国際交流 2024.3.25
横浜市立大学附属市民総合医療センター南医師が フランス・パリ公立病院連合(AP-HP)で研修を行いました
横浜市立大学は平成27年1月にフランス・パリ公立病院連合(AP-HP)、横浜市との3者で締結した臨床・研究・教育の協力関係の構築を目的とした覚書(MOU)に基づき、救急医療をはじめとした医療分野の連携や交流を進めてきました。平成28年度はMOU運営委員会が設置され、教職員・学生の派遣および視察の受入が実施されてきました。当教室は平成28年より毎年、教室員をパリに派遣し、現地の救急医療との交流を深めてきました。
新型コロナウイルスの世界的な蔓延で一時研修派遣は止まっていましたが、今回南医師がAP-HP, SAMUで研修を行ってきました。
この度フランス・パリのAP-HP(パリ公立病院連合)にて研修をおこなってまいりましたので報告いたします。
過去にも複数の教室員の先生方が研修をされており、私も同様にSAMU同乗によるプレホスピタル研修をおこなわせていただきました。
加えてNecker小児病院内の見学と地域中核病院であるLariboisiere病院およびEuropeen Georges Pompidou病院の救急部門を見学させていただいております。
SAMUはパリ市内のドクターカーシステムでAP-HPに所属する各病院に配置されていますが、私はNecker小児病院のPediatric SMURにて小児患者の対応を見学しました。
パリには中核的な小児病院が2つあり、そのひとつがNecker小児病院でした。印象的には日本の成育医療センターのような感じで専門的な小児診療および研究がおこなわれている病院です。
Necker SMURはパリ市内の小児救急事案やフランス国内の小児患者の転送事案に出動しています。私が研修中の出動は転院搬送の1例のみでありましたが、ドクターヘリ搬送を見ることができました。
出動の形態は横浜と似ており、司令センターの役割を担う組織が院内に配備されていました。出動する医師が直接救急案件の電話を確認したり、必要であれば電話相談を受けるシステムは合理的な印象でした。
また出動の合間に院内でおこなわれていたパリオリンピック・パラリンピックに向けての机上訓練を見学しました。
開催期間中にルーブル美術館でテロが起きた設定で、小児SAMUチームと成人SAMUチームが現場でのトリアージと患者搬送について合同で議論を行なっていました。昨今の世界情勢やパリという土地柄、実際にテロが起きる可能性が高く、非常に緊張感を持った訓練をされていました。さらに外傷のゴールデンアワーである1時間という時間を参加者が非常に意識しており、我々が普段行なっている災害訓練とはまた違った観点での訓練が非常に印象的でした。
Lariboisiere病院とEuropeen Georges Pompidou病院の救急部門見学では実際の2次、3次救急診療を見せていただき日本と似ている点、異なる点を再認識することができました。
Lariboisiere病院はパリ10区の割と治安の悪い地域に位置しており、救急部門のトリアージと患者診療の動線および防犯体制が整っており診療体制について勉強になりました。移民問題などの欧州ならではの話も聞け、さらに中毒センターということでパリ市内中から中毒症例が集まってくるということで興味深かったです。
今回3病院をまわらせていただきましたが、いずれの病院においても医療スタッフの方々がとても優しく、フランス語がわからない自分にとても気を遣ってくださり非常にありがたい限りでした。他国の医療システムを知ることはもちろんですが、現地の医師、スタッフの方々とコミュニケーションをとることで、同じような想いや尊敬すべき意思を持って医療をされており、自分を鼓舞するきっかけになりました。
当教室では、教室員の国内外の研修派遣や留学について本人の希望に添えるよう、世界で活躍できるように教室全体で応援していきます。