2020.11.01

痛みの定義が41年ぶりに改訂

2020年、痛みの定義が41年ぶりに改訂されました

2020年7月16日、国際疼痛学会(International Association for the Study of Pain:IASP)は1979年来、41年ぶりに『痛みの定義』の改訂1)を行いました。

https://www.iasp-pain.org/PublicationsNews/NewsDetail.aspx?ItemNumber=10475

「痛みのニュアンスと複雑さをより良く伝えるため、そしてそれが痛みを伴う人々の評価と管理の改善につながることを望んでいる」――IASPタスクフォースの議長で痛み研究ディレクターのスリニヴァサ・N・ラジャ(MD)は改定の理由をそう述べています。

今回の改定では

原文
An unpleasant sensory and emotional experience associated with, or resembling that associated with, actual or potential tissue damage.

和訳
「(痛みは、)実際の組織損傷もしくは組織損傷が起こりうる状態に付随する、あるいはそれに似た、感覚かつ情動の不快な体験」

と定義することで、組織損傷がなくとも起こりうる痛みの存在を明確にしました。

さらに痛みに関する『6項目の付記』のなかで、

● 痛みは常に個人的な経験であり、生物学的、心理的、社会的要因によって様々な程度で影響を受けます。
● 痛みと侵害受容は異なる現象です。 感覚ニューロンの活動だけから痛みの存在を推測することはできません。
● 個人は人生での経験を通じて、痛みの概念を学びます。

など、これまで注目されてこなかった痛みの複雑さについても言及しています。

このことについて、長年日本の慢性痛医療をけん引してきた柴田政彦氏(奈良学園大学保健医療学部教授)は、「痛みについて、よりはっきりと定義されたことは、日本の慢性痛医療にも大きな影響を与えるだろう。特に6項目が付記されたことは重要だ」と述べています。

これまで日本の痛み治療は、「組織の損傷」に囚われ、痛みの複雑さにあまり目を向けてきませんでした。今回の改定により、そうした現状が改善され、日本の慢性痛医療が進化することを期待します。

「&慢性痛」運営者

横浜市立大学附属市民総合医療センター ペインクリニック内科