FAQよくある質問・お問い合わせ

慢性痛の集学的治療を受けるにはどうしたらいいですか?
A.本サイトの「全国の慢性痛に詳しい医療機関(集学的痛み治療が受けられる病院)一覧」に掲載されている病院に連絡し、お住いの近くにある慢性痛治療に詳しい連携医療機関を紹介してもらってください。
「慢性痛」と「慢性疼痛(とうつう)」は何がちがうのですか?
意味は一緒ですが、専門医療機関では「慢性疼痛」と表記しているところが多いです。ただ一般的に疼痛という言葉はあまり知られていないため、本サイトでは認知度が高い「慢性痛」という言葉を採用しています。
そもそも「集学的治療」とはなんですか?
種々の領域の専門医をはじめ、理学療法士、作業療法士、公認心理士、薬剤師、看護師、栄養士、MSW(医療ソーシャルワーカー)といった複数の職種の医療者が協力して診療を行う治療法を集学的治療と呼びます。
慢性痛と思われる痛みで通院しています。処方される薬で注意したほうがいい薬はありますか?
一般的に薬は最少の種類を、最小の量で、最短期間服用するものです。ですから、長期(特に年単位)に処方されている薬は、本当に必要なものなのか、を注意するべきです。
なかでも、ベンゾジアゼピン系薬剤(睡眠薬、安定剤、鎮静薬などと呼ばれている)は慢性痛の治療には効果がほとんどなく(使う必要がない)、一般的にも長期に(数か月以上)処方するのは良くないとされています。また、非ステロイド系抗炎症薬(ロキソプロフェンなど)は、慢性痛にはあまり効果がない一方で、副作用(胃腸や腎臓への障害)が一般に考えられている以上に多いので要注意です。医療用麻薬(強オピオイド系鎮痛薬)も一部の慢性痛患者さんには有効ですが、長期間(6か月以上)連続使用するのは要注意です。その他、ステロイドも慢性痛治療にはほぼ意味がない一方でいろいろな副作用が出やすい薬です。筋弛緩薬も効果が少ない割には眠気ふらつきなどが意外と多い薬です。
詳しくは、「慢性の痛み講座 北原先生の痛み塾」の第9回以降をご覧ください。
https://www.youtube.com/channel/UCmpwIqPLM3h3XUPEDT7owrQからエントリーできます。
病院へ行く前に、まずは痛みについて相談したいです。どうしたらいいでしょう?
厚生労働省からの研究資金の援助を受けて「NPO 法人いたみ医学研究情報センター」というところが、痛みについての情報を提供や、一般の方からの電話相談を受け付けています。
参考 URL:http://www.pain-medres.info/
痛み相談窓口電話:0561-57-3000
(毎週月・水・木曜日 9 時~17 時 ※12 時半~13 時半を除く)
慢性の痛みで受診した病院で、手術を勧められましたが迷っています。どうしたらいいでしょう?
手術は緊急性がなければ、必ず納得してから受けるべきです。必要に応じてセカンドオピニオンを活用してください。今の日本で、セカンドオピニオンへの紹介を嫌がるような医療機関や医師は、むしろ信頼できないといっても良いでしょう。また、腰痛や足のしびれについては、腰の手術で劇的に良くなるとは限らないとされています。
アルコールは慢性痛によくないって本当ですか? 毎晩寝酒を飲んでいるのですが…
アルコールは神経に対して有害で、一定以上の量を長期間引用することで、認知症を含む脳への影響や、手足のしびれや痛みのような末梢神経への影響が出ることがあります。また、アルコール自体にカロリーがあるだけでなくおつまみとして食べるもののカロリーもあるので、体重が増えてしまい筋肉への負担となって痛みを起こし、さらには睡眠時無呼吸になることもあります。
寝酒にはさらにいろいろな問題があります。まず、アルコールには催眠作用はありますが、アルコールの代謝産物は覚醒作用があるので、かえって眠りが浅くなって睡眠の質を落とします。またアルコールには利尿作用もあるので、トイレやのどの渇きで頻回に起きるようになります。十分な休息をとれなければ、心身に疲れがたまり、痛みを強く感じることがあります。
認知症と慢性痛の関係について教えてください。
そもそも痛みとは、脳の認知によって起こる主観的な感覚です。すなわち、認知症のように脳の機能が正常ではない場合、通常の状態と同じように痛みを認知しているかが解りません。寂しい、悲しい、つらい、などの感情を「痛い」という言葉で表現していると思われる場合もあります。また、認知が衰えてくるといろいろなことにこだわる人が出てきますが、痛みという感覚にこだわって痛みを強く訴えていると思われる方もいます。
慢性痛は、「脳の火災(痛み)警報器の誤作動のようなもの」とはどういうことでしょう?
痛みを感じるシステムは火災報知機に例えると解りやすいです。火災報知機は、火があるときに警報が鳴り、火が無い時には警報が鳴らない、というのが本来の動作です。ところが、痛みを感じるシステムというこの火災報知機は、あまり精度が良くなく、100%の信頼がおけないのです。
急性の痛み(=警報)は、身体に傷や病気が起こっている(起ころうとしている)ことに対する重要な警告です。したがって、痛みシステム(火災報知器)は正常に動作しています。ところが、火があるときにも(例えば、癌のような命に関わるような病気があっても)警報が鳴らない(痛みが起きないため癌の発見が遅れる)場合があります。また、逆に、火(痛みの原因)が無くても、警報が鳴ってしまう(強い痛みが出る)場合もあります。そのような状態が、慢性痛です。
線維筋痛症と診断され、長年に渡って治療を受けてきたのに、最近になって「違う病気だった」と言われました。こういうことはよくあるのでしょうか?
線維筋痛症は「症状を説明する他の原因が見つからない」という条件が診断の基準に含まれています。この条件はあいまいで、診断した際には見つからなかった原因があとで見つかることもありますし、診断した医師の専門の領域外に原因があった場合には見逃されてしまうこともありえます。したがって、診断名が異なることは多く見られます。
ただ、そもそも線維筋痛症を含む慢性痛では、診断名はそれほど重要ではありません。なぜならば、慢性痛の治療方針の基本は、どの診断名がつけられてもほとんど変わらない(適切な運動療法と心理的療法が主で、他の治療法は補助的にすぎない)からです。慢性痛の診断においては、治療の対象となるような原因が無いかどうかを確認することが最も重要であり、具体的な診断名はあまり関係ないのです。
IMS療法はどのような慢性痛に効くのでしょうか?
IMS 療法はどのような痛みにでも効果が期待できるわけではなく、筋肉の異常な緊張が原因で起こる痛みにのみ、有効な治療法です。ですから、「長年続いている」ような、こじれた慢性痛に IMS 療法だけで効果がでる可能性は低いと考えられます。それぞれの患者さんで、何が痛みを起こし、こじらせているのか、時間をかけて診察し、突き止めることが、慢性の痛みの治療では最も重要です。
IMS療法で痛みが奇跡のように治ったというのは本当でしょうか?
もう助からないと思われていた末期のがん患者さんでも、がん細胞が急に消えてしまい、回復することがまれにあります。それと同じように、IMS 療法でこじれていた慢性の痛みが劇的に治ることがまれにありますが、それはたまたま、IMS 療法がその人の状態に一番あっていたからです。一般的に、慢性の痛みが良くなるためには、患者さんと医療者が協力しながら、地道に少しずつ状態を改善していくしかありません。
慢性の痛みにはどれくらいの治療期間がかかるのでしょうか?
何年も何十年も悩んでいた慢性の痛みが、2~3 回の治療で治るはずがありません。3~4 週間に 1 度の頻度で来院し、最低でも 6~7 回は治療を継続していただくか、あるいは3週間程度の入院治療で集中的に治療を受ける必要があります。その場合でも退院後も定期的な通院を要する場合が多いです。一方、ペインクリニックへ通院するだけで疲れてしまい体調が悪くなるようでは、逆効果です。治療は通いやすい医療機関を選ぶようにしてください。
脊柱管狭窄や椎間板ヘルニアで痛みが起きることはないというのは本当ですか。整形外科の先生に話したら怒られました。
脊柱管狭窄や椎間板ヘルニアで痛みが起こることもありえます。ただ、一般に信じられているよりも少ないと思われます。脳や脊髄(中枢神経)以外の末梢神経では、神経は痛みだけを感じているわけではありません。痛み以外の、熱い冷たいという感覚(温冷覚)や、ものに触れている感覚(触覚)も感じます(感覚神経)。また、手足や胴体では、筋肉を動かしてもいます(運動神経)。ですから、脊柱管狭窄や椎間板ヘルニアで痛みが起こっている場合には、痛みがある部分とその近辺に、温冷覚の低下・過敏(氷を当ててもあまり冷たく感じなかったり、逆にすごく冷たく感じたりする)や触覚の低下(触っても解らない)が通常みられます。また、筋肉に力が入りにくくなったり、腱反射(けんはんしゃ)*注の亢進や過敏 がみられたりします。これらの症状を伴わない場合、脊柱管狭窄や椎間板ヘルニアが痛みの原因とは考えにくいです。
*注:膝関節付近の腱をハンマーで軽く叩いて反応を診る検査。いわゆる「脚気(かっけ)の検査」。腱反射を診ると、「脳や脊髄に原因があるのか」「末梢神経や筋肉に原因があるのか」を把握することができる。