国際交流 2019.09.03
TICADの医療救護班に参加しました。
アフリカ開発会議に横浜市立大学救急医学教室が医療班として参加しました。以下谷口D助教の報告です。
2019年8月28-30日 第7回アフリカ開発会議(TICAD)に医療班として参加いたしましたので報告をさせていただきます。当救急医学教室からは市大センター病院、済生会南部病院、横浜市立市民病院から医師、看護師を派遣しました。
アフリカ開発会議(TICAD)は、冷戦後先進国のアフリカ開発への関心が薄れる中、日本が先立ってアフリカ開発に対する支援を行った証であり、参加者は4500人以上、日本・アフリカならびに周辺国の首脳クラスが横浜に集まります。
今回我々に与えられたミッションは、①要人に対する救急対応、②会場における救護対応(救護室運営)でした。①、②を行うにあたり、医療がないところに医療を立ち上げる(医療本部設置)ため、災害時と同様にCSCATTTに基づき活動しました。
Command:TICADは外務省と横浜市が運営・企画しており、医療本部のカウンターパートは、横浜市医療局と国際局、そして横浜消防でした。医療班会場到着後、各部署に挨拶をし、組織図を作成しました。そして準備いただいた部屋にて、医療本部機能ならびに要人救急対応スペースを立ち上げました。
Safety:災害ではないため、現場の安全は保たれておりましたが、コンゴ民主共和国でのエボラ出血熱のアウトブレイクがあり、疑い患者の対応について課題がありました。①については事前に情報が入るため対応可能(隔離)でしたが、②においては、直接訪室する場合もあり、飛沫感染を回避するための距離をとったレイアウト等で対応しました。
Communication:前述の組織図をもとに、各部署との連絡方法を確立しました。災害ではないため、携帯電話が利用でき、携帯電話を複数所有することで輻輳にも対応できるようにしました(無線の用意もあり)。要人救護が必要な場合は、要人に帯同する外務省リエゾンから医療局、そして医療本部、さらには待機救急隊へ連絡が入るように調整しました。
Assessment:有事の際には、上記外務省リエゾンから状態聴取可能なため、状態に応じて医師の現場派遣か、医療本部への搬送かを判断することとしました。ここで浮上した課題は、今回のような首脳が集まる国際会議ではセキュリティーが厳しく、有事の際に医師が現場に行く際にもセキュリティーの問題があるということでした。各部署との調整により対応できましたが、このような課題は国際会議ならではと学びました。
Triage・Treatment・Transportについては、災害、多数傷病事案ではないため、現場待機医師によるトリアージ、可能な範囲の治療を行い、必要があれば病院へ救急搬送という形にしました。要人であるため、プライバシーにも配慮し、搬送経路も事前確認し、有事に備えました。また速やかな病院搬送が行えるように、事前に指定医療機関を決めておりました(一般救急は市大センター病院、エボラ疑いなどの感染症は横浜市立市民病院)。
今回、医療のないところに医療(特に救急医療)を立ち上げるという大変さを経験し、また国際会議における課題(輸入感染症、セキュリティー、要人対応)についての気づきもありました。次々に挙がる想定外の課題もありましたが、定時的な情報共有を各部署間と行い、微調整を繰り返し行うことで、対応できることも学びました。
横浜において、今後ラグビーワールドカップや東京オリンピック・パラリンピックと国際的な大規模スポーツイベントが予定されています。当教室が医療班として介入する予定であり、今回の活動で得た知見を生かし、準備していく次第です。