9月8日発表の科学雑誌Cell Stem Cellに京都大学医学部・斎藤通紀研究室からの論文が掲載されました。横浜市立大学医学部・臓器再生医学の佐藤助教はこの研究のin vitro精子形成の部分を担当し、その完成に貢献しました。雄性生殖細胞の全分化過程の試験管内再構成に成功 —ES細胞から精子まで全過程を体外で誘導する— | 先端医科学研究センター (yokohama-cu.ac.jp)

生体内の環境と体外環境とでは大きな違いがあります。体内で生じている様々な生体現象の多くは体外で再現することが非常に困難です。中でも精子形成はマウスでも35日間という長期間を要するため、体外で再現することはとても困難です。私・小川は、2007年からこの難題に挑戦し、今まで幾つかの成果を挙げてきました。今回は、齋藤研において石藏研究員がES細胞から精子幹細胞(GSCLC)を作成し、そのGSCLCを佐藤助教は仔マウスから取り出した精巣に移植してその一部を培養しました。その培養精巣組織片のなかでGSCLCは精子(正確には円形精子細胞)になり、それを用いて斎藤研の大田准教授が顕微授精を行い、産仔に至りました。

私が生殖細胞の研究を始めた1990年頃を思い返すと、今回の成果は夢のような話です。この30年間で生殖に関する科学は各段に進歩しました。その一端に係わってこれたことは光栄ですし、感慨深いものがあります。

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