活動報告 2023.2.21
報告ー銃創患者対応シュミレーションー
横浜市立大学附属市民総合医療センター高度救命救急センターは、県内でも2ヶ所しかない高度救命救急センターの機能を有しており重症外傷センターにも指定されている。
銃撃事件やテロ災害が発生した際には優先的に重症患者を受け入れ、同時に地域全体の医療体制を統括する役割を担っているため当院に勤務するスタッフは銃創患者に対する対応が求められている。
今回横浜市立大学附属市民総合医療センター高度救命救急センターにおいて、銃創患者対応シュミレーションを行なったので報告いたします。
現在、世界でのテロの件数は年間17000件を超えているが(2014年)、国内での大規模なテロに関しては30年程度発生していない。
本邦での銃創患者発生件数は非常に少なく年間10 -20件程度である。
近年では要人の銃撃事件による死傷事件も発生しているが本邦での診療数の少なさから経験を有する医療者は数が少なく診療体制の整備は急務である。
横浜でも数年ごとにTICAD(アフリカ開発会議)が開催され世界の首脳が横浜に集まる機会がある。またG7先進国サミットにおいて首脳やその配偶者が国際観光都市横浜を訪れる機会も多く必然的にこれらを狙ったテロなどの危険性を熟慮する必要がある。
2020年に開催されたオリンピックでは幸いテロによる傷病者の発生はなかったが開催前に平成29年厚生労働合成推進調査事業により「2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会に向けての救急・災害医療体制の構築に関する研究」により銃創・爆傷患者の診療指針が示されている。
上記を鑑みて診療マニュアルを整え多職種参加での講義+シミュレーションを開催した。
銃創患者の特殊性としては鋭的外傷の一形態として診療を行う必要がある点、体幹部外傷では手術となる可能性が高く手術室の搬入が遅れると患者予後が大幅に悪化する点などが示された。
また四肢での銃創患者でのターニケット使用方法や留意点に関して全体に周知した。
シミュレーションでは四肢・体幹部での銃創患者の搬入と実際の診療に関して多職種で共有し課題として多数傷病者発生時の診療に関して人的資材の確保や医療資源の配分に関して活発に討論があった。
テロなどの多数傷病者事案においては重症者受け入れ、院内緊急手術と同時に地域全体の医療統括が求められる。
具体的には、第一陣としてドクターカーやYMATとして先遣隊として現場に入り、その後にMD(メディカルディレクター:現場の医療を統括する医師)を派遣する。MDは横浜消防とともに市内、市外の受け入れ病院やDMAT、行政とも連携を図りながら状況に応じて搬送先病院確保、搬送手段を確保し優先順位を常に意識しながら事態の早期収束をはかる。
外傷多数傷病者発生時の訓練に関しても院内で企画していく予定である。