活動報告

   参加報告  2019.3.9
 

国民保護訓練が実施されました。

横浜市で国民保護訓練が実施され、当教室から複数の医師が訓練に参加しました。以下、参加した教室員からの報告です。


 39日、横浜スタジアムで実施された国民保護訓練に多くの教室員が参加しましたので、報告させて頂きます。
 
 国民保護訓練とはテロなどの武力攻撃事態が発生した場合に的確かつ迅速に国民保護の措置を実施するために行われる訓練であります。医療だけでなく、行政(国、神奈川県、横浜市)、消防、警察、海上保安庁、自衛隊など多機関合同訓練となっています。医療チームはオリンピックを想定した横浜スタジアムの会場内で爆発による多数傷病者発生というシナリオに参加致しました。その他に横浜港大さん橋国際客船ターミナルでの爆破事案、湘南台駅での化学剤散布事案と言うシナリオも同時に実施されており、同時多発テロへの対応訓練となっています。また横浜市立大学附属市民総合医療センター屋上へリポートから北里大学病院屋上ヘリポートへ横浜消防防災ヘリにて模擬患者搬送訓練もありました。
 
 このような大きな訓練の難しいところは、見せる訓練として時間通りにシナリオを進行するために実際の災害対応とは異なる設定や進行となってしまう点があります。今回の訓練はデモンストレーション的要素もあり、実際の災害対応とは異なる部分を理解して訓練を進行していく必要がありました。実際の災害対応と異なる点は、多数傷病者(総数200名、赤15名、黄15名想定)に対して市内の医療機関から多くの医療チームが現場投入された点です。これだけ多くの傷病者が発生すれば、特に現場近くの病院では病院内で傷病者に対応するために院外に人を出せない状況になるかと思います。今回の訓練では市内の9つの救命救急センターからYMAT、さらに3つの災害拠点病院からDMAT-Lの計12チームが現場に投入されました。竹内先生が現場本部長(Medical Director)となり、複数のロジ隊員も投入された医療本部も設置されました。観客席の爆破現場からスタジアム内に設置された救護所に傷病者が搬出される前にこれら医療チームが到着し各エリアに配置されました。おそらく本当の災害現場ではすでに多くの傷病者が運び出され、混乱した救護所に医療チームが1チームだけ到着して・・・。と言った状況でしょうから、かなり展開が違っています。これだけ豊富な医療チームがおりましたので、結果は、迅速に安定化のための現場治療が展開され、しっかりとした情報統制のもと搬送先と搬送手段が決まっていき、順次現場から患者が搬送されました。患者想定が曖昧な部分もありましたが、そこは救急医のアドリブ力で現場治療を進めることもできました。
 
 災害現場では多機関が顔を合わせて繰り返し、組織間の調整を行う必要があります。国民保護訓練では現地調整会議として定期的にミーティングを実施しました。このような多機関の連携調整する点では意義のある訓練でした。トリアージエリアでも医療チームと消防隊が連携し、多数傷病者へ迅速な対応が可能でした。
 
 今後、ラグビーワールドカップや東京オリンピック・パラリンピックと大規模スポーツイベントが続きます。これらのイベントは多数傷病者発生のリスクとなります。それに対する備えが必要となります。横浜市MC協議会では、多数傷病者事案発生時に現場投入されるMedial Director体制の整備や司令センターの指導医のアクションカード作成の検討などを進めており、当教室員の多くもこれらの活動に参画しております。