちにGERDがESCCの発癌に強く関与している可能性があるということがわかりました.
GERD由来の発癌として食道腺癌や咽喉頭癌は従来多くの報告がありますが,ESCCに関しては実はほとんど報告がありません.内視鏡所見も比較的特徴的な所見ですので是非ご覧いただければと思います.さらにESD検体を用いて特殊な変異がないか次世代シーケンサーで遺伝子変異解析を行いました.
本研究を形にするのに非常に膨大な時間と労力を要しましたが,この経験は間違いなく自分の大きな財産になったと思います.
本研究の遂行に際しご懇切なご指導賜りました前田愼先生,平澤欣吾先生,本当に長い研究期間でしたがありがとうございました.また病理評価のご指導をいただきました立石陽子先生,稲山嘉明先生,市民総合医療センター病理部技師の皆様,遺伝子解析にご尽力いただきました芝田渉先生,データ集積を手伝っていただきました江口晃平先生をはじめとした皆様に厚く御礼申し上げます.
最後に,私にとって本研究で最も難関であった遺伝子解析におきまして,当教室所属で市民総合医療センターがんゲノム診療科にてご活躍中の杉森慎先生には免疫染色や遺伝子解析の工程すべてにおいて,その圧倒的な知識と技術でご尽力賜りましたこと心より感謝申し上げます.(福地)