
位相差シネMRI(Phase-contrast cine MRI)を用いた冠動脈血流予備能(coronary flow reserve, CFR)の評価は、 冠静脈洞血流を定量的に計測することで、心筋全体の冠循環機能を非侵襲的に評価可能な手法である。 安静時および薬剤負荷時の冠静脈洞血流量から算出されるCFRは、冠動脈狭窄の有無にとどまらず、 微小循環障害を含めた包括的な冠循環機能を反映する指標と考えられている。
・現時点での有用性
これまでの研究により、位相差シネMRIで評価されたCFRは、
既知または疑い冠動脈疾患患者において心血管イベントの予測因子となることが示されている。
造影剤を用いず、単一断面の撮像で評価可能である点は、
腎機能低下例や繰り返し検査が必要な症例においても適用可能性が高く、
安全かつ再現性の高い予後指標として臨床的意義を有する。
・INOCA評価への応用
近年注目されているINOCA(ischemia with non-obstructive coronary arteries)においては、
冠動脈に有意狭窄を認めないにもかかわらず虚血症状を呈する症例が多く、
冠微小循環障害の評価が重要な課題となっている。
位相差シネMRIによるCFR評価は、心筋全体の血流応答を反映することから、
INOCAにおける病態解明やリスク層別化に有用な非侵襲的評価法となり得る。
・今後の展望
今後は、ストレスパーフュージョンMRIや心筋組織性状評価(T1 mapping、ECV)との統合解析により、
冠循環機能と心筋障害の関連を包括的に評価するアプローチが期待される。
また、CFR単独評価にとどまらず、冠動脈血流量と心筋血流指標を組み合わせた
冠血流capacity評価への発展により、より精緻なリスク層別化および治療効果判定への応用が期待される。
Kato S. et al. J Am Coll Cardiol, 2017; 70:869-879

冠動脈CT(coronary CT angiography: CCTA)は、冠動脈狭窄を非侵襲的に評価できる検査として広く用いられている。 一方で、空間分解能や画像ノイズの制約により、特に軽度から中等度狭窄においては狭窄の過大評価が生じやすく、 診断精度の向上が課題とされている。 本研究では、深層学習を用いた画像再構成法(deep learning-based reconstruction: DLR)、 特に第2世代DLRが冠動脈CTの画質および狭窄評価能に与える影響を検討した。
・研究の概要
非石灰化プラークを有する段階的狭窄モデルを備えた血管ファントムを用い、
320列検出器CTで撮影を行った。
画像再構成法として、従来の逐次近似再構成(HIR)、
モデルベース逐次近似再構成(MBIR)、
従来世代DLR、
および第2世代DLRを用い、定量的および視覚的な画質評価を行った。
・主な結果
第2世代DLRでは、画像ノイズが最も低減され、
血管内腔と背景とのコントラスト・ノイズ比(CNR)および
血管境界の立ち上がりを示すedge rise slope(ERS)が有意に向上した。
また、粒状性、血管のシャープネス、内腔の視認性といった視覚評価においても、
第2世代DLRが他の再構成法より高い評価を示した。
・臨床的意義
第2世代DLRは、冠動脈内腔の描出能を大きく改善し、
冠動脈狭窄の定量評価の信頼性向上に寄与する可能性が示された。
特に軽度から中等度狭窄における過大評価の抑制や、
より正確なリスク評価への応用が期待される。
・今後の展望
今後は、臨床症例における診断能や予後予測能への影響を検証するとともに、
被ばく低減プロトコルとの併用や他の画像解析技術との統合により、
冠動脈CT診断のさらなる精度向上への展開が期待される。
Sawamura S. et al. Quantitative Imaging in Medicine and Surgery, 2024; 14:2870–2883

中枢神経系の情報伝達を担うシナプス機能は、脳疾患の病態理解において極めて重要である。 中でも、興奮性シナプスに発現するAMPA受容体は、神経活動や可塑性と密接に関与しているが、 これまでヒト生体脳において直接可視化することは困難であった。 本研究では、「見えないものを可視化する」ことを目標に、 AMPA受容体の分子イメージングに取り組んでいる。
・研究体制とアプローチ
基礎研究(生理学)および臨床科(脳神経外科・放射線治療科)と密に連携し、
分子レベルの病態を臨床画像として捉えるトランスレーショナルリサーチを推進している。
生理学研究室との共同研究により、AMPA受容体に特異的に結合する
新規PETプローブを開発した。
・AMPA受容体の可視化(世界初)
本研究により、興奮性シナプスにおけるAMPA受容体の分布を、
PETを用いてヒト生体脳で可視化することに世界で初めて成功した。
この成果は、神経活動の分子基盤を生体内で評価可能とするものであり、
神経変性疾患、てんかん、精神疾患など、幅広い中枢神経疾患の病態解明への応用が期待される。
・脳腫瘍(Glioblastoma)への臨床応用
さらに、脳神経外科および放射線治療科と連携し、
悪性脳腫瘍である膠芽腫(glioblastoma)を対象とした臨床応用研究を進めている。
アミノ酸PETプローブである 18F-fluciclovine を用いることで、
腫瘍の代謝活性や浸潤範囲を評価し、
手術計画や放射線治療計画への応用を目指している。
・臨床的意義と今後の展望
分子レベルの神経・腫瘍病態を画像として捉える本研究は、
従来の形態画像では評価困難であった機能的・生物学的情報を提供する。
今後は、治療効果判定や予後予測への応用を含め、
精密医療(precision medicine)への発展が期待される。
Miyazaki T, et al. Visualization of AMPA receptors in living human brain with positron emission tomography. Nature Medicine 2020; 26:281–288.



心筋の線維化は、多くの心疾患に共通する重要な病態基盤であり、 その定量評価は診断や重症度評価、予後予測において重要である。 心臓MRIによるECV(extracellular volume fraction)評価は広く用いられているが、 近年では造影CTを用いたECV評価(CT-ECV)の有用性も報告されている。 本研究では、CT-ECVの臨床的価値を明らかにするため、 系統的レビューおよびメタ解析を行った。
・研究の概要
PubMed、Web of Science、Cochrane Library、EMBASEを用いて文献検索を行い、
心血管疾患におけるCT-ECVを評価した既報研究を統合解析した。
特に、健常群、大動脈弁狭窄症、心臓アミロイドーシスにおける
CT-ECV値の差異を主要解析として検討した。
さらに、心臓アミロイドーシス診断におけるCT-ECVの診断能についても解析を行った。
・主な結果
統合解析の結果、CT-ECVは健常群と比較して大動脈弁狭窄症で有意に上昇し、
心臓アミロイドーシスではさらに著明な上昇を示した。
また、CT-ECVは心臓アミロイドーシスの診断において高い感度および特異度を示し、
診断精度の高さが確認された。
・臨床的意義
CT-ECVは、日常診療で広く行われている心臓CT検査に付加的解析として導入可能であり、
非侵襲的に心筋線維化を定量評価できる点が大きな利点である。
特に、経カテーテル的大動脈弁置換術(TAVR)前の術前CTにおいて、
心臓アミロイドーシスのスクリーニングや鑑別診断に有用である可能性が示された。
・今後の展望
今後は、MRIとの直接比較や予後との関連を検討する前向き研究を通じて、
CT-ECVの臨床的位置づけをさらに明確化することが期待される。
また、合成ECV(synthetic ECV)などの新たな手法の導入により、
造影条件や撮像プロトコルに依存しない評価法への発展も期待される。
Kato S, Misumi Y, Utsunomiya D, et al. JACC: Cardiovascular Imaging, 2024; 17:516–528


2017年までは放射線治療科の業績も記載されています。