井上 達先生の想い出

2022-03-04 0 Comments

この欄を閲覧した研究者仲間から、「小川さんは3日坊主ですね」と言われた。その通りなのですが、好んでBLOGを始めたわけではなく、このホームページを作ってくれた学生が勝手に「小川毅彦のBLOG」の欄を加えてしまったのだということを言い訳にさせて頂きたい。

大学院1年生の時だったと思う。病理学教室の助教授だった井上 達(とおる)先生と一緒に東京に出張することがあった。京浜急行だったか、京浜東北線だったか、井上先生と並んで座った時に、井上先生がこんな話をしてくれた。

「小川君、実験というのは神様との会話なんだよ。実験するということは、神様に質問をするということなんだ。ただし、神様はイエスかノーか、それでしか答えてくれない。しかも質問の仕方が悪いと答えてもくれない。だから、実験する人は良く考えて、上手な質問をしないといけない。上手な質問をすれば、神様はきちんと答えてくれる。それが実験だ。」

こんな内容の話だった。大学院での実験を始めて間もない頃だったが、井上先生のこの比喩が実験の本質を実に良く言い表していることが私にも実感できた。

ただ、この比喩は井上先生自身の作ではなく、井上先生が留学中にどなたからか聞いたものだと言っていたように思う。電車の中でそう言っていたという微かな記憶がある。井上先生の留学中の師匠は、米国ブルックヘブン研究所のEugene P. Cronkite(クロンカイト)先生で、実験血液学の大家である。井上先生も血液幹細胞研究の第一人者だった。

残念ながら、今はもうお二人ともこの世におられない。 大学院生の頃、私は井上先生に反発することもあり、決してよい学生ではなかった。今になっては叶わぬことながら、井上先生と再会してあの話の出典や、こもごもの話を伺うことができればと、心から思う。

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