J-POCKEYS

J-POCKEYS(Japan - Point Of Care Know-how for Emergency Sonography)は当教室で開発した救急超音波検査のトレーニングコースです。

昨今注目を浴びているポイントオブケア超音波検査(POCUS)ですが、本コースでは、POCUSの「テクニック」を学ぶのではなく、救急診療の中でPOCUSをいかに利用し、適切な判断を下せるようになるかの「ノウハウ」を習得することを目的としています。

この度、第13回 僻地・地域医療学会(https://www.jadecom.or.jp/hekichi2019/)にて、J-POCKEYSミニコースを開催させていただく機会を得ましたので、ご興味のある方は是非とも会場に足を運んでいただけますと幸いです。


(コース概要)
第13回 へき地・地域医療学会 
日時  2019/6/29  教育セッション 15:10~18:20 
場所  海運ビル 東京都千代田区平河町2-6-4 海運ビル
 
参加につきましては、下記学会事務局までご連絡ください。

公益社団法人地域医療振興協会 研究所事務部
〒102-0093  東京都千代田区平河町2-6-3 都道府県会館15階
TEL     03-5212-9152
FAX     03-5211-0515
Email   hekichi@jadecom.or.jp

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横浜市南消防署主催テロ災害合同訓練
  この度11月28日に南署との合同訓練が実施されました。南消防署主催のもと、南警察署、南消防団、機動特殊災害対応隊、鳥が丘大型除染隊と市大センター病院が参加しました。本訓練の想定は、犯人が化学剤(塩素)を飲食店で散布し傷病者が10名発生というものでした。災害対応隊が出場し現場で除染を行い、トリアージをして医療機関へ搬送するというものでした。
 
 今回はメディカルディレクターが出場し、現場医療の指揮をとり、その指示のもと活動しました。また、初の試みとしてウォームゾーンへ医師2名がレベルCの化学防護服を着装し、進入しました。ウォームゾーン内で呼吸停止の傷病者に対して気管挿管を行い、その後除染を行なっております。
 
 レベルCの化学防護服を着装しての会話や挿管行為は困難であり、あらかじめハンドサインを決めておいたり、筆談できる用意があると有用と感じました。挿管はできそうですがテープでの固定や包装を開けるなど細かい作業が困難でした。
 
 今回は医師が現場に出場し、さらにウォームゾーンまで進入しました。しかし医師は現場での活動に不慣れです。本来であれば医療機関で搬送される傷病者対応を行うべきとの意見もあります。現行法では心肺停止以外の傷病者への薬剤投与、気管挿管は医師のみしか行うことができません。現場での重傷者を救命するためには、医師以外の職種、特に現場活動に慣れている救急救命士による薬剤投与、気管挿管が必要となり、そのためには法改正が必要となると思われます。
  
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 国民保護訓練

 2019年3月9日、横浜スタジアムで実施された国民保護訓練に多くの教室員が参加しましたので、報告させて頂きます。
 
 国民保護訓練とはテロなどの武力攻撃事態が発生した場合に的確かつ迅速に国民保護の措置を実施するために行われる訓練であります。医療だけでなく、行政(国、神奈川県、横浜市)、消防、警察、海上保安庁、自衛隊など多機関合同訓練となっています。医療チームはオリンピックを想定した横浜スタジアムの会場内で爆発による多数傷病者発生というシナリオに参加致しました。その他に横浜港大さん橋国際客船ターミナルでの爆破事案、湘南台駅での化学剤散布事案と言うシナリオも同時に実施されており、同時多発テロへの対応訓練となっています。また横浜市立大学附属市民総合医療センター屋上へリポートから北里大学病院屋上ヘリポートへ横浜消防防災ヘリにて模擬患者搬送訓練もありました。
 
 このような大きな訓練の難しいところは、見せる訓練として時間通りにシナリオを進行するために実際の災害対応とは異なる設定や進行となってしまう点があります。今回の訓練はデモンストレーション的要素もあり、実際の災害対応とは異なる部分を理解して訓練を進行していく必要がありました。実際の災害対応と異なる点は、多数傷病者(総数200名、赤15名、黄15名想定)に対して市内の医療機関から多くの医療チームが現場投入された点です。これだけ多くの傷病者が発生すれば、特に現場近くの病院では病院内で傷病者に対応するために院外に人を出せない状況になるかと思います。今回の訓練では市内の9つの救命救急センターからYMAT、さらに3つの災害拠点病院からDMAT-Lの計12チームが現場に投入されました。竹内先生が現場本部長(Medical Director)となり、複数のロジ隊員も投入された医療本部も設置されました。観客席の爆破現場からスタジアム内に設置された救護所に傷病者が搬出される前にこれら医療チームが到着し各エリアに配置されました。おそらく本当の災害現場ではすでに多くの傷病者が運び出され、混乱した救護所に医療チームが1チームだけ到着して・・・。と言った状況でしょうから、かなり展開が違っています。これだけ豊富な医療チームがおりましたので、結果は、迅速に安定化のための現場治療が展開され、しっかりとした情報統制のもと搬送先と搬送手段が決まっていき、順次現場から患者が搬送されました。患者想定が曖昧な部分もありましたが、そこは救急医のアドリブ力で現場治療を進めることもできました。
 
 災害現場では多機関が顔を合わせて繰り返し、組織間の調整を行う必要があります。国民保護訓練では現地調整会議として定期的にミーティングを実施しました。このような多機関の連携調整する点では意義のある訓練でした。トリアージエリアでも医療チームと消防隊が連携し、多数傷病者へ迅速な対応が可能でした。
 
 今後、ラグビーワールドカップや東京オリンピック・パラリンピックと大規模スポーツイベントが続きます。これらのイベントは多数傷病者発生のリスクとなります。それに対する備えが必要となります。横浜市MC協議会では、多数傷病者事案発生時に現場投入されるMedial Director体制の整備や司令センターの指導医のアクションカード作成の検討などを進めており、当教室員の多くもこれらの活動に参画しております。

 
 
 
  
 
 
2019ラグビーワールド杯医療活動

 横浜市立大学救急医学教室では、2019年に日本で開催されているラグビーワールドカップにおきまして、横浜会場に医師を派遣しております。横浜市内の多数の医療機関、消防各所と連携し、救急医療の一端を担って活動しております。

今回のラグビーワールドカップのような国際的スポーツイベントは、多くの人々が集うイベント(マスギャザリング・イベント)として、多数の傷病者を発生するリスクを持っています。

当教室では、このようなマスギャザリングイベントにもスタッフを派遣し、会場で発生した傷病者への対応はもちろんのこと、多数傷病者発生時にいち早い対応を展開出来るよう対策をしております。

来年度には東京開催のオリンピックを迎えることとなります。横浜会場では当教室員の活動が予想され、各施設ではさらなる救急医療体制を整備して参ります。

 
  
 
 
  神奈川メディカルラリー2019

 2019年3月24日に聖マリアンナ大学西部病院で開催されました第17回神奈川メディカルラリーに参加しましたので報告いたします。
 
 ご存知の方も多いかと思いますが、メディカルラリーとは、医師、看護師、救急救命士など救急医療に携わる者が主に病院前救護における知識、技術を競う競技会であり、今回の形態としては各職種を含む6名以上10名以下を1チームとして行われました。内容としては、外傷、内因性疾患、心肺停止患者に対する心肺蘇生法、現場での安全確保の手順、トリアージなど多数傷病者への対応などをJPTECにならって実践し、それを採点するというものです。
 
 今回当科からは私と伊東裕史先生、脳外科長尾先生の3名が医師として出場し、当センターEICU Nurse 4名、横浜市消防局より3名の救命救急士の合計10名のチームで出場しました。救急救命士の方がメディカルラリー経験者で彼以外は初心者の集団です。南共済の松本潤先生、横須賀共済の土井先生も主催者側で参加されておりました。神奈川県の各市・施設をはじめ近傍から5チーム参加し、計14チームの参加でありました。運営側から用意されたシナリオは5 Stations+2 Service Stationsの7つのstationが用意されておりました。

 内容としては、1. 震災1日後に発生した交通事故現場での対応。傷病者3名。救急隊2隊限られた資機材・人数でのpreHosp2. 焼き鳥屋店内で発生した意識障害の対応と病院選定。傷病者3名。救急隊2隊。3. 高齢者入居施設内で発生した意識障害患者の対応。傷病者3名。救急隊2隊。(救急隊隊長は若手救急救命士限定)4. 自宅風呂場で発生した溺水および意識障害患者の対応と病院選定。傷病者3名。救急隊2隊(行為制限付き。隊長は医師限定)。5. 自動車の単独事故による運転手・助手席傷病者への対応。傷病者2+1名。救急隊1隊。inhosp 1隊助手席傷病者は妊娠34週で外傷による早期胎盤剥離の可能性を疑い診療しないといけない症例。SS1. 15分間の筆記試験。頭痛・痙攣・呼吸状態など選抜5名が問題を解くSS2. prehospで3分間で病歴聴取(1番手は医師限定)その後1分間で選抜された残りの5名で伝言ゲームをしていき、最終の人は指令を病院に伝える。

 以上の内容であります。それぞれ非常に凝ったシナリオであり、製作者の意図にすっかりハマってしまうこともありというような状況もありました。inhospとは異なり、救命士が普段中心となっているPrehospに関してはなかなか慣れていないということ、一体こういう場合にどう動けばいいのであろうと事前の練習(4回ほど)を始め、色々と勉強させていただきました。結果としては14チーム中10位と中途半端な成績でありましたが、今後もさらにトレーニングを行い、来年リベンジできるようチームで盛り上がっておりました。またSS2ではステージMVPもいただくことができました。今後もこういうメディカルラリーについては参加していこうと思います。ぜひ若手の医局員の皆さん、スタッフの皆さんも参加していただき、盛り上げていければなと思います。

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
  TICAD(アフリカ開発会議)医療班活動

 2019年8月28-30日 第7回アフリカ開発会議(TICAD)に医療班として参加いたしましたので報告をさせていただきます。当救急医学教室からは市大センター病院、済生会南部病院、横浜市立市民病院から医師、看護師を派遣しました。

 アフリカ開発会議(TICAD)は、冷戦後先進国のアフリカ開発への関心が薄れる中、日本が先立ってアフリカ開発に対する支援を行った証であり、参加者は4500人以上、日本・アフリカならびに周辺国の首脳クラスが横浜に集まります。

 今回我々に与えられたミッションは、①要人に対する救急対応、②会場における救護対応(救護室運営)でした。①、②を行うにあたり、医療がないところに医療を立ち上げる(医療本部設置)ため、災害時と同様にCSCATTTに基づき活動しました。

Command:TICADは外務省と横浜市が運営・企画しており、医療本部のカウンターパートは、横浜市医療局と国際局、そして横浜消防でした。医療班会場到着後、各部署に挨拶をし、組織図を作成しました。そして準備いただいた部屋にて、医療本部機能ならびに要人救急対応スペースを立ち上げました。

Safety:災害ではないため、現場の安全は保たれておりましたが、コンゴ民主共和国でのエボラ出血熱のアウトブレイクがあり、疑い患者の対応について課題がありました。①については事前に情報が入るため対応可能(隔離)でしたが、②においては、直接訪室する場合もあり、飛沫感染を回避するための距離をとったレイアウト等で対応しました。

Communication:前述の組織図をもとに、各部署との連絡方法を確立しました。災害ではないため、携帯電話が利用でき、携帯電話を複数所有することで輻輳にも対応できるようにしました(無線の用意もあり)。要人救護が必要な場合は、要人に帯同する外務省リエゾンから医療局、そして医療本部、さらには待機救急隊へ連絡が入るように調整しました。

Assessment:有事の際には、上記外務省リエゾンから状態聴取可能なため、状態に応じて医師の現場派遣か、医療本部への搬送かを判断することとしました。ここで浮上した課題は、今回のような首脳が集まる国際会議ではセキュリティーが厳しく、有事の際に医師が現場に行く際にもセキュリティーの問題があるということでした。各部署との調整により対応できましたが、このような課題は国際会議ならではと学びました。

Triage・Treatment・Transportについては、災害、多数傷病事案ではないため、現場待機医師によるトリアージ、可能な範囲の治療を行い、必要があれば病院へ救急搬送という形にしました。要人であるため、プライバシーにも配慮し、搬送経路も事前確認し、有事に備えました。また速やかな病院搬送が行えるように、事前に指定医療機関を決めておりました(一般救急は市大センター病院、エボラ疑いなどの感染症は横浜市立市民病院)。

 今回、医療のないところに医療(特に救急医療)を立ち上げるという大変さを経験し、また国際会議における課題(輸入感染症、セキュリティー、要人対応)についての気づきもありました。次々に挙がる想定外の課題もありましたが、定時的な情報共有を各部署間と行い、微調整を繰り返し行うことで、対応できることも学びました。

横浜において、今後ラグビーワールドカップや東京オリンピック・パラリンピックと国際的な大規模スポーツイベントが予定されています。当教室が医療班として介入する予定であり、今回の活動で得た知見を生かし、準備していく次第です。

 
 
 
 
  
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

 

厚生労働省補助金事業令和元年度外傷外科医養成研修

2020/1/13 第9回ASSETコース(於:千葉大学アナトミーラボ)
2020/2/16 外傷外科講習会(於:日本外科学会事務局)
 
 両日開催されました厚生労働省補助金事業「令和元年度外傷外科医養成研修」に当教室から小川医師、川村医師、当院外科から出向されております高橋航医師が参加し、外傷外科医としての技術を学びました。
 
 ASSET(Advanced Surgical Skills for Exposure in Trauma)は、Cadaverを使用させていただきました外傷外科を学ぶコースであります。

 東京でオリンピックや大規模な会合が行われることが決まっており、テロや大規模災害を想定したその対応できる外傷外科医を要請するということで外科学会・厚労省が主導として開催されました。

 8組16名×2グループ(医師・看護師ペア)、インストラクターで2体のCadaverで、プログラムは17 casesあり、全身全ての血管・臓器を実際に観察し、外傷時の対応・テクニックを教えて頂きながら代わる代わるCaseを通じて手技を勉強していくというものでありました。教科書的には机上の勉強でもわかりますが、実際にやってみると非常にむすかしいと思うことが多かったもので、今回コースでCadeverで勉強をさせていただくことで非常にわかりやすく、実際の手技について様々なものを学ぶことができました。
 
 また、外傷外科机上研修に関しては、症例提示とともに、その症例に対するアプローチをグループで討論し、その戦略を立てていくというロールプレイを行いました。
日常診療において施設によっては経験することが少ない症例に対して非常に多くのことを学ぶことができました。
 
「令和元年度外傷外科医養成研修事業 研修修了者の一覧」

 
 両日の研修参加において外傷外科に関する知識が深まり、さらに国主導で行われ使命感も非常に上がったのも事実です。極力そういう外傷が発生しないということが一番でありますが、今回のコースにおいて学んだことはすぐにでも日常診療に役立つであろうと思います。

 今後横浜市大救急医学教室として臨床にぜひ生かし、またこのような研修に参加し、高度外傷センターとして精進・発展していきたいと思います。 

 救急・産科・消防局合同産科救急勉強会


 2019年11月19日に横浜市南区総合庁舎において消防局と合同で救急隊員に向けた勉強会を開催しましたので報告させていただきます。
この勉強会は、共に横浜地域の救急を支えるメンバーである救急隊に医師の立場からの情報提供を行うとともに、消防からも意見を吸収してよりよい救急システム作りを目指す試みです。
 
 今回のテーマは「産科救急」で、消防からは50名弱の熱心な参加者が集い盛況な会となりました。当医局からは竹内主任教授、谷口隼人医師が参加し、横浜市立大学付属市民総合医療センター 周産期母子医療センターから榎本先生が参加されました。
まず谷口医師から医師と消防との「共通言語の確立」のための基調講演を行い、「妊産婦死亡をゼロにする」ために産科危機的出血の際の高次医療機関への早急な転院の重要性が確認されました。続いて参加者に意見を募り、妊産婦の搬送で難渋した症例をもとに竹内本部長、榎本先生を交えて今後の消防活動、救急活動やメディカルコントロールにむけて活発な意見交換がなされました。
 
 榎本先生からの産褥期の救急の特徴、墜落分娩症例の対応について講義ののち、シナリオをもとに実際に3人一組とした救急隊が妊産婦対応についてシミュレーション学習を行いました。最後にモデルを利用した分娩介助の実習を行い、勉強会は終了となりました。救急隊からも症例の少ない妊産婦の搬送について実際の対応がイメージできたと大変好評でした。
 
 地域の救急医療を支えるという救急医の業務は院内での診療のみで完結できません。傷病者が出たときにいかにスムーズに病院搬送まで繋いでいくかのシステム作りを行っていくのも救急医のミッションとなります。そのため今回の勉強会のように当医局では院内での日常診療だけでなく、消防などの他組織との合同での活動も盛んに行っています。
 
 

 
 
 
  
 
  
 
高度救命・総合周産期センター合同産科救急症例の合同カンファランス

 横浜市立大学附属市民総合医療センター高度救命救急センターでは、総合周産期母子医療センターと協力して、危機的産科症例に対応しています。産褥コールと名付けたプロトコールを運用して、初療から止血対応にかけて協力体制を敷いています。
 
 12月23日に当センターのカンファランスルームにて、今年度の産褥コールの運用の振り返りと今後について、症例発表を踏まえた議論を行いました。
 
 救命センタースタッフ、母子医療センタースタッフ、看護師、研修医が40名を超えて集まり、活発な討論を行いました。
 
 当院周辺の医療施設に対して、危機的産科出血の症例はできるだけ早く当センターへ送っていただけるよう働きかける取り組みの紹介や、産科出血症例へのREBOAの有用性、ドクターカーによる早期介入の可能性について検討致しました。
 
 今後も、総合周産期母子医療センターと顔の見える関係を礎に、産科救急症例に対するより良い体制の構築を進めて参ります。

 
 
 
 
 
  
 
当教室主管:関東ECMOネットワーク懇話会

 2019年12月7日に当教室が主管となり、横浜市立大学附属市民総合医療センターにて関東ECMOネットワーク懇話会2019・冬が開催されました。
 
 テーマはECMOと多職種連携と致しました。
 
 関東を中心に日本各地から医師、看護師、臨床工学技師を中心に100名を超える参加をいただきました。発表は、症例報告からECMO管理のTips、広域搬送、ECMOの診療報酬についてなど多岐に渡りました。ECMOに携わる全国の先生にお越しいただき、盛況かつ好評を頂いて会を終えることができたと考えております。
 
 今回の研究会の特徴として、企業からの協力を仰がず、当教室員と当院コメディカルスタッフによる手作りの会としたことが挙げられます。
 
 
 今回の研究会で得られたことを生かし、今後も神奈川県のECMO集約化施設として横浜市大に期待される役割を果たして参ります。

 
  
 
 
 
 
外傷対応シュミレーション(Trauma Simulation)

トラウマコール(外傷対応)シュミレーションを行いましたので、ご報告させて頂きます。
本シュミレーションは、外傷診療の流れを新規スタッフ、研修医、各部門コメディカル(看護師、輸血部、放射線部他)に周知する目的で行われました。
 
外来担当医長 谷口医師による本シュミレーションの目標の説明から始まり、その後スタッフ、専攻医、研修医が演者として参加し、骨盤骨折の診療を、輸血・挿管管理・シース挿入といった物品を実際に使用しながら進行しました。
医師側は台本があり、それに沿って進行していましたが、看護師・放射線技師は台本や流れを伝えずその場・その瞬間での対応を求められる訓練であったため、よりその場でのシュミレーションの意味合いを強くしていたようでした。
 
個人的な感想になりますが、医療資源・体制が整っている環境でそれらを充分に活用していくためには、各部門間での共通言語でのコミュニケーションや、治療の方向性の共有が重要であることをあらためて実感致しました。
 
また、その後参加した輸血部の方と話す機会がありましたが、電話連絡を受けてからの流れがより具体的に想起できるようになったとの感想を頂きました。
 
今クールの研修医も、整形外科や外科志望が多いこともあり、興味を持って参加している研修医が多く、JATECを周知する良い契機にもなったと思われます。
 
シュミレーション後、輸血部から「異型輸血で血液がどのように変化するか」のデモンストレーションもあり、実りの多いシュミレーションとなりました。
 
お忙しい中、今回のシュミレーションに参加して頂いた方々に感謝いたします。
 
本年上半期後半には腹部外傷についてのシュミレーションを予定しております。
 
当教室では、臨床にすぐに実践できるよう、何時でも外傷患者および重症患者対応できるようチームとしての教育・シュミレーションも日頃から行なっております。

 
 
 
 
 
 
厚生労働省ECMOチーム等育成研修事業

  厚生労働省の委託事業であるECMOチーム等養成研修事業を本日、市大センター病院にて開催致しました。
  本研修は厚生労働省からECMOnetが委託を受け、伏臥位療法とVV-ECMOを用いたARDSの治療戦略について1日かけて研修を行うものです。都道府県別に開催されており、神奈川県の研修を当院で行いました。
  
  8施設から32名の受講生が参加し、インストラクターとして横浜市大、千葉大、筑波大の医師、看護師、臨床工学技士に参加していただきました。医局の関連施設からは横須賀共済病院よりご参加いただいております。
  午前中は座学中心に伏臥位療法の実習を行い、午後は症例を用いたシュミレーションとECMOカテーテルを用いたウォータードリルを行いました。
  昼休みには当院のECMO carの案内も行うことができ、存在を認知していただく機会となったと思います。
  写真の通り、万が一にも濃厚接触者を発生させないという観点から、フェイスシールドやマスク、手指消毒を徹底した中での開催となりました。これらの対策は今後も十分に検討しなければならないと考えます。
  受講施設の中にはCOVID-19症例に対するVV-ECMOを複数例経験している施設もあり、各施設の伏臥位療法のやり方や、ECMO導入の経験、カニュレーション時の細かな注意など、研修の中に様々な意見交換が生まれ、インストラクター側としても勉強になる、良い機会となりました。
  今回の経験を生かし、神奈川での第2回開催、あるいは他県でのインストラクションに貢献できればと考えております。
  現状のようなコロナ禍でありながら、感染予防に配慮し、今後も医療全体のレベルアップのため実践・教育の中心となり活動していく所存です。

 
 
 
  
 
 
銃創患者対応シュミレーション
センター病院重症外傷センター

横浜市立大学附属市民総合医療センター高度救命救急センターは、県内でも2ヶ所しかない高度救命救急センターの機能を有しており重症外傷センターにも指定されている。
銃撃事件やテロ災害が発生した際には優先的に重症患者を受け入れ、同時に地域全体の医療体制を統括する役割を担っているため当院に勤務するスタッフは銃創患者に対する対応が求められている。
今回横浜市立大学附属市民総合医療センター高度救命救急センターにおいて、銃創患者対応シュミレーションを行なったので報告いたします。


現在、世界でのテロの件数は年間17000件を超えているが(2014年)、国内での大規模なテロに関しては30年程度発生していない。
本邦での銃創患者発生件数は非常に少なく年間10 -20件程度である。
近年では要人の銃撃事件による死傷事件も発生しているが本邦での診療数の少なさから経験を有する医療者は数が少なく診療体制の整備は急務である。
 
横浜でも数年ごとにTICAD(アフリカ開発会議)が開催され世界の首脳が横浜に集まる機会がある。またG7先進国サミットにおいて首脳やその配偶者が国際観光都市横浜を訪れる機会も多く必然的にこれらを狙ったテロなどの危険性を熟慮する必要がある。
 
2020年に開催されたオリンピックでは幸いテロによる傷病者の発生はなかったが開催前に平成29年厚生労働合成推進調査事業により「2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会に向けての救急・災害医療体制の構築に関する研究」により銃創・爆傷患者の診療指針が示されている。
 
 

 
  

上記を鑑みて診療マニュアルを整え多職種参加での講義+シミュレーションを開催した。
銃創患者の特殊性としては鋭的外傷の一形態として診療を行う必要がある点、体幹部外傷では手術となる可能性が高く手術室の搬入が遅れると患者予後が大幅に悪化する点などが示された。
 
また四肢での銃創患者でのターニケット使用方法や留意点に関して・・・・
シミュレーションでは四肢・体幹部での銃創患者の搬入と実際の診療に関して多職種で共有し課題として多数傷病者発生時の診療に関して人的資材の確保や医療資源の配分に関して活発に討論があった。
 
テロなどの多数傷病者事案においては重症者受け入れ、院内緊急手術と同時に地域全体の医療統括が求められる。
具体的には、第一陣としてドクターカーやYMATとして先遣隊として現場に入り、その後にMD(メディカルディレクター:現場の医療を統括する医師)を派遣する。MDは横浜消防とともに市内、市外の受け入れ病院やDMAT、行政とも連携を図りながら状況に応じて搬送先病院確保、搬送手段を確保し優先順位を常に意識しながら事態の早期収束をはかる。
 
外傷多数傷病者発生時の訓練に関しても院内で企画していく予定である。

 
 
令和4年度神奈川DMATーL研修報告

2023年2月24日,25日に開催されました令和4年度DMAT-L研修に教室員が参加いたしました。いつ何時起こるかもしれない大規模災害に対して研修に参加し、自己研鑽をしております。以下参加者の報告です。


<専攻医>
この度2023/2/24-25にかけて神奈川DMAT-L隊員養成研修を受講いたしましたので報告させていただきます。

研修の流れとしては1日目にトランシーバーの使い方や講義を受けながらの机上演習、災害時情報ツールであるEMISの入力、実習として一次・二次トリアージ、診療手順について研修いたしました。2日目には筆記試験、実技演習を行い、学んだ知識や診療法をアウトプットする場となりました。

机上演習については他病院との合同チーム、多職種での活発なディスカッションが行われ、実際に災害が起きた時にどのような流れでどのようにDMATが活動するか、診療以外の重要な点について学ぶことができました。このような内容については普段の診療で経験できるものではなく、座学・独学ではなかなか使える知識にはなりにくい分野かと思います。

また実習で行ったトリアージ、診療手順についてはJATECの診療を基本とし、その中で災害で注意すべき点を盛り込んだ内容となりました。いかに短時間でトリアージを行い、治療を優先されるべき患者に限られた医療資源のなかで救命するか。また限られた検査のなかで速やかに介入すべき外傷疾患の評価を行うか、改めて外傷診療の必要性を痛感いたしました。災害現場に出向いた際に普段病院で行っているような診療を平常心で行うことは難しいと思います。だからこそ普段の診療のなかで迅速かつ的確な判断をするという点について、意識しながら診療を行う必要があると再認識いたしました。
 
<専攻医>
トリアージや救護所での診療では、頭では分かったつもりでも、実際にやってみると混乱する場面が多々ありました。
一度やっただけでは不十分で、繰り返すことが必要であると改めて感じました。
EMISの入力やトランシーバーでの通信など、実際に経験できたことも新鮮でした。

講義ではDMATとしての活動だけでなく、病院が被災した時の対応についても学びました。災害はいつ起こるか分かりません。
私たちは災害拠点病院で働いており、災害拠点病院は災害時に医療救護活動の中心的な役割を担うことを求められます。
実際に災害が起こった時の対応を、ディスカッションを交えながら具体的に考えることで理解を深めることができました。
また普段からの準備が大切であると改めて実感しました。
 
<専攻医>
災害現場での診療シミュレーションでは普段の病院ではなく医療資源の限られた救護施設での診療をいかに効率よく行うか、後方搬送する患者の優先順位をつけることの難しさを感じました。また、自分がDMATとして被災地へ向かう想定だけでなく、自分の住んでいる地域が被災した場合のDMATの役割など、普段から気にかけていなければスムーズに対応することが困難であることを学ぶことができました。
研修を通じて講師の方々が強調されていたことは、CSCATTTの重要性でした。災害時医療に携わる機会がなかった自分としてはその重要性を再確認する機会となりました。

 
<スタッフ>
トリアージや診療手順は普段の診療で行っていることを基本としつつも、検査ができない災害時特有の観察すべき事項を学び、複数の患者がいる中での重症度と緊急度の判断、過不足ない安定化の処置、またその後搬送する患者の優先度を決定していくことの難しさを痛感しました。
また災害拠点病院として災害時に院内の体制をどのように確立していくか、病院の機能を維持するための確認すべき事項についても、机上演習で系統だって学ぶことができました。
DMAT-Lとしては被災地に向かうことばかり想定していましたが、自身の地域が被災した場合、災害診療を学んだ者として自病院の診療の要となって動かなければいけないこと、また状況によっては院内DMATとして他のDMATと病院の架け橋となる必要性があることも再認識いたしました。普段の診療において災害を想定することは難しいですが、本研修を通して自身の中でより具体的なものにできたと思います。
 
<スタッフ>
実際に、近隣県で災害が生じた時、遠方で災害が生じた時、自分には何ができるか?今までは「災害起こっているな」としか思っていなかったかもしれません。しかし、それが自施設で災害が生じた時に自分が動けるだろうか?と考えたこと恐らく皆さんあると思います。

私は、高校時代に関西淡路大震災を経験し、医師10年目の時に東日本大震災を病院の古い作りの病院の10階で新大学1年生80名に胸腔鏡の指導をしている際に経験しました。関西淡路大震災の際、センター試験の翌日に阪神高速が倒壊し、火災で大変なことになっている神戸の街を見て衝撃を受けたことを今でも覚えています。
東日本大震災の際には、医師でありながら災害医療のことを何もわからず、「現地に行っても何もできないよな」と災害医療の基本を知らないことに悔しい思いをしました。


2020年コロナの上陸と共に、「ほぼ災害」という状況で3年間なんとなく行ってきた平時とは異なる「災害医療」の基礎となる、CSCAの概念およびそれに続くTTTに関して今回の研修会では学ぶことができました。「点」であったものが「線」となり、関連機関および近隣機関と協力することで「面」となる。まさに当教室のコンセプトであると再認識しました。
災害医療はなにが起こるかわからない中で、どんなことを想定し、限られた人材・限られた資機材でどのように立ち回るのか、最終的な正解があとでないとわからないところで、「災害モード」として系統的・論理的に考えて最適な道を選択するという考え方を学ぶことができました。


今までに外傷診療に関するJATEC、病院災害に関するHMIMMS、警察や機動隊も参加されるMCLSなど災害医療を学ぶ目的も含め受講してきましたが、それぞれ少しずつ異なるところがありますが、それぞれの立場の考え方を学ぶことができ、自分の災害医療に対する知識の向上にそれぞれの研修が非常に役に立ち、また職種が変わると考え方も色々とあるということがわかります。


この基本を知ることで、平時の際にも災害時に備えるにはという考えが生まれてくるのであろうと思います。これは日常診療にももちろん通じるところであり、いい影響を与えると感じます。いつ何時自然災害を始め、被災する可能性を秘めている中でこれらの知識を持っているのと、持っていないところでは違います。実際に災害が自施設で起こった際の災害本部の立ち上げ、アクションカードに基づいた行動、BCP作成についても内容を理解し、どんなことを想起し、どのようなことを解決していくのか。時事刻々と変化する災害現場でどのように立ち回るのか。今回の講習会では数多くのトレーニングを経験することができました。が、まだまだ足りない、もっと実地訓練がしたいと思いました。

 
神奈川はビッグレスキューなど大規模災害訓練が行われており、今後このような訓練にもどんどん参加していきたいと思います。
また今回は外傷系のトレーニングとトリアージが多かったですが、CBRNEに関する災害訓練等々にも参加したいと思います。


 神奈川県でもいつまた災害が発災するかわかりません。「その時」に動ける人材育成も我々横浜市大救急医学教室の使命の一つです。このような大規模実働訓練の反省を生かしてよりより体制整備に尽力してまいります。
 重症患者の治療に加えて「災害医療」に興味がある若手医師の皆様、お気軽に横浜市大救急医学教室までお問い合わせください。