横浜市立大学 放射線診断学教室と神奈川県立循環器呼吸器病センターなどの研究グループは、間質性肺疾患(Interstitial Lung Disease: ILD)患者における心エコー検査の予後予測能について検討し、特に重症な特発性肺線維症(Idiopathic Pulmonary Fibrosis: IPF)では、左室駆出率(Left Ventricular Ejection Fraction: LVEF)が生命予後と重要な関連を示すことを明らかにしました。
本研究成果は、2026年8月1日付で Journal of Cardiovascular Development and Disease に掲載されました。
間質性肺疾患では、病気の進行に伴って肺血管抵抗が上昇し、肺高血圧症(Pulmonary Hypertension: PH)を合併することがあります。肺高血圧症を合併すると、運動耐容能や生活の質が低下し、生命予後にも大きな影響を及ぼします。
これまでILDに伴う肺高血圧症の心機能評価では、肺動脈圧の上昇による負荷を直接受ける右心室の機能が主に注目されてきました。一方、右心系への圧負荷が著しくなると、肺を通って左心系へ戻る血液量が減少し、最終的に全身へ血液を送り出す左心室の機能も予後に関与する可能性があります。しかし、この点については十分に明らかになっていませんでした。
本研究では、神奈川県立循環器呼吸器病センターで診断・治療を受けた415例の間質性肺疾患患者を対象としました。
診断時に施行された経胸壁心エコー検査から、
などの指標を評価し、その後の死亡との関連を解析しました。
中央値27.2か月の追跡期間中に、415例中75例(18.1%)が死亡しました。
全ILD患者を対象とした解析では、左室拡張機能の低下を示すAverage e’の低値が、死亡の独立した予測因子となりました。
さらに、ILDをIPFと非IPFに分けて解析したところ、IPF患者207例では、左室拡張機能だけでなく、左室収縮機能を示すLVEFも生命予後と有意に関連していました。
特に注目すべき結果として、肺高血圧がより強く疑われるRVSP高値のIPF患者104例に限定すると、LVEFが死亡を予測する独立した因子として抽出されました。
肺高血圧症では従来、「右心機能」が重要視されてきました。しかし今回の結果から、重症のIPFでは右心系への強い圧負荷に伴って左心への血液流入が低下するような状況において、全身への血液供給を担う左室のポンプ機能が患者の予後を左右する重要な要素となる可能性が示されました。
LVEFは一般的な心エコー検査で簡便に測定できる指標です。本研究は、ILD、特に肺高血圧を伴う重症IPF患者の診療において、右心系の評価だけでなく、LVEFを含めた左心機能を継続的に評価することの重要性を示す結果と考えられます。
Clinical Significance of Echocardiographic Parameters in Patients with Pulmonary Hypertension Associated with Interstitial Lung Disease
Kato S, Kodama S, Azuma M, Fukui K, Kitamura H, Okuda R, Baba T, Kinoshita M, Iwasawa T, Sawamura S, Yasuda N, Utsunomiya D, Ogura T.
Journal of Cardiovascular Development and Disease. 2026;13(8):363.
doi: 10.3390/jcdd13080363.
2026.08.27