広報誌・コラム

糖尿病と臨床検査


1. 血糖自己測定機(SMBG)について  2. 糖尿病に関する臨床検査のはなし  3. 糖尿病教育入院及びスタッフ会議について
2. 糖尿病に関する臨床検査のはなし

糖尿病教育入院期間中に約1時間程度、『糖尿病に関する臨床検査のはなし』をしています。
糖尿病に関して必要な検査の意義、検査の基準範囲、目標値や合併症の検査について、“糖尿病と生きる”のテキストをもとに、わかりやすく説明しています。
また、患者様の検査結果についてお話しています。
 糖尿病に関する臨床検査のはなし
 *テキストは1階売店にて、850円で販売されています。(2010年12月28日現在)  糖尿病と生きる

2.1. “糖尿病かどうか?”を知るための検査

血糖値の検査
や、75g糖負荷試験(OGTT)をおこない、糖尿病かどうか診断します。

◎糖尿病の判定基準について (1999年糖尿病学会において)
 下記のいずれかに該当する場合には、糖尿病型と呼びます。
 空腹時血糖  126mg/dl以上
 75g糖負荷試験(OGTT)2時間値  200mg/dl以上
 随時血糖値  200mg/dl以上
 ヘモグロビンA1c  6.1%以上

糖尿病の臨床診断フローチャート
(75g糖負荷試験(OGTT)・・・糖尿病が疑われる人に、75gのブドウ糖を飲んでもらい、飲む前、飲んで30分後、60分後、120分後の血糖値とインスリンがどの様に変化しているか、糖尿病かどうか診断するための検査です)

◎別の日におこなった検査で、2回以上糖尿病型が確認できれば、糖尿病と診断できます。

◎糖尿病型を示し、かつ下記のいずれかの条件が満たされた場合は、1回のみの検査で、糖尿病と診断されます。
  •   糖尿病の典型的症状(口渇、多飲、多尿、体重減少)の存在
  •   確実な糖尿病性網膜症の存在

2.2. “糖尿病のタイプ”を知るための検査

糖尿病は、その原因からいくつかのタイプ(型)に分類されます。
 1型糖尿病 免疫異常やウイルス感染などで、インスリンの分泌が完全に障害されることにより起こるもので、インスリンを体外から補給しなければなりません。
 2型糖尿病 栄養過剰、運動不足、肥満、ストレスなどによりインスリン分泌が低下、または、インスリンの感受性が低下する(インスリン抵抗性が高まる)ことに よって、起こります。日本人の糖尿病の多くはこのタイプです。

タイプによって治療方針が異なるため、タイプを知るための検査(下記6項目)を行います。
 血液検査 
 @ インスリン
 A C-ペプチド
 B グルカゴン(immuno reactive glucagon : IRG)
 C 抗インスリン抗体
 D 抗GAD抗体
 E 膵島細胞抗体(ICA)および膵島細胞膜抗体(ICSA)

2.3. “糖尿病の状態”や“コントロール指標”を知るための検査

糖尿病の状態を把握することは、毎日のコントロール(食事療法、運動療法、薬物療法)がうまく出来ているかを知るために必要不可欠です。
 血液検査  尿検査
 @血糖(グルコース)
 AヘモグロビンA1c(HbA1c)
 Bフルクトサミン
 C糖化アルブミン(グリコアルブミン)
 D1,5AG 
 @尿糖
 A尿たんぱく
 B尿ケトン体
 C尿中微量アルブミン
 Dβ2マイクログロブリン 

血糖コントロール状態の指標と評価(日本糖尿病学会 2004)
 指標   コントロールの評価とその範囲    
 優   良   可   不可 
 不十分  不良
 HbA1c(%)   5.8未満 5.8〜6.5未満  6.5〜7.0未満  7.0〜8.0未満  8.0以上 
6.5〜8.0未満 
 空腹時血糖値(mg/dl)  80〜110未満 110〜130未満  130〜160未満  160以上 
 食後2時間血糖値(mg/dl)  80〜140未満 140〜180未満  180〜220未満  220以上 

2.4. “合併症はあるかどうか?”を調べる検査

糖尿病は自覚症状がなく血糖値が高い状態のまま放置することによって、全身に様々な合併症をきたします。
合併症はないか?また、あった場合は進行状態がどの程度のものなのか?を知るため定期的な検査が必要です。

 急性合併症  糖尿病性昏睡、低血糖発作などに代表される糖尿病の代謝異常が急速に増悪した状態。
 慢性合併症  糖尿病に特有な、細小血管障害を引き起こす (腎症網膜症神経障害の3大合併症)。
 大血管障害をきたす(動脈硬化性疾患)。

 ◎糖尿病性腎症の検査 
 血液検査  尿検査
 尿素窒素  尿たんぱく
 クレアチニン  尿中微量アルブミン
 β2-マイクログロブリン  β2-マイクログロブリン
 クレアチニンクリアランス 

 ◎糖尿病性網膜症の検査
 (眼科医による検査)
 視力検査
 眼底検査
 眼底写真撮影
 蛍光眼底造影
 硝子体蛍光測定
 網膜電図

 ◎糖尿病性神経障害の検査
 生理機能検査
 腱反射
 感覚系機能検査
 神経伝導速度検査
 自律神経機能検査(心変動試験、瞳孔反応検査、心電図R-R感覚検査)

 ◎動脈硬化性疾患の検査 
 生理機能検査  血液検査
 心電図(ホルター心電図)  総コレステロール
 心臓超音波  HDLコレステロール
 頚動脈超音波  LDLコレステロール
 腹部超音波  中性脂肪
 脈波伝播速度(PWV)  上記脂質4項目の目標値は下記参照↓

◎糖尿病における血清脂質の目標値(mg/dL) 
 総コレステロール   140〜200
 HDLコレステロール  40以上
 LDLコレステロール  120未満
 中性脂肪(早朝空腹時)  150未満
  (値は日本糖尿病学会に準ずる)



糖尿病を早期に発見し、治療方法の選択を行い、その効果を高めていくうえで、検査は欠かせません。
特に、糖尿病は発熱・痛みといった具体的な症状を伴わないので、他の疾患に比べ、検査の重要性が高いと言えます。
毎日の血糖コントロールがうまくできているか、また、合併症を進行させないためにも、定期的に検査を受けることと、その検査に対する正しい知識を持ち、今現在の自分の体がどのような状態にあるのかを把握することは、とても大切なことです。

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