活動報告

  活動報告   2023.8.23
 

2023年度3例目ECMO Primary Transport

ー横浜市立大学附属市民総合医療センター高度救命救急センター:Primary ECMO Transport報告ー

 重症呼吸不全(予測死亡率50%以上)に対する体外式膜型人工肺(ECMO)施行例は、200-300万人の都市において年間10-12例程度の発症とされ、横浜市においては年間20-30例の発症が予想されます。
 重症呼吸不全に対するECMOは、本邦では一般的な循環不全に対するECMOに比べその管理期間が平均10日以上と長く、合併症も発生します。そのため、症例を経験するほど治療成績が上がると報告されており、COVID-19によりECMO症例が各施設ともに増えてきており、随分そのノウハウが確立されつつあります。

 重症呼吸不全に対するECMO導入に関して、現地でECMO導入を行い、管理施設に運ぶPrimary ECMO transport、管理施設に搬送したのちにECMOの導入を行うSecondary ECMO transporthが方法として挙げられます。COVID-19パンデミックにおいて、その両者を我々の教室ではECMO teamが中心となり数多く経験してきました。
 
今回、関連病院からの紹介で、本年度3例目のprimary ECMO transportがありましたのでご報告させていただきます。
症例は、50代後半の男性。呼吸困難を主訴に受診。その後急速な呼吸状態悪化により挿管、人工呼吸管理となりましたが、酸素化悪化、二酸化炭素貯留のために、センター病院へ連絡がありました。先遣隊での評価の後に、後発隊が合流し、VV-ECMOを導入し、ECMO transportとなっております。

横浜市大附属市民総合医療センターでは、連絡を受けた後は、まずすぐに先遣隊が紹介元に伺い、紹介元と一緒に患者を診察し、ECMOの適応を判断します。
その後、後発隊が資機材を積んだECMOカーで向かうシステムをとっております。
今回は早々に連絡をいただけたので、患者状態が大きく悪化する前に介入できました。
 
現在センター病院では先日の症例を含め重症呼吸不全・循環不全症例が数例おり、VAV-ECMO,VA-ECMO,VV-ECMOとバラエティに富んだECMOを診療しております。決して頻度が多いとは言えないECMO症例ですが、センター病院では、前回、今回のように関連施設からのご協力により集約して経験を積むことができます。
また、本年度は県単位の講習会はありませんが、センター病院独自のECMOシミュレーションも毎月開催しております。

 

 今後は横浜横須賀地域のみならず、神奈川県における重症呼吸不全センターとしての機能を担っていけるようECMO搬送体制をさらに充実させながら努力していきたいと思います。